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走馬灯株式会社 Disc.10 第10話 最終話 黒瀬 由香 ネタバレ 芦名星 [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 Disc.10 第10話 最終話 黒瀬 由香(27)

走馬灯株式会社で神沼(香椎由宇)は、
客が来店するのをエレベータの扉前で待っていた。



「はい。今近くに来ました。これから向かいます。」
「わかった。でも、映像は見るなよ。
走馬灯っていうのは普通、死ぬ前に見るもんだ。
もし本当に自分の人生を見たら、きっと戻れなくなる。
DVDだけ持ってこい!」

かなり作りの古いアパートの2階。
鉄でできた階段は、靴音を高らかと響かせていた。
電話で話しながら階段を上る女性は、男性から指示を受ける。
指示された場所に行くと、そこは“走馬灯株式会社”
ネームプレートを見ながら少しためらい、扉に手をかけた・・・



走馬灯現象・・死の間際に見る記憶映像。
それが今観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社



Disc.10 黒瀬 由香(27)

部屋に通された黒瀬由香(芦名星)は、ディスクの使い方のレクチャーを受けていた。
目の前に並べられたのは“黒瀬由香Vol.00~27”

神沼はディスクの使い方を話していたが、由香は聞いていなかった。
それは、ディスクを再生させるつもりは全くなかったから・・
神沼は“黒瀬由香Vol.00”をセットして、

「それでは黒瀬由香さま。あなたの27年の人生を、心ゆくまで顧みてください。」


神沼は声をかけ部屋から出て行こうとしたとき、由香は映像を止めた。

「神沼さん・・でしたっけ?
できればわたしのじゃなく、あなたの人生を見せて欲しいんですけど。」

由香は走馬灯株式会社のライブラリーにある「神沼」のディスクを見たがった。
そこに映るものを見てみたい・・・これはただの好奇心。
神沼は何も答えずに、ただそこに立っていた。


出来ないことには何も言わない方針何かもしれない・・
由香は質問を変えてみる。

「じゃあ、走馬灯株式会社について教えてください。
私、雑誌社に勤めてまして・・・」

真実を語ってもらうには、まず自分の正体を名乗るのが一番だと思い
神沼に名刺を手渡した。

「たくさんの人が、ここでDVDを見たんですよね?
その時のお話し、詳しく教えてもらってもいいですか?」


神沼は今までのことを話し始めた。

「これまでに多くの方が当社に来られました。
お一人の方はもちろんですし、お二方や数人で来られた方もおられます。」

「誰もこの場所を怪しんだりしなかったのですか?」

「確かに、初めの内はみなさま戸惑っておられました。
しかし それが自分の人生だとわかれば、もう目をそらすことはできません。」

「みんな、自分の人生を必死に見ていたわけ?」
「はい。食い入るようにご覧になられてました。」


楽しかった思い出、忘れてしまっていた過去、
心に閉じ込めた感情や失った記憶・・
それらをここで改めて確認してもらう場所・・・

抽象的な話しばかりではっきりしない。具体的な話しを聞かせて欲しかった。
神沼は話をすることに、ためらいはないようだった。






例えば・・と、堤友樹(第2話)の話を始める。

妊娠中の美しい奥様と、幸せな日々を過ごしていたごく普通のサラリーマン。
ほんの浮気心のつもりが、
新たな目線から見える真実は大きな衝撃をもたらした。

「DVDに納められた映像は、全て真実です。
みなさまご自分の人生を顧みて、とても貴重な体験をされたようです。」

そう感じているのは、映像を見せる側だけかもしれない・・・
由香はまだ話を掘り下げていく。


「関隆広(第1話)って若い男性、御存知ですよね?
関隆広さんは恋人と実家に帰られたそうです。
彼は母親思いの優しい方だそうです。

関隆広さんはここに来た。そうですよね?」


由香は雑誌社に勤めているとあって、いろんなことを掴んでいた。


「そして、ここで自分の人生を見た。彼は何を知ってしまったんです?」
「疑いもしなかったことが、真実ではないと気付かれたようです。
みなさま、ご自分の人生から目をそらすことができませんので・・」

真実を知った後、関隆広は行方不明になってしまった・・・
走馬灯株式会社の中のことは神沼にしかわからない。


「ご自分の人生を受け入れるかどうかは、その方ご自身の問題ですので・・」

神沼はずいぶん勝手で都合のいい答えを話す。

「関隆広さんはあなたのせいで何かトラブルに巻き込まれたとか?」
由香は神沼にカマをかけてみた。

「映像をご覧になられて、どのような道を選ばれようと
わたくしは一切関与いたしません。」


何が起こったのかを一切話すつもりはないようだ。
この会社の本来の目的は何だろうか?
会社と名前が付いているということは、何等かの形で利益を上げる必要があるはず。

「この世に生を受けてからの全てを顧みていただき、
喜びや悲しみを再確認してもらうだけです。

また、関わりのあった方の人生を見ていただき
一つの目線からは決して見えてこない、真実を確認して頂いております。」


神沼の話していることは一貫していたが、
問いに対する答えにしては、少しずれていた。
由香は少しいら立ちを感じながらも、
欲しい答えに辿り着くまで食らいつこうと思っていた。



「お客様の中には、堤友樹さまのように
これまでに関わりのあった人の人生を見たいという人もいました。」

神沼は、妹尾舞(第4話)、多岐川莉央(第3話)、
柳井研二(第5話)、幸村静香(第6話)を事例として話し始めた。


由香は、他人の人生を見たがる人は趣味が悪いと軽蔑するが、
神沼は、それぞれの事情があることを理解していた。

その中でも雪村静香は、自殺志願者が来社したケースで
赤の他人の二人がサイトを通して知り合って、
自殺をするために一緒に行動していたが、
二人共が別々に、別々の時期に来て映像を見たことで
おかしなことに転がっていく。


「で、結局死ぬ前に人生を見たってわけですか。
走馬灯って名前にぴったりですね。」
はぐらかせて、人生や真実の話を続ける神沼の話しは聞き飽きた。


「自分の人生なんて、自分が一番わかっているでしょ!」

「果たして本当にそうなのでしょうか?
ご自分の人生を本当に知っていると言い切れますか?」

あいまいな記憶や忘れてしまった記憶・・
都合よく書き換えられてしまった過去などは、本当に無いのかを問われた。
こんな風に言われると、少し考えてしまう。


「たとえば、黒瀬由香さま。あなたの腕には古い傷があります。
その傷がなぜついたのか、覚えていますか?」

おもむろに神沼に右腕を掴まれ、手首の辺りに縦に切られた傷を見られてしまう。
かなり古い傷で、そこに傷があったことすら忘れていた程だ・・

「3歳の時に階段から落ちたって、母親が。」
「当時の記憶はございますか?
あなたが9歳の時、一緒にいたご友人が交通事故で亡くなっています。」

初対面の人から聞かされるには、かなりヘビーなことだった。

「事故の時のことを思い出せますか?」
「何が言いたいわけ?あれは、あの子が急に飛び出し出したから・・・」
「それは偽りのない過去ですか?」

過去なんて関係ない、大事なのは今・・・

記憶がえぐりだされる感じがして、追いつめられられた。



「そうですか・・それは失礼いたしました。
真実は全て、そちらのディスクに収められております。」

由香の目の前には“黒瀬由香vol.00~27”が並べられていた。
目の前にある自分の人生を見たい衝動に駆られる。

「ご覧になるかどうかは、あなた次第ですが・・・」
神沼は戸口で一礼をして部屋を出た。

目の前のディスクを再生すれば、すぐにでも本当のことが分かる。
ディスクを手に取るが、“見たい”と思う欲求を振り払い部屋を出ることにした。

「DVDだけ持ってこい!」
上司からこう言われていたことを思い出し、
神沼がセットした“黒瀬由香vol.00”を取りだすと、
ケースに入れて持ち出した。




「今出ました。はい、映像は見ていません。
DVDを手に入れました。すぐに会社に戻ります。」

由香は外に出てから上司に連絡を入れた。
なんとなくディスクが有るのかが心配になり、ケースを開いてみると
中身はカラッポになっていた。


「ご自分の人生を本当に知っていると言い切れますか?
それは、偽りのない過去ですか?」

神沼の言葉を思い出した。
ディスクがないことを言い訳に、もう一度 走馬灯株式会社に戻った。



「お待ちしておりました、黒瀬由香さま。
またのご来社ありがとうございます。

神沼は変わらずに出迎えてくれた。話しかけることなく部屋に入る。

DVDは確かにケースに入れた。落としてはいない・・
ディスクの抜き忘れをチェックしたが、カラだった。
次は思いつかない・・・

本当に無くなっていたのか?そんな疑問にかられてケースを開いて見る。

「ここでしか見れないってこと?」

ケースの中にディスクが収められていた。
ここでしか見られないとわかると、衝動は止められなかった。
ディスクをセットして、少しためらう。


「映像は見るなよ。走馬灯っていうのは普通死ぬ前に見るもんだ。
もし本当に自分の人生を見たら、きっと戻れなくなる・・・」
上司の言葉が頭の中で浮かんだ。

「ご自分の人生を本当に知っていると言い切れますか?
それは偽りのない過去ですか?」
神沼の言葉も頭の中で浮かぶ。

どちらを選ぶかを問われると、自分のことと全く関係がなければすぐに答えられる。
でも、自分のこととなると別だ。
一度抱いてしまった疑惑・・・確認せずにいられない。


再生ボタンを押した・・・・


過去の自分を見ながら、忘れていた楽しかった思い出を再確認する。
思わず笑みがこぼれてしまう。

黒瀬由香の人生は、喜びと笑顔にあふれていた。




人は思い出したいことも、思い出したくないことも、
いろいろ含めて忘れてしまうものだと思います。
反復継続をして、記憶を定着させるために学んだことを覚えようとします。

出来事を覚えているのも、反復して思い出しているからなのかもしれません。
良いことは何度も思い返すことはありませんが、
嫌なことは、よく似た出来事があっただけで思い出してしまいます。

ココが「差」なのかもしれません。


走馬灯株式会社を今まで読んでいただきありがとうございました。
また気に入ったのがあれば、読みに来てください。


表紙絵はまだ出ていませんが、特典ディスクと割引がついてます。


宮口式の考え方さえマスターできれば、この記憶法は使えます。

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走馬灯株式会社 第9話 杉浦克巳 あらすじ ネタバレ 橋本さとし [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 第9話 DISC.9 杉浦克巳(40)

「うわ~~~~ いい景色!!二人で旅行できるなんて、夢みたい♪
ありがとね、克ちゃん♪」

白のワンピースを着た女性は、
切り立った崖の向こうに見える景色に胸を躍らせていた。
満面の笑顔を“克っちゃん”と呼ぶ男性に向けている。


無表情で この流れる映像を見ていた神沼(香椎由宇)は
ここまで見ると、映像を止めた。


走馬灯現象・・死の間際に見る記憶映像。
それが今観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社



DISC.9 杉浦 克巳(40)

「大丈夫ですか?気が付きました?もう救急車が来ますからね。」

道端で倒れていた男は意識を取り戻した。
耳元で誰かの話す声は聞こえるが、体を動かすことができない・・・


「聞こえますか?お名前を教えてもらえますか?あなたの名前です。」
到着した救急隊員に声をかけられ、自分の名前にハテナが灯った。
呼びかけに答えたくても、自分の名前が浮かばない・・・



夕方になっても暑さの残る日、峯田耕平(田中要次)に連れられて
男(橋本さとし)は線路沿いの道を歩いた。

マンションの最上階の角部屋。
「杉浦」の名前が付いた扉の前まで連れて来られる。

「杉浦・・・・これが私の名前?」
「心当たりは?」
「いえ・・・・・・」

道に倒れて救急車に運ばれた男は、「杉浦」という名前の人物のようだ。
本人にとって「杉浦」という名前は借り物でしかない。
抜け落ちた記憶は深刻なようだ。

峯田診療クリニック・精神科医の峯田は、
治療の一環として杉浦を自宅に連れ帰ってくれた。
杉浦が持っていた免許証に書かれた住所は、住んでいたはずの場所のはず・・
いくら見回しても、一向に何も思い出せなかった。


「あのぅ・・これはいったいどういうことなんですか?」
「心因性の健忘症でしょう。いわゆる、記憶喪失です。
頭部に外傷はありませんし、MRI検査でも脳の器質に問題はありませんでした。
記憶を失ったのは、おそらく何らかの強いストレスやショックが原因かと思われます。」

「脳からの情報が消えてしまったわけではないと思いますし、
ゆっくり思い出しましょう。」


峯田は帰り、一人部屋に取り残された・・・
記憶を手繰る助けになるかもしれないと感じた杉浦は、
手始めに来た共同郵便箱を覗きに来てみた。
自分の部屋番号604には郵便物が溜めこまれている。
独り暮らしだったのだろうか?

思いついてマンションの下まで降りてきたが、
個人情報が一番わかる部屋の中を見て回ることにする。

部屋に置かれた家具やキッチン周りを見ると、男の一人暮らしとは考えにくい。
洗面所に行くと、歯ブラシが2本並べて置かれていた。
赤色と青色。確かに女性がいた形跡があった。

「杉浦克巳・・・」
鏡に映った自分の顔に向かって名前を呼んだ。どうもしっくりこない・・・

思い出したようにジャケットからケータイを取出し
アドレス帳をスクロールさせてみる。
登録されたどの名前もわからない・・名前が多すぎて、かえって混乱してきた。



次の朝、ゴミステーションにゴミを持ってきた。
習慣がついていたのか、足が勝手にここまで連れてきてくれた。
辺りも見回すが、やっぱり何も思い出せなかった。
側溝の近くに残っていた水たまりになぜか目がいく。
ジーーーっと見つめるが、思い出すことは一つもなかった。


無理に思い出すことを止めて、その足で散歩に出かける。
線路沿いをブラブラと、電車が行き交うのを見ながら歩く。
足が住宅地の方に向いたので、戸建て住宅を見ながら歩いていた。

目の前にジュースの缶が転がってくる。
そのジュースの缶が転がる方向を見つめて、ふと目線を上げると
建物の裏口に付いたネームプレートに目が留まった。
“走馬灯株式会社”
扉を無性に開けてみたくなり、一気に扉を開けた。


眼前に今までの記憶と思われる物が駆け巡る。
いつの間にか乗り込んでいたエレベータは、屋上階で止まった。
扉が開くが、足が先に行くことを拒んでいるようだ。乗り込んだまま動けないでいた。
開いた扉の向こうに女性の姿が見える。
見えたと思ったら、足が前に歩き出し、エレベータから下りた。


「ようこそお越しくださいました。わたくし、走馬灯株式会社の神沼と申します。」

神沼は峯田に深々とお辞儀をした。

「あのぅ・・変に思わないで欲しいんですけど、実は・・記憶を失くしてて・・」
「それでしたら、ご期待に添うことが出来ると思います。」

エレベータの扉の一番近くの部屋に通された。

「こちらは人生を顧みていただく場所でございます。」


中に入ると“杉浦克巳vol.00~vol.40”までディスクが並びられていた。

「こちらのディスクに、あなたの人生が収められております。」
「本当ですか?だったら、記憶が・・・」

「それでは杉浦克己さま。あなたの人生を心ゆくまで顧みて下さい。

神沼はvol.40のディスクをセットして、部屋を後にした。


映し出された映像は、今 寝泊りしているマンションと同じ扉。

「ただいまぁ~」
「お帰り!出張どうだった?」
「最悪だったよ。旅館の料理が超まずくてさ。」
「やっぱり妻の手料理が一番でしょ?」
「もちろん、その通り。」

この一連の雰囲気から、
自分は結婚していて、妻である人の顔を見たのだと思う。

「はい、お土産~」
「え~っ またこれ??」
「だって、由美これ好きじゃん。」

自分が妻という人のことを“由美”と呼んでいる。
由美?由美??由美???
いくら名前をつぶやいてみても、全然思い出せそうになかった。


映像を流しっぱなしにして休憩をしていた。
由美は出勤前の克巳にゴミを手渡した。
マンションの下まで持っていくのが克巳の役目だったようだ。
だから朝、ゴミ捨てに迷うことなく行けた訳だ・・

「いってらっしゃい。今日は早く帰ってきてよ。」

由美に送りだされて出勤する。
ゴミを込みステーションに捨て、であった住人の奥さんと挨拶を交わす。


グシャ・・・・

「キャー!!!!」
骨が砕けたような鈍い嫌な音が聞こえたと同時に、
さっき挨拶を交わした奥さんの悲鳴がした。
克己が声の方に振り向くと、
由美が、住んでいる階から落ちてきて倒れている。全身血まみれだ・・・
目の前に由美が落ちてきたので、スゴイ現場を見てしまった奥さんは
腰を抜かして座り込んでしまっていた。


「誰か!誰か!!!」

金切り声をあげて助けを求める声が部屋の中に響き渡る。
その声に混じって、自分の嘆き声が聞こえてきた・・


妻のはずだと思われる女性は死んだ・・・
さっきまで笑顔で自分に話しかけてくれていた人が・・・
見ていられない・・・・・克巳は映像を止めた。
なんだか怖くなった克巳は、部屋から出て行った。






マンションに戻り一番初めにしたことは、峯田への連絡。
峯田は慌てて駆けつけてくれ、真偽のほどを確かめてくれた。

「残念ですが、やはり奥さまは一週間前に このマンションから・・・
遺骨の方は、奥様の実家が引き取られたと・・・

記憶を失くされたのは、その時のショックが原因かと・・

記憶というのは不思議なもので、
思い出したくない情報を 心の奥に封じ込めたりするものなのです。」


この部屋に引っ越ししてきたばかりで、段ボールが全部ほどけていなかった。
2人のツーショット写真は、まだ箱から出されていない・・・
箱の中から取り出して、妻と自分の笑顔を見つめた。

「妻は・・どうして・・・・」

峯田に ここに来てからのことを語りながら、
湧き上がる疑問に答えがないことを嘆いた。



夕方になり、箱の中と自分のビジネスバッグを引っ掻き回し
自分の手帳を探す。

中には引っ越しの予定や仕事のことが書き込まれていて、
その中に“玲子 10:00~”と書き込まれているのを見つけた。

玲子??新たな人物の登場。
疑問を晴らすには一番の場所、走馬灯株式会社に行くことにした。
この間見たときよりも、過去の自分の行動を確かめに・・

慌てて部屋に入り、vol.39をセットした。

映し出された映像は会社で仕事をしていた。

「あの・・今日から働くことになりました野々村玲子(能世あんな)です。」

この女性が玲子・・・?
このときの自分は玲子を女として見ていた。
足からお尻へと、なめまわすように玲子の体を見ていた。


仕事が忙しい時のようで、由美のことは放ったらかしにしていた。
連絡も入れずに遅くなる日が続き、由美は怒って職場にまで連絡を入れてくる。

仕事でイライラしているのに、家のことでもイラつかされて
克巳はどうにも収まりのつかない思いをしていた。

そんなとき、克己の所に差し入れの栄養ドリンクを持って玲子が来た。
玲子はすぐに退室し、溜まった仕事をしてくれている。
残った社員は克己と玲子だけ・・


克巳は玲子の背後に忍び寄ると、おもむろに後ろから抱きしめ
強引にスカートをたくし上げる。

「いいだろ?一回ぐらい。」

強引に胸元のボタンを外し始めた。克巳は自分を止められなかった。
抵抗を続ける玲子。やがて観念したように体を預けた・・・

オフィスで玲子とむさぼるように関係を結んでしまった。


「浮気ぐらい誰でもするだろ!」
今の克巳は、由美の死んだ原因を浮気だと思っていた。


一回きりの関係だと、克巳は思っていた。
だが玲子の方は違った・・
あの日以来、玲子の付きまといが始まった。
出来るだけ顔を合わせないように避けていたが、
玲子は帰り道にまちぶせしていた。

「杉浦さん、どうして逃げるの?」

見なかったふりして足早に玲子から逃げようとしていた克巳。
そんなことはすぐにバレる。

「杉浦さんは軽い気持ちだったんだろうけど、私は本気です。
奥さんにも、ちゃんと話そうと思っています。

私は克ちゃんと、ずーっと一緒にいたい

克巳の目を、瞬きをせずじっと見つめ続ける玲子の眼差しは
背筋が凍るほど恐ろしかった。
このときは恐ろしすぎて、走って逃げだした。


早送りをしながら見進めていく。

突然、透き通るような空の景色が見えた。
再生画面に戻して見てみることにした。


「うわ~~~~ いい景色!!二人で旅行できるなんて、夢みたい♪
ありがとね、克ちゃん♪」

玲子は白のワンピースを着て、スカートを風にひるがえしていた。

「これからは、ずっと一緒に居られるんだよね??」
克巳は右腕で玲子の右肩を優しくつかみ、包み込むように抱き寄せた。
玲子は克己にとびっきりの笑顔を見せる。

「あ・・あっ・・・」

克巳は玲子の首を絞めだした。
何が起こったのかわからない玲子は、苦しさにもだえている。

「うわぁぁぁぁ・・・わぁ!!」

克巳は切り立った崖から首を絞めながら、玲子を突き落とした。

「ゴメン・・・ゴメン・・・」

謝りながらも下を覗き込む。
ピクリとも動かないうつ伏せになった玲子の姿があった。



思い出したくない、知りたくない事実がそこにあった。
恐ろしさのあまり、声を出せずに口をパクパクさせて映像を見ていた。
思い出したようにリモコンを取出し、ポーズボタンを押した。

「違う・・違う・・・違う!!!!」

恐ろしくてここから早く抜け出したい。
部屋をでていこうとしたが、扉に神沼が控えていた。
画面の内容を知られたと思い、

「なんだ!これで脅迫でもするつもりか!!」
「過去の罪を追及したりはいたしません。
人は誰しも過ちを犯すものですから・・・・」

あまりにも冷静に答える神沼のことも怖くなり、慌てて部屋を出た。


家に帰る道すがら、巡回している警官が自転車を走らせていた。
自分が人殺しだったと知ってから、警官の姿を見ただけでも姿を隠してしまう。


ピリリリリリリ・・・・ケータイ電話が鳴った。
今さらかけてくる人はいないと思ったが、とりあえず出てみることにした。

「かっちゃん・・・・」

この呼び方をするのは玲子だけ・・
電話を投げ捨てて、あたりを見回した。

そういえば・・・
走馬灯株式会社に行った目的を果たしていなかったことを思いだし
もう一度行ってみることにした。



「野々村玲子っていう人の人生を見せてくれ!」

神沼の顔を見るなりリクエストをし、“野々村玲子vol.30”をセットした。


映し出されたのは、2人で旅行に出かけたとき・・

「これからは、ずっと一緒に居られるんだよね??」

玲子は克己に包むように抱き寄せられた。
最高に幸せを感じていたその時、突然首を絞められた。

そのまま切り立った崖に突き飛ばされた。

ここで映像はいったん切れた。
克巳は玲子の死を確信し、本当に自分のしたことなのだと思っていた。
映像には続きがあった。玲子は意識を失っただけで死んでいなかった。

「痛い・・痛い・・・・」

うめき声のようにつぶやきながら、
近くに落ちていた自分のバッグの中から、手鏡を取りだした。
ヒビの入った鏡に映った玲子の顔半分は、ただれて血まみれ・・

「どうして・・・克ちゃん!!!!!
痛い・・痛いよ・・・痛いよ・・・・」

玲子の形相に驚き、酒を煽るように飲んで恐怖を和らげようとしたが、
ふと気づいた・・・玲子が生きていたことに・・

「まさか・・・・・」


「ちょっと、ゴミ捨ててって!
「いってらっしゃい。今日は早く帰ってきてよ。」
由美の声が聞こえる。

悪夢が起こったあの日・・


玲子は克己が仕事に出たのを見計らって、呼び鈴を鳴らした。
出てくる前に柱の陰に隠れる。
由美はキョロキョロと呼び鈴を鳴らした人を探すが、誰もいなかった。
ちょうどゴミステーションは、覗き込むと見える位置にあり
由美は克己の姿を見ようと手すりに乗り出す。


玲子は背後から忍び寄り 由美の肩を掴むと、そのまま突き飛ばした。


グシャ・・・・

「キャー!!!!」悲鳴が聞こえる・・

この状況の裏返しを数日前に見ていた克巳は犯人を知った。
全ては自分が蒔いた種・・・

「由美が死んだのも、記憶がなかったのも、全部俺のせいだ・・」

絞り出すようにつぶやいた克巳。
悔やんでも由美は戻ってこない・・


映像は流したままになっていた。今はリアルタイムで玲子の行動が見れた。
克己のマンション付近を歩いて、走馬灯株式会社までたどり着いた。
部屋の入り口で神沼が挨拶をしているのをすり抜け・・・

「これ、今の玲子・・・?」

部屋の扉が開いた。部屋の中に靴音が鳴り響く。
扉の方を見るのが怖かった。でも、おそるおそる振り返るとそこに!!

「かっちゃん・・・フフフフフフフフフフ」




たった一度の過ちが、思わぬ方に転がっていく・・
オフィスでの関係を、ここまで重く取られるのは気持ちが悪いですが
一緒に働いていて、粘着質な女性だと気付かなかったのでしょうか?
どうして身近な女性に手を出したんでしょうね。
とても怖い回でした。


地味に美味しいお土産もいいですが、
東京スカイツリーがパッケージなら、話が弾みます。


これはマジ美味でした。





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走馬灯株式会社 第8話 笠木修道 長澤比佐志 ネタバレ ストーリー [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 Disc.8 第8話 笠木 修道 長澤 比佐志

「はい。どうした?あぁ いいや適当に任せてくれ。
今?息抜きの散歩中だ。大丈夫、すぐに戻るよ。」

吊り橋の上で、電話で話しをしている男。
散歩中でリラックスしているからか、口調は柔らかい。

男は電話を切った後、景色を楽しんでいた。
速足で人が近づく音が聞こえる。

ピピピピピピピピピ・・・・
近づいた人の腕時計のアラームが鳴りだした。
たたずむ男にばれないように背後に回るつもりでいたので、
突然のことで驚いた。セットした覚えのない時間・・

後には引けないと思い、
たたずむ男の側に近づき、強引に橋から突き落とした。

グシャ・・・

地面に叩きつけられた音が響き渡る。

ハァハァハァ・・・

荒い呼吸をしながら、橋の上から落ちた状態を確認した。
自分でやったことだが怖くなり、急いでこの場から離れた。
夢中で森の中を走り、ようやく乗ってきた車に戻り 一息ついた。


背後を確認するためか、今の自分の顔を見たいのか、
バックミラーを自分の顔の方に向ける・・・


冷静にこの一連の映像を見ていた神沼(香椎由宇)は電源を切り、
部屋を出ようとした。

ピピピピピピピ・・・

さっきの映像と同じアラーム音が部屋に響き渡る。
この部屋の使用主が忘れて行ったものらしい・・・



走馬灯現象・・死の間際に見る記憶映像。
それが今観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社


セミの音がうるさいほどの夏の日、
車は山間のトンネルを抜けると、
閑静な住宅が立ち並ぶ地域に向かって走っていた。
迷うことなく目的地に着いた長澤比佐志(郭智博)は車から降り、
戸惑いながらインターホンを鳴らした。


DISC.8 笠木修道(42)・長澤比佐志(26)


「すみませんね、急にお呼び立てして・・・」

笠木の別荘に来た長澤は、笠木の妻・陽子(濱田万葉)の案内で家に入る。
今日は笠木に呼び出されて来たので、何事かと 内心ドキドキしていた。


「先生・・大丈夫ですか?」
「大丈夫なように見えるか?
まあ、授賞式の後だったのがせめてもの救いだ。
こんな顔で新聞に載らずに済んだからな。
何であんなところから落ちたのか、よく思い出せないんだよ。」

笠木はおでこに大きなバンドエイドを貼り、目はうつろ・・・
「ベッドでずっと“長澤、長澤”って・・
普通アシスタントよりも、妻の名を呼ぶものなのに・・」

陽子はお茶を運び、病床のときのことを長澤に話してくれた。
お茶を手渡された修道は、一口飲むとテーブルに戻そうとする。
手探りでテーブルの位置を確認する様子を見て、陽子が介添えをする。

「橋から落ちたとき、メガネの破片が刺さってしまって
主人の目はもう・・・・」

長澤は、笠木のすぐそばに
視覚障害者用の杖・白杖(はくじょう)がある理由がわかった。


「そんなに嬉しそうな顔するなよ。」
笠木は長澤の顔を見透かすような発言をするが、これは冗談。
だがぶっきら棒に言われると、あながち冗談でもないようだ。

「お前のバカ面はもう二度と見れない。」


笠木は厚さ5センチほどある綴じられた紙の束を長澤に差出し、
読むように指示する。
手からこぼれ落ちるように落とされた紙の束を拾い、長澤は読みだした。

「受賞者の笠木修道氏は語る。
作品で描いたテーマは、普遍的な人間そのもの。
だからこそ、あらゆる世代からの支持を受けたのだ・・・」

「本当に良いことを言うよなぁ・・そう思うだろ?」
「はい・・・・」

笠木は 第136回直木賞「夜に哭く」の作家。
受賞したばかりで受けた取材の記事が束になっていた。


笠木は長澤を伴って、事故現場の吊り橋に行ってみることにした。
全く覚えていない事故の時のことを思い出すかもしれない・・
陽子は目が見えなくなったばかりで、
白杖を使うのにも慣れていない修道のことが気がかりだった。

「大丈夫だ。役立たずだが、長澤に案内してもらう。
まさか、嫌だとでも言うのか?」


笠木は本当のことを知っているのか?それとも偶然か?
長澤には断ることすら出来なかった。



コツコツコツコツ・・・・白杖の音だけが響き渡る。
目印一つない道を歩く笠木。その側を長澤が歩いていた。
不慣れだと思えないほど白杖を使いこなし、まっすぐに歩くが、
緩やかなカーブのことまではわからず、草の方に向かってく。

長澤は笠木の開いている方の肘を掴んで道を修正しようとした。

「引っ張るな!! 手綱を持つのは私だ!!!
お前はただ、歩くだけでいい。バカなお前でもそれぐらいはできるだろう。」

長澤の腕を強引につかみ、先に歩かせる。


霧が出てきて、立ち入り禁止の看板が見えた。

「この先だ。」
笠木は先を行くために、張られたロープをまたいだ。
長澤は躊躇し、先に行くのを止めたが、前を歩く笠木は長澤の腕を探している。
諦めたようにロープをまたぎ、笠木が探している手の先に立った。


カラカラカラ・・・鳴木の音が聞こえてきた。
2人を呼んでいるようにも思える。
音の方を見ると、小屋があり 木でできた風鈴が吊り下げられていた。
風に舞って音がしたようだ。

小屋の扉には看板のようなものが見える。
そのことを笠木に告げると、
看板に書かれた名前を見に行くために連れて行けと言う。

「走馬灯株式会社・・・・」
長澤の言葉に反応した笠木は、手探りで扉を開けた。






笠木の眼前に、今までの記憶が流れる。
気がついたらエレベータに乗り込んでいて、屋上階で扉が開いた。
扉を開けていない長澤も一緒に乗り込んでいた。

「ようこそお越しくださいました。走馬灯株式会社の神沼と申します。
ここは、人生を顧みていただく場所でございます。どうぞ・・・」

神沼は部屋の中に案内をするが、
怪しい場所に立ち寄りたくない長澤は、帰ることを勧める。

「好奇心こそ、作家の命だろ!
そんなことだから見習いのままなんだよ。」

笠木は神沼の声の方に歩き出す。長澤は仕方がなく一緒に入った。


長澤は“長澤比佐志VOL.26”を手にしている。
机の上には笠木と長澤の人生分のディスクが並べられていた。

「そちらのディスクに、あなた方の人生が収められております。」
「人生??面白そうだ。」

ディスクを持って立ちすくんでいる長澤。
見えない目で見ようとする笠木は、ソファに座った。

「それでは笠木修道さま、長澤比佐志さま。
お二人の人生を、心ゆくまで顧みて下さい。」
神沼は一礼をして、部屋を出て行った。


笠木はディスクの再生を促す。

「どっちを・・・?」
「お前の人生なんて、見てどうする?」

長澤は“笠木修道vol.38”を再生させた。


映し出されたのは、暖炉の炎の前でお酒を飲んでいる笠木の姿・・
陽子に案内されて長澤が家に入ってきた。

「清書係をさせていただく、長澤です。
ずっと前から先生の大ファンです。よろしくお願いします。」

青年らしい軽やかさと明るさを持っていた。
笑顔で笠木に挨拶する。


「これ、僕が先生の所に来たときの映像ですよ。」
「声を聞けばわかる。キャーキャー吠えるな!」


映像は“笠木修道vol.40”まで進んでいた。

「書き直せ。これが私の文体か?調子に乗って自分の色を出すな!!」

映像の中の長澤は、書いた文章をけなされていた。
清書だけなのに、原稿を顔にぶつけるぐらい叱られている。

「どうした?早く書き直せ。」
「やっぱり、先生の作品は 先生が書かれた方が・・・・
読者を欺くことにもなりますし、僕もそろそろ・・・」

「そろそろ!?そろそろ何だ?
お前、自分の名前だけでやって行けるとでも思ってるのか?
お前の駄文が評価されるのも、私の実績があってこそだ。
無名の長澤比佐志の書いた本なんて、誰も読まない。
この世にそれ一冊しか本がなかったとしてもな。」


笠木はゴーストライターを長澤にさせていた。
文章を書かせてからけなす・・
言う側は楽しいだろうが、聞かされる側はたまったもんじゃない。
ストレス発散の道具でしかないのだろうか・・

「本当、いいこと言うよなぁ・・」
笠木は自分の言った言葉を自分で褒めた。

「私の名前で小説を書けるだけでも、有り難いと思えよ。」

くやしいとも、悲しいともつかない気持ちになるが、何も言い返せない。
一緒にいると気が変になりそうだったので、
トイレに行くと告げ、部屋を出た。


長澤はトイレに行くのではなく、笠木をこのまま置いて帰ろうと思っていた。
この行動は神沼に見透かされていて、エレベータに乗り込む前に声をかけられる。
「帰る」とは告げられず、言葉を濁した。

「人生は、生まれてから現在まで全て記録されておりますので・・
あいまいな記憶なども、はっきりご覧いただくことができます。」


「ギクッ」としたが、誰にも話せないこと・・
もし笠木が事件の場面を見たとしたら、誰が犯人かわかってしまう・・・
それだけは避けたい・・
ディスクがなければ解決すると思い、慌てて部屋に入る。

笠木は自分でディスクの交換をしていた。
動きはとてもなめらかで、健常者とかわらない・・
もしかして、見えていないふりして 見えているかも・・・


新しいディスクでも、長澤は怒られていた。
長澤が原稿を書くのが遅く、
なのにダメ出しを食らってばかりで締切ギリギリだった。

「後、どれぐらいかかる?」
「後、半日ぐらいで・・・」
「半日!?一時間で終えろ!」


長澤に限界が来ていた。映像はそれをあおる。
置いてあった果物ナイフを手に取り、背後にまわった。
ナイフの先を、笠木の顔の近くに持っていったとき、
笠木が後ろを振り向いた。

見えてはいない。ナイフの存在には気づかず、飲み物の催促。
思いきれない長澤は、言われた通りにお茶を用意していた。

「あと、42巻だ。最新のものが見たい。セットしろ!」


事故に遭った時まで来てしまった・・
長澤は、ただ画面だけを見つめる。

「この後に橋から落ちた。長澤、確認しろ!」

映像では、ピピピピピピピ・・・時計のアラームが鳴り響いた。
音の主は笠木の方に走ってきて・・・

「止めろ!!!」一時停止ボタンを押した。

「この場面には、何が映っている?」
「なにも写ってませんけど・・」

本当は ありえないほどの形相で、笠木を突き落とそうとする長澤の顔!!

「本当に何も映ってないのか?」
「はい。だからもう戻りませんか?家のことが心配だし・・」

どうにかして笠木をここから引きはがしたかった。

「もう一度だ。音量を上げてもう一度再生しろ!
微かに足音が聞こえた気がする・・
誰かに突き落とされたのかもしれない・・・」

なかなか巻き戻さない長澤にイラついて、笠木はリモコンを取り上げて動かした。


橋の上を歩く笠木。背後からアラーム音と足早に走る男・・・

「今の音、聞こえたよな?あのアラームの音、聞いたことがある。」

後ろにいた長澤の腕を掴み、
「この時計の音だ。私のお下がりだからよく覚えている。
何でお前があそこに居たんだ?

長澤、今度はお前の人生も見せてもらおうか。」


腕を掴んで離さない笠木。
長澤は怖くなり、笠木を置いて部屋を出た。
代わりに神沼が入室する。

「まさか・・飼い犬に手を噛まれるとは・・・」
「どんな方にもそれぞれの人生がございます。
ただ ひとつの目線からだけでは、それを知ることもできません・・
長澤比佐志さまの人生、ご覧になられますか?」


掴まれた拍子で時計が外れた。
長澤は時計を気にせず、走って逃げだした。とにかく少しでも遠くに・・
立ち入り禁止の看板があった辺りまで戻る。
下り坂なので、飛ぶように走って逃げる・・・


神沼は“長澤比佐志vol.26”をセットした。
笠木の邪魔にならないように後ろに控えて映像を一緒に見る。


「いい加減 少しは成長しろよ!」
長澤は笠木に、書き上げたばかりの原稿を破られた。
破られた原稿を持ち、部屋を出た所で奥さん・陽子に会う。
奥さんは主人・修道の行動が目に余り、たしなめようとするが

「いいんです。僕が悪いんですから・・・
先生みたいに書けるように、必死に頑張るんで・・・」

長澤はめげることなく机に向かった。
連日徹夜で原稿を書いていた。奥さんはコーヒーを運んでくれた。

「先生には今度こそ直木賞を獲ってもらいたいんです。」

キーボードを叩く音が聞こえる。
笠木は 長澤の別の面を初めて知った・・・



走って、走って、走って・・・ようやく車道まで出てきた。
トンネルのそば近くで息が続かなくなり、走るのを止めた。
荒い息を整えながら、気配に気づき顔を上げると・・・

キキキキキキキ・・・グシャ・・・・

長澤は車に轢かれた。


普通ではありえない音を聞いた。笠木は神沼に何が起こったのかを問う。

「車に はねられたようです。
映像は、長澤さまが現在リアルタイムでご覧になられている人生です。」


長澤は生きていた。
体を動かそうとしているが、起き上がれそうにない・・

「た・・・たすけて・・・・・」

起き上がれずに寝転がる。衝撃を受けた体がきしんでとても痛い。

コツコツコツコツ・・・・杖の音がこちらに近づく。
顔だけ動かして確認すると、白杖を持った男の人の下半身だけが見えた。
先生??まさか・・・

まさかではなく、本物の笠木だった。

「殺すなら殺せよ!いつもバカにしやがって!!
あんたの下で、どんな思いしてきたかわかるか!

ずっとあんたのファンだった。作品を手伝えて本当にうれしかった。
でも・・僕だって小説家になりたい!
あんたのイヌなんかで終わりたくない!!


笠木は長澤の傍らにしゃがみこみ、手を差し伸べた。

「つかまれ。お前の人生、見せてもらった。
お前の気持ちは、よぉくわかったよ。」


長澤はおずおずと手を差し出す。
笠木は固い握手を交わすように手を握り、支え上げた。

「歩けるか?」
「先生、このご恩は忘れません・・・ありがとうございます。」

笠木の肩を借りて一歩ずつ歩く。

「おい、勘違いするなよ。私は“わかった”と言っただけだ。
お前の人生は何も変わらないし、変えさせない!」


“ご恩は忘れません”と言ったことを後悔せずにいられない・・
これは、悪魔と契約したも同じ・・



「いやぁ・・さすが笠木先生ですね。
直木賞に続いて、芸術選奨の受賞。まことにおめでとうございます。」

「不慮の事故で視力こそ失いましたが、
作家としても心は少しも失われていなかった。ということですかね。
作家にとってもっとも大切なものは、大空をはばたくような自由な心です。
鎖に繋がれて生きることほど、哀れなことは無い。」

「実は今、新作を書いているところなんですよ。
完成したら、取材を頼みます。」


お茶を運んできた長澤に聞こえるように話す。
長澤は小さな資料だらけの部屋に戻り、原稿に向かった。
長澤が書いている原稿は、笠木修道名義・・・・


神沼はここまで見ると映像を止めた。



飼い殺しで利益を得る。
恐ろしい考えですが、本当に出来ればラクかしら?
忠実に従うことでしか自分の能力を発揮できないとしたら・・・
需要と供給のバランスが合ったといえるのかしら?

疲れ目にはビルベリーが効きます。


PCのIDやパスワード管理は大変ですよね。
これは、簡単に管理ができます。
(映像がないのが残念・・)




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走馬灯株式会社 第7話 今泉安彦 あらすじ ネタバレ 平田満 [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 第7話 DISC.7 今泉 安彦(49)


走馬灯株式会社に辿り着いた者が入室を許される、マンションの一室。
床には割れたグラスが放置されていて、
神沼は客がつけっぱなしにした映像を見ていた。


「おい!みんないくぞ!!こっち見て!
明、お前が真ん中だ。お母さんいくよ、そろそろ・・
もう少し笑ってよ。明の成人式記念なんだし・・・」


家族が揃って写真を撮る機会がめっきり減ってしまっていたので
今日は少し嬉しい気分。
今泉家の家長・安彦(平田満)は、
家庭サービスと、息子の成長を祝えてテンションが高かった。

今日の主役長男の明(菊田大輔)は、
浮かれた父がペラペラと話し続けるのがうるさくて仕方がない。

次女の純子(國光真央)は、そんな父を嫌がり、
長女の奈々(岡野真也)は、こんなことをすること自体どうでもよかった。

妻の照美(山下容莉枝)は、こんなところだけ いい父親ぶる安彦を
あまりいい気分で見ていない。


家族全員の思いは違えども、一枚の写真に納まる。
安彦にとって最高の写真が出来た。


神沼は、今泉一家が写真を撮っているところまで見て、映像を消す・・・



走馬灯現象・・死の間際に見る記憶映像。
それが今観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社


夏のとある日、セミの鳴き声がうるさいほど響き渡る中
安彦はジャケットを小脇に抱えて、
太陽を嫌というほど浴びながら家路についていた。

家の玄関まで帰ってきたが、扉を開ける前に取りだしたのは「解雇通知書」
メデシン製薬で臨床管理部第一臨床課に勤務していたが
今日で会社を辞めた。
有給の消化などで籍は残っていても、出勤の必要がない・・・

どう話しを切り出すか・・すぐに答えは出なかった。
とりあえず、いつもと同じように振る舞うことだけを考え
意を決して 玄関扉を開けた。






Disc.7 今泉 安彦(49)


「ねえ、ただいまくらい言えないの?」

そーっと玄関を入り自室に行こうとしていた安彦に、照美が声をかけてきた。
夕食の支度中で顔がこちらを向いていなくてよかった・・
勘のいい照美が見ると、普通の顔をしていないのがすぐにバレる。


「ただいま。」
「ねぇ、来月からあんたの小遣い生活費に回すから。」

藪から棒に言われた小遣いカット・・
小遣いどころか生活費を、いつまでねん出できるかわからない。
新居を買ったツケか・・・



いつもと変わらない夕食。
テーブルに並んで座るが、安彦はいつものお誕生日席。
一緒のようで少し離れた所に座っている。

家族の目の前に並べられたのは、から揚げやサラダに炒め物
自分の目の前にはもやし炒めのみ・・・

良いようにとると、健康を考えての食事制限。
悪く言うと、はみご。


食事中でも片時もケータイを離さない奈々を見ながら、
会話一つもない食事に気づまりを感じた安彦は話し始めた。


「明、受験勉強はどうだ?薬学部行けそうか?」
「自分と同じ生き方、押し付けてんじゃねぇよ!」

「薬学部を出て製薬会社に勤めれば、一応お給料もらえるんだから」
照美の意見は辛らつだ・・

「奈々は、留学の準備進んでるのか?」
安彦は、まだ一生懸命に家族の会話をしようと話しかけた。

「お母さん、また洗濯物一緒に洗った?」

父から話しかけられたことは完全にスルーして
自分の洗濯物を父も物と一緒に洗われたことを怒っていた。

「あぁ~早く留学したい・・・」

家に気づまりを感じている奈々は、早く自由になりたかった。


「純子は?友達と仲良くしてるか?」
「してない。服がダサいから・・」

家族に安彦は必要とされていなかった。
照美は今日に限ってやたらに子供たちに話しかける安彦を見て、
様子がおかしいと感づいた。

「あんた、何か隠してんでしょ?隠すとろくなことになんないよ。」

ここは話し時だと思い、グラスに入ったビールを一息に流し込んだ。


「実は・・会社をクビになった・・・」


一瞬の沈黙の後
「お金は?お金どうすんの?家のローン 後21年残ってるのよ!」照美は怒っている。
「受験の金、どうすんだよ!」「あたしの留学は?」「かわいい服買ってよ!」

みんなつまるところ「お金」の心配・・・


「あんたのせいで、家族の将来めちゃくちゃよ!」

家族は誰も安彦を思ってくれないのか・・・
こんな事態になることはわかっていたが、
落ち込んで帰宅した今日は、そうっとしておいて欲しかった。



一人でヤケ酒を飲み、くだをまく。


「どうする?やる??」

そんな父の背中を見ながら明がみんなに声をかける。
その声は安彦にも届いていた。

「なんだよ・・お父さんも家族だろ!!」

自分がハブられたことが気に入らずに絡んでくる。
酔った時だけ饒舌に話し、朝になったら覚えていない父に
詳しい説明など不要だった。



朝から求人雑誌を片手に、職探しを開始した。
再就職先はすぐには見つからず、雑誌には赤いバツ印ばかりが増えている。

夕方になり、帰宅するにも足取りが重かった。
トボトボといつもの道を歩いていたら、ドアベルが聞こえた。
その音が自分を呼び止めたように感じた安彦は、ふと立ち止まる。

目に入ったのは“走馬灯株式会社”のネームプレート。
いつも通るが、このネームプレートは初めて見た気がする・・・
好奇心が先に立ち、アポなし飛び込みで面接してもらおうと思った。


ドアノブを握った瞬間、安彦の眼前に広がる今までの記憶・・
気がついたらエレベータに乗り込んでいて、屋上階で扉が開いた。


「ようこそお越しくださいました。走馬灯株式会社の神沼と申します。」
「あ・・あのぅ・・仕事を探してるんですけど・・」
「ここは人生を顧みていただく場所でございます。」
「宗教か何かですか?事務員でも何でもいいので雇ってほしいんですけど・・」
「お飲物もございますので・・・・」

神沼が部屋の中に案内した。


机に並べられていたのは“今泉安彦”のDVD。その中のVol.38を手渡された。

「こちらのディスクにあなたの人生が収められております。
早送りやチャプター再生も可能です。」

神沼は話しながらVol.38をセットした。
「いきなり研修用ビデオですか?」

神沼の話しを呑み込めてなかった。
いきなり自分の人生が見られるなんて誰が想像できただろう・・
仕事に雇ってもらうためのビデオ研修か何かだと勝手に判断した。


「それでは今泉安彦さま。あなたの49年の人生を心ゆくまで顧みてください。」


神沼は深々とお辞儀をすると、部屋を出て行った。


討ちし出されたのは公園で子供たちと遊ぶ自分目線の映像。

「お~い、気を付けろよ!」
滑り台で遊ぶ明と奈々の姿を見て、安彦が声をかける。

「お父さん、サッカーしよ!」
「ダメ!!お父さんは奈々とブランコなの!」
「やだよ、サッカーするんだよ!」
「違うよ、ブランコするの!!」

二人でお父さんの取り合いをする。

「順番にしなさい!!お父さんは一人なんだから。」

ベンチで座っていた照美がたまりかねて声をかけた。
臨月近くのお腹はかなりせり出していて、遊びに付き合えない。

「お父さん!じゃあ俺が先!!」
「奈々が先!!!」
順番の最初を兄妹が争う。

「じゃあ、ブランコが先だ。後でサッカー!」



そういえばこの頃の子供たちは、いつもなついてくれていた。
安彦もいいパパぶりを発揮して、子供たちの頼れるお父さんだった。


童謡「七つの子」を歌いながら家に帰る。3人で手を繋ぎながら・・


映像を見たことで、これ以上ないほど幸せな日々だったのだと、
今になってようやく噛みしめた。


ディスク再生はVol.49まで進んでいた。
映像を流しっぱなしにして、求人雑誌で目星を付けている。

映像はリストラを家族に告白したときまで進んでいた。

「どうする?やる??」
明が家族に何かを告げている。安彦は全然記憶にないこと。

「なんだよ、お父さんも家族だろ!」
酔っぱらって眠りかけていた。


「事故とかで死んでくれりゃぁ、保険金下りるんだよね?」と明が言うと
「死亡保険がはいれば、10年は楽に暮らせるわよ。」と照美が話す。
「じゃあさ、殺せばいいんじゃない?」と奈々が
「家族全員で殺せば、バレないかもね。」と照美が・・・・


酔っぱらって大の字になって寝ころんでいる安彦の顔を見ながら
殺しの相談!?
家族にここまで嫌われていたのだと知った安彦は、映像を止めた。


懐かしさと気を紛らさせるために、「七つの子」を口笛吹ながら家に帰る。
3人とお腹の中に一人。
映像で見た、自分が38歳の時が一番幸せだった・・・



仕事は見つからず、衝撃的な事実を知ったこともあり 家に入るのが怖かった。
玄関で一息ついてから家に入ると、妻は洗濯ものを取り込んでいた。

置かれているノートパソコンが中途半端に開いている。
何を見ているのかが知りたくなり、開いて見ると
映し出されたのは“完全犯罪マニュアル”の画面だった。
どうすれば事故を装って殺すことができるのかが書かれている。


「どうするか、決めた!一応みんなも確認して。」

明の声が近づき、慌てて画面を閉じた。
その場を離れようとしたときに明と鉢合わせ。

「帰ってんなら、帰ったって言えよ!」

“お帰り”と言われるどころか、明に注意をされる。


自室に入り、クラッシックをかけながら気を落ち着かせようとした。
でも、家族が自分を殺そうとしていることを知った安彦は恐ろしくてたまらない。

もしものために・・・
なんて軽い気持ちで会社から持ち出した、持ち出し禁止の毒薬。

(殺されるぐらいなら・・・・)

「ご飯!片付かないから早く食べて。」

照美が部屋に入っていたことに気づかなかった安彦は、ギクリとして気がそがれた。


今日の夕食はめざしが一匹。ご飯には大きな梅干しが一つ乗せられていた。
家族はとんかつを含めたバラエティに富んだ食事・・

「今、何か音しなかったか?」
奥の部屋で物音が聞こえ、明に聞いてみた。

「黙って食えよ!!」
明は父の言うことを聞くことなく、ご飯を食べ続けた。

「ろくな稼ぎもないクセに、無駄口ばっかり・・・」
照美の言葉は棘となって安彦の胸に刺さった。


食事をするのが嫌になり、外に出た。
ポケットにしまっていた毒薬入りの瓶を見つめ、ふたを開ける。
口に含めばイチコロなのはわかっているが、できなかった・・・
ふたを閉め直し、タバコをくゆらせる。

安彦の背後に全身黒づくめの人がこちらをうかがっていた。
変化を察知できるほど、安彦の気持ちに余裕はない。
家の門にもたれかかりタバコを吸っていたとき、黒づくめの男に襲われた。



朝から警察が状況確認に来た。頭に包帯を巻いた安彦が対応する。

「じゃあ、顔は見ていないんですね?
ご家族の話では、タンス貯金と通帳が盗られているようです。
物盗りで間違いないでしょう。」

「家族はだれも犯人を見ていないのですか?」
「ええ、4人共食卓にいたそうです。」

安彦は警官に聞いたことを総合して考えた。
「家族全員で殺せば、バレないかもね。」
照美の言っていたことが実行に移されていたとするならば・・・
今回の出来事は仕組まれたものだったように思えてきた。


「ちょっとゆっくりすれば?傷害保険が下りるんだし・・・」
リビングに戻るなり、照美が猫なで声で話してくる。

「本当は、死亡保険の方がたくさんもらえたんだけどね。」
純子は子供だから、思ったことがすぐに口から出てしまう。
照美がたしなめた。

この様子をみて、家族に狙われていることを確信した。
真相を確かめるために、走馬灯株式会社に行くことに決める。


どこに出かけるとも言わず、安彦は家を出た。
(本当にあいつらが殺ったって確認できたら、その時は・・・・)
かなり覚悟を決めているよう・・
明は父を尾行することにする。


真実を見ることに抵抗を感じていたが、ここでないと真実にはたどり着けない・・
今度は意思を持って“走馬灯株式会社”に入った。

机に並べられたのは照美Vol.45、明Vol.20、奈々Vol.17、純子Vol.11
家族分のディスクが並べられた。

「ご本人と関わりのあった方であれば、お見せすることができます。
それでは、ご家族の人生をご覧ください。」
神沼は頭を下げると部屋から出て行った。



まず、黒づくめの人を明と仮定して 明Vol.20を再生させることにした。

「どれにするか決めた。一応みんなも確認して。」
昨日の夕方からのようだ。

「帰ったなら、帰ったって言えよ!!」
明が怒り、安彦が部屋に逃げ込んだ。

その後、明は家族に開いていたPC画面を見せ・・・


「ようこそお越しくださいました。」
扉の向こうで神沼が誰かを招く声がした。部屋の扉が開く・・
入ってきたのは安彦の家族全員!?あわてて画面を消した。

「あんた、こんなところで何やってんの?」

問われても、「お前たちの人生を見ようとしました。」とか。
「お前たちが自分を殺そうとしたのを確認してました。」なんて言えない。


「会社の手続きで出かけたんだけど、暑くてちょっと休憩してたんだよ。
お前たちこそ、どうして・・・」
「え!?何だっていいでしょ。」

変な言い訳は家族には通用しない・・・
そんなとき、部屋を見回していた明が、
自分の名前が書かれたディスクケースを見つけた。

「なんか隠してんでしょ?隠すとろくなことになんないよ。」
嗅覚のいい照美はすぐに安彦の異変を察知する。

万事休すだと感じた安彦は、
ポケットに忍ばせていた毒薬をこっそりグラスに入れてセットした。


「これ、誰の?俺の名前書いてっけど。」
明はディスクを取出し、自分の名前が書かれていることの理由を聞いた。

「そちらのディスクに、ご家族の皆さんの人生が収められております。
心ゆくまで顧みてください。」
神沼はまだ部屋で控えていて、システムの説明を始めた。


「人生って映画だよ。全然面白くないし、見てもしょうがない・・・」

安彦の言葉を聞いて明はピンときた。
さっきまで入っていたディスクを再生させる。
見ていた続きが再生された。


明のPC画面をみんなで見るところ・・・
自分のPCだと気付いた明は再生を止める。

「てめえ!勝手に見てんじゃねぇよ!!」
「何で続きを見ないんだ?見られたら困るからだろ!!!
やっぱりお前らなんだな!見たら全部わかるんだよ!!」


明に掴みかかられたが、振りほどき ディスクを再生させた。

PC画面に映し出されたのは“自殺完全マニュアル”
趣味が悪い兄を奈々は気持ち悪がった。

「それよりプレゼント、これでいいよな?」

映し出されたのは買い物サイトの、3本セットのネクタイ。

「プレゼント・・・・?」安彦は面食らっていた。
「だから止めろって言ったのに・・・」

再生は続いていた。
「サプライズはどうするの?」と 純子が、
「サプライズはやっぱり食事中のケーキよね?」と照美が答える。
「クラッカーで出迎えるとか!」明がアイデアを出し
「愛妻弁当作っちゃえよ!!」奈々が第二の青春を進める。

奈々は自作の誕生日カードを作っていた。
父さんよりハンサムな父さんに仕上がっていた。
「いいじゃん!!絶対喜ぶよ!」


みんなが内緒で誕生日会を開いてくれるつもりだったことを知った・・・
家族は今も変わっていなかった・・・
こんなに思ってくれる家族を疑ってしまった・・・
膝から崩れ落ちるようにしゃがみこんでしまう。


照美は一時停止ボタンを押し、安彦の肩を取り優しく立たせた。
「この子たちね、あなたの誕生日にサプライズパーティしたいって。」

「親父、今日で50だろ。今は無職だけどいつも頑張ってくれてるし・・」
照れくさそうに明が言うと

「普段は冷たい態度しか取れないけど、たまには親孝行しようと思って・・」
はにかみながら奈々が言う。

自分たちがいろいろ考えていたのに、
急に出て行ってしまった父を心配して、明が尾行して行先を突き止めた。

「お仕事とか、いろいろ大変だと思うけど 頑張ってねお父さん♪」

最高の誕生日。うれしくて涙があふれ出てしまう・・

「ったく、こっちが恥ずかしいだろ!」
「ほら、早く帰ろう!」


安彦のケータイが鳴った。立ち止まり電話を取る。
警察から強盗犯が捕まったことを知らされる。

「おい、強盗の犯人捕まったって。」

照美は安心して、机に置かれていたグラスに入っていた水を飲もうとする。
そのグラスはさっき毒薬を入れた!!!

「やめろ!!!!」


神沼はグラスが割れる音と、柱時計が鳴る音を外で聞いた。





究極のツンデレですね。
家族全員交えてのいじめと取ると、重みが違います。
安彦がどうとらえているかがポイント。

今のお父さんを反映しているようでちょっと胸が痛かったです。
グラスが割れたのは、飲んでから落としたのではなく、
安彦が止めたから、だと思いたい!!



安彦一人、もやし炒めを食べてましたが
今話題の50度洗いをしていれば、劇的に美味しくなります。


から揚げはドーンと盛られたのを食べたいですね。





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走馬灯株式会社 第6話 雪村静香 ストーリー ネタバレ 佐藤江梨子 佐藤仁美 [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 Disc.6 第6話 雪村 静香(32)

自殺交流サイト Suicide-Meeting のページを見つけた。
ここには人生をあきらめかけた人や、
自殺願望者が書き込みをしているようだ。

少し人生に疲れている人がここの掲示板を読めば
自殺の方向に気持ちが傾いてしまうほど、ネガティブな内容ばかり・・


「誰か一緒に死にませんか?」

掲示板に引き込まれた人が自殺者を募った・・・・


この映像を見ていた人が、リモコンを使って電源を落とし
走馬灯株式会社の部屋を後にした。
使用されたディスクが乱雑にテーブルに置かれている部屋に入り、
この部屋の使用者の今後のことを神沼(香椎由宇)は考えた・・・・・


走馬灯現象・・死の間際に見る記憶映像。
それが今観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社


街からかなり離れた廃屋に、一台の車が止まった。






Disc.6雪村 静香(32)

この廃屋に来たのは雪村静香(佐藤江梨子)と風間美沙子(佐藤仁美)
静香は大きな荷物を部屋の中に運び入れた。


「じゃあ、始める?」

静香は美沙子に声をかけた。
来て早々に始めることに抵抗を感じる美沙子だが、

「あんまり遅くなっても、しょうがないし・・・」

腕時計を見ながら話す静香に従うしかなさそうだ。
静香が大事そうにつけている腕時計が気になった。

「これいいでしょ?気に入ってるの。」
静香は持ち物も服装も、かわいくて似合っている。
そんな静香のことが少しうらやましく思った。

「最期ぐらいは、着飾って終わりたいじゃん。」


静香が運び込んだカバンの中身を取りだす。
もう一方を美沙子が取りだす。

静香の方には練炭コンロ。美沙子の方は練炭が入っていた。


「みーやんさんは、何であのサイトに?」

「やっぱり・・・なかなか思いきりがつかなくて・・
それで掲示板に悩みとかを書き込んでいたんです。
なさけないですよね・・・

一人だと不安だったし、スノーさんと知り合えてホントよかったです。」

「私も、みーやんと会えてよかったと思ってる。」


自殺交流サイトに静香が書き込みをしたことが縁で知り合った2人。
互いのことは詳しく知らず、ハンドルネームで呼び合う仲だった。
静香はスノーと呼ばれ、美沙子はみーやんと呼ばれていた。


性格が暗く、就職活動はうまくいかなかった。
ようやく雇ってくれる会社を見つけたが、理由もなくクビ・・・
みーやんはここに至るまでの自分を簡単に話した。

みーやんはまず先に自分のことを話し、スノーにも理由を聞いてみた。
だがスノーにとって思い出したくない過去だった。
腹を割って話し合う友ではない。ただの自殺仲間・・

「思い出したくないことばっかだから、こういう道を選んだんだし・・・」

スノーは作業を急いだ。

練炭コンロ4台全てに火を熾し、ほどよくなじむまで外に放置。
その間に、窓や扉の隙間にガムテープを厳重に貼っていく。


「練炭って、苦しくないんですよね?」
外で白い煙をあげている練炭コンロを見てみーやんが尋ねた。

練炭はあまり苦しくなくて、睡眠薬を飲んで眠るだけで実行できる方法。
この考えに至るまでに、いろんな方法を考えてみたが、
飛び降りは高い所が苦手だし、首つりは、いろいろ垂れ流しになる。
自分の最期は綺麗に終わりたかった。
方法や手順に準備、全部スノーが行って、後は実行が残るだけ・・

もし失敗したときには後遺症があり、記憶喪失や半身不随・・・
そんなことにならないためにも、失敗は出来なかった。


部屋にみーやんを残し、練炭コンロを取りに外に出た。
コンロを取るために手袋をはめていたら、
プレハブ小屋に不釣り合いなネームプレートを見つけた。
“走馬灯株式会社”
気になるネーミングに、好奇心が勝ち 扉を開けた。


突然、自分の今まで生きてきた記憶がフラッシュバックする。
気が付いたら乗り込んでいたエレベータは屋上階に到着していた。
扉が開いた。おそるおそる扉の外に出ると
外では神沼が静香の到着を出迎えていた。

「ようこそお越しくださいました。私、走馬灯株式会社の神沼と申します。」
「すみません・・・誰かが居ると思わなくて・・」

ただの好奇心が迷惑をかけたと思い、恐縮しながら帰ろうとする。

「ご安心ください。あなたがどのような道を選ばれようと私は一切関与いたしません。
ただ、こちらで人生の最期にふさわしい体験をお約束します。

ここは、人生を顧みていただく場所でございます。」


興味をそそる話しを聞いた静香は、言われるがままに部屋に入った。
部屋の中に 幸村静香vol.00~32が置かれていた。

「こちらのディスクに、あなたの人生が納められています。

それでは、スノーこと幸村静香さま。
あなたの32年の人生を、心ゆくまで顧みてください。」

神沼は深々と頭を下げると部屋を出て行った。
残された静香・・先ず最初に手にしたのはvol.28


映し出されたのは静香の仕事部屋で、静香の書いた本は10万部を突破していた。
この喜びと裏腹に、個人ブログは誹謗中傷が書き込まれ、炎上・・


それはブログだけにとどまらず、週刊誌は男性遍歴を暴露・・
ただの友達だが、書かれ方がひどかった。
静香は自立した女性をテーマに本を書いていた。
これでは本の内容と行動が一致しない。イメージはがた落ち・・
エッセイの連載は打ち切り、その他の仕事もなくなった。
もう終わり・・・・

自暴自棄になったときにたまたま見つけたのが自殺交流サイト。


それで書き込みをしてしまった。「誰か一緒に死にませんか?」


さっき神沼から“心ゆくまで顧みてください”と言われた。
こんなひどい人生をもう一度見たかったわけではない。
自分の一番輝いていた時、vol.30を見ることにした。


ベストエッセイストアワードを受賞した時の映像が映し出された。
奮起して地道に書いていたエッセイ“孤独だなんていわれたくない”が
エッセイストアワードを受賞し、本として出版されることになった。
幸村静香が復活したときだった。


多くのカメラや記者からの囲み取材を受けている。

「雪村さん、エッセイストアワード大賞受賞の秘訣を教えてください。」
「“何回壁にぶつかっても、絶対にあきらめるな。
次の一回できっと何かが変わる。”
誰の言葉か忘れましたが、その言葉があったからこれまでやってこられました。」


“回壁にぶつかっても、絶対にあきらめるな。”
こんな大事な言葉を忘れてしまっていた・・・

思いを巡らせていたときにメールが入る。
みーやんからで、「どこです?」と書かれていた。
練炭コンロを取りに行ったのに、
みーやんを放ったらかして走馬灯株式会社に来ていた。
帰らないと!!


「もうお帰りになられるのですか?
自分自身の人生を受け入れるかどうかは、あなた自身の問題です。
私から申し上げることは一切ございません。」

「そうじゃなくて・・ありがとうございました。」
「またのご来社、お待ちしております。」

神沼が部屋に来た人の行動に、助言を与えるのは初めてのことだった。
忠告したい何かがあったのかもしれない。
神沼の立場で話せるのはここまで・・・


再生されたまま、静香のコメントが流れ続けていた。
「これからも自分に素直に執筆していきたいと思いますので、
よろしければこれからも応援して下さい。」

その後に個別取材を受けていた。
最初の雑誌社の女性が、名刺を手に出したまま静香に近づいた。
雑誌社の女性は名刺を差し出し

「K談社の風間美佐子です。」この女性はみーやん!!
静香はまだこの事実に気づいていない・・


静香は慌てて戻るとみーやんを探した。
部屋の奥にいたミーやんの姿を見つけて、ほっとした。

「よかったぁ無事で・・・今さらだと思うけど、もう止めない?
別に、怖くなったとか そう言うんじゃないの。
けど、何も死ぬことないんじゃないかって・・

あたし、エッセイストだったの。割と大きなエッセイ賞とか獲って・・
けっこう有名になったんだけど、結局うまくいかなくて・・
生きているのも辛くなって、“死ぬしかない”って思ったの・・・」


かなり追いつめられていた静香。
走馬灯株式会社で見せてもらった映像で、信念を思い出せた。

「何回壁にぶつかっても、絶対あきらめちゃいけない。」


真剣に、率直に今の気持ちをみーやんに話した。
みーやんはスノーの言葉に納得をする。

「でも、いくら頑張ってみてもどうにもならないことだって・・・」

話しに納得したものの、気持ちを変えられない・・

「人生、辛いことばっかりじゃないって。
これまでだって、楽しい時はいっぱいあったでしょ?
そのときを思い出したらきっと・・・」


みーやんを説得する材料を思い出した。
スノーはミーやんを連れて走馬灯株式会社に行く。

「ココって、この人の人生も見られますよね?」
「もちろんご用意しております。」

みーやんはおどおどした目つきで神沼をチラリと見る。
神沼は目線をそらさず、みーやんをガン見した。

幸村静香と風間美佐子のディスクが机に並べられていた。
静香はみーやんが“風間美佐子”だと初めて知った。

静香はディスクの説明をし、
これまでの人生の中で、楽しかったときや嬉しかったときなど、
一番みたい時を選ばせた。

美沙子が手にしたのはvol.32
まるで知っているものを触るように、さっさとディスクをセットした。



映し出された映像は、どこかの記者会見会場で
「雪村さん、エッセイストアワード大賞受賞の秘訣を教えてください。」
という声だけ聞こえる。

自分のディスクではないのに、
自分が大賞を受賞したときの映像が映し出されることに驚いた。


「“何回壁にぶつかっても、絶対にあきらめるな。
次の一回できっと何かが変わる。”
誰の言葉か忘れましたが、その言葉があったからこれまでやってこられました。」

静香の話す横顔が見えた。

「何であたしがみーやんの人生に?前にも会ったことが??」


映像は個別取材に移った。
美沙子はまっすぐ静香に向かい、「K談社の風間美佐子です。」と告げる。
静香は笑顔で美沙子の名刺を受取ろうとするが、
美沙子の着けていた腕時計に目が留まり、名刺を取るのをためらった。

「悪いけど、この取材は中止してくれる?
すぐK談社に電話して、この記者をクビにしてくれるように言ってくれる?
クビにしないんだったら、そっちの取材は一切受けないって。」


「こんな貧相な女のくせに、私と同じ腕時計をしているだなんて信じられる??」

静香は今着けている時計をちらっと覗き見た。
今着けているのは、今問題となっている腕時計と同じ・・・・


時計が同じというだけで、仕事を目の前で切られた。
トボトボと帰る美沙子。静香は別の出版社と話し、満面の笑みで対応する。

「やっと思い出した?人気エッセイストさん!!!」
美沙子は首に巻きつけていたストールを外し、首を絞めた。



気が付いた静香は、手は後ろ手にされ 足首にも紐を巻きつけられた姿となっていた。
自殺のために部屋の準備をしていたので、
見つかっても自殺としか断定できない
練炭が赤々と燃えていた。


「何なのコレ?」
「死にたかったんでしょ?だから望み通りにしてあげようと思って。」


美沙子が静香に名刺を渡したときに付けていた時計は、
死ぬ前に就職祝いで父が買ってくれたもの・・・

「私みたいな女がつけちゃいけないんだよね?
セレブでなきゃダメなんだよね?
やっと見つけた仕事なのに、あんたのせいでクビになった。

彼氏にもフラれて、家族にまで なさけないとバカにされた・・
どうしてくれんの??

それなのに自分だけセレブ気取りでブログなんかやっちゃって!
炎上するのは当たり前でしょ。」

静香はようやく気付いた。
ブログの炎上は美沙子一人がしたことで、
写真週刊誌にリークしたのも美沙子・・・


「あんたを陥れる為ならなんでもした。
でも勘違いしないで、あんたの人気がなくなったのは
あんたの性格がクソだから。

死のうとしたのだって、本当はみんなに注目してほしかったからでしょ?
人の人生狂わせておいて、一人だけ死のうだなんて・・
絶対に許さない!!

あんたのやろうとしていることなんて、全部知ってるんだから!
あんたの人生見てたのよ。」


美沙子は静香に連れられて行く前から走馬灯株式会社に行ったことがあった。
そこで静香の人生を全部見てきた。
静香が自殺交流サイトに書き込みをしたのを見て、計画を実行に移した。


「あとはごゆっくり・・」
美沙子は静香を置いて部屋を出ようとする。

「ドアを外から開かないようにするから、もって2時間程度かな?」
「いやだ!死にたくない!!」
「今さら何?死にたがっていたくせに。」

美沙子は出て行った。扉は厳重に閉められる・・・


静香は這いずってサッシ扉の近くまで移動した。
扉にもたれかかると、背中を扉に叩きつける。

「開いてよ!開いて!!」

「静香、頑張れ!!」
泣きながら背中を打ちつけていたらお父さんが目の前に現れた。
というか、子供の頃逆上がりが出来ず、
父が一緒に練習に付き合ってくれた日のことを思い出した。

いくら頑張っても出来ない静香は“出来なくていい”とあきらめた。
そんな静香の様子を見て、

「静香、この先の人生も いろんな壁にぶつかるはずだ。
でもな、何回壁にぶつかっても 絶対にあきらめるな。
次の一回できっと何かが変わる。わかったか?」


自分を励ましてくれた言葉は、父が話してくれたことだった。
これは走馬灯株式会社がおまけを見せてくれたのだろうか・・・

ここでやめるわけにはいかない。次の一回できっと何かが変わる!!
父の言葉を思いだし、渾身の力で体を扉に打ちつけた。


扉ははずれ、静香の上半身だけは外に出た。
まだ生きられる!そう思うと笑いが込み上げてきた。
泣きながら笑う。生きることを実感したときだった。


飛び出した金網を使い腕のガムテープをなんとかほどいた。
両手が使えると、足のガムテープは難なく取れる。

「私・・何で自殺なんてしようとしたのだろう・・」
静香は膝を抱えてぼんやり考えていた。



静香の現在のDVDを美沙子は走馬灯株式会社で見ていた。

「ねえ、この映像 雪村静香のリアルタイムの映像よね?」
美沙子は側に居た神沼に問う。

「はい。」

美沙子は何も言わずに部屋を後にした・・・




自分だけでなく、相手も走馬灯株式会社のことを知っていたら・・・
かなり気持ち悪い粘着体質ですね。

劇中の理紗子の恨みはかなり深いですね。
あの粘り強さを別のことに使えたら・・とは思いますが、
面接官の質問事項は、自分を思った以上に現実の中に沈めていきます。

自己否定さえするほどに・・・

そのどん底から這い上がるのも自分でしかないんですよね・・

話しは途中で終わりましたが、
静香が生きながらえているといいなぁ・・


稼ぐなら、オークションを試してみたら。
静香程の根性があれば、稼げます。











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走馬灯株式会社 Disc 5 第5話 柳井研二 ネタバレあらすじ 山中聡 渡辺哲 [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 Disc 5 第5話 柳井研二(40)

再生されたままの映像を、食い入るように見ている神沼(香椎由宇)
そこに映し出されているのは・・・


調書作成中の刑事。一息つこうと胸元から禁煙パイプを取り出す。
恨めしそうにパイプを見つめながら、タバコを吸いたい気持ちを押さえていた。
衝立を立てて話し合いをしている一角から、怒鳴り声が聞こえてくる。


「どうしてあんなマネをしたんだ!」
「所轄内で起こった事件を調査したまでです。」
「あの現場は、刑事課が内々に捜査していたんだ。
貴様の勝手な行動のせいで、全てふりだしだ!!」
「申し訳ありませんでした・・・・」



平成19年

夏の暑い日、
交番勤務の警察官は、自転車にまたがり必死で先を急いでいた。
早く報告したい何かがある様子・・



署内では合同会議が開かれていた。

「被害者3名は、いずれも高校に通う16歳から17歳の少年です。
検死によると、火災による重度の熱傷
死亡推定時刻は本日未明 午前3時から4時の間
焼け跡からガソリンが検出されていることから
何者かが意図的に火をつけたと推測されます。

現場のビルは4年前から廃墟になっており、少年たちのたまり場でした。
時々ここで酒を飲み、寝泊りすることもあったようです。
被害者の中の一人は、万引きやバイクの窃盗、補導歴があります。・・・・」


会議の途中でそっと入室してきたのは、
一生懸命自転車を走らせていた柳井研二(山中聡)

「あの・・ちょっといいですか?」
沖島昭造(渡辺哲)の側に立つと席を外すように声をかける。
柳井は沖島を部屋の隅まで誘導した。


「おおお・・・沖島さん、落ち着いて聞いて下さい。
奥さんが、火災のあった雑居ビルから飛び降り自殺を・・・・」

沖島は覚悟していたような顔つきで、考えを思いめぐらせる。



それから数日・・・柳井はいつものように交番勤務をしていた。
そこに沖島が尋ねてきた。

「ちょっと話せるか?」
「このたびは、大変残念なことで・・・」
「そうじゃない。少年の放火殺人の件だ。

あ・・あの事件の犯人は・・・俺だ。」

柳井は面食らったまま沖島の顔を、穴が開くほど見つめてしまった。



走馬灯現象・・死の間際に見る記憶映像。
それが今観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社


「あの高校生たちを殺したのは“俺だ”と言っているんだ。
俺の息子が、半年前に自殺したのは知っているだろう?
原因は、中学生時代の同級生から受けていたいじめだ・・

俺は彼らを許せなかった・・・」

息子を自殺に追いやった彼らの居場所はすぐに調べがつく。
それで火を放った・・
警察官である沖島が、そんなことをしたとは考えられないし、
柳井は、本人から告白を受けても信じられないでいた。


信じられないかもしれないが、動機は充分にある・・・


もし 沖島が犯人だった仮定して考えてみると、ひとつ腑に落ちない点がある。

「なぜ放火だったのか?」
最初から出頭するつもりで“する”なら、もっと違う殺害方法があったはず・・


「これは出頭じゃない。お前、刑事課志望だったろ?
柳井、お前が逮捕するんだ。

妻は知ってしまったんだよ。
俺が以前から復讐の機会を伺い、それを実行したことを・・
息子を失った上に、夫が人殺しになったんだ。
自ら死を選んだのも無理はない・・・」

「手錠をかけろ、柳井。お前が望んでいた大手柄だ。」

沖島の言葉に動揺を隠せない柳井・・
手錠をかけやすいように両腕を差し出す沖島。
必死に、懇願するような目で柳井を見つめる沖島の目を見て悟り
観念して手錠をかけた・・・・


私は沖島刑事を逮捕し、警部へ昇進した。



それから5年の月日が流れた・・

柳井はいっぱしの警部としてバリバリと仕事をこなしていた。






DISC5 柳井研二(40)


取調室では尋問が行われている。
柳井の部下が尋問をしているが、殺しを認めても、凶器のありかは話さない・・
部下は柳井に後を託した。

被害者女性の写真を見せながら、柳井は挑発するように話しを進める。

「あの人が一方的に別れたいと言ってきたんだ。
だからカッとなって殺したんだよ!」

語るに落ちた・・・
自分の女のことを“あの人”と表現することは絶対にありえない。
おそらく上のほうから身代わりを言われて出頭してきたチンピラだと思われる。


この案件にかかりっきりで2日も寝ていない柳井は
後の処理を部下に任せて家に帰ることにした。

その前に一服・・
喫煙場所に腰を下してタバコを吸う。
自分の横に置かれている閲覧用の新聞がたまたま目に留まった。
そこには沖島の記事が書かれてあり、慌てて記事を読んだ。


“沖島昭造被告の死刑が確定”

死刑の文字が柳井に重くのしかかる・・


家でも妻の恵(馬渕英俚可)が心配して沖島のことを聞いて来た。
沖島は柳井の面会には応じてくれず、逮捕してから一度も会っていなかった。
それは余計に、柳井の胸にトゲとなって残っている。
死刑が確定したということは、半年から一年以内に執行されることが通例だった。
会えないまま、刑を執行されてしまう可能性があった。



やりきれない気分の時は、どうしてもタバコが欲しくなる。
家では吸わないように我慢していたが、タバコを買いに外に出た。


家の近所をブラブラと歩くことはめったにない。
いつも仕事に追われて、街並みを見て歩く余裕もなかった。
今日は散歩を兼ねてブラブラと歩くことにした。


昭和の頃に建築されたアパートが建ち並ぶ一角・・
朽ちていく姿を残した建物に、
不思議なほど綺麗な引き戸とネームプレートが付けられていた。

“走馬灯株式会社”

柳井は吸い寄せられるように引き戸に近づき、扉に手をかけた。

眩しくて目を開けていられないほどの光を受けて、
今までの人生がフラッシュバックされていく。



気が付いたら乗り込んでいたエレベータは、屋上階に到着していた。
扉が開いた。おそるおそる扉の外に出ると

「ようこそお越しくださいました。
わたくし、走馬灯株式会社の神沼と申します。」

深々とお辞儀をされて少し面食らう。
「ここは人生を顧みていただく場所でございます。」


部屋の中に通され、机にならべられたディスク・・
柳井研二 Vol.00からVol.40

「当社のライブラリーには生死にかかわらず
全ての方の人生を納めたディスクをご用意しております。

事実が必ずしも真実とは限りません。
真実が歪められたことに誰も気づかなければ、それが事実になりますから・・
ディスクをご覧になれば、事実に気づく場合もあるかもしれません。

それでは柳井研二さま、あなたの40年の人生を心ゆくまで顧みてください。」

神沼は深々とお辞儀をして部屋を後にした。


部屋に残された柳井。見たい年度は・・Vol.35
そこに映し出されたのは、
交番勤務になったときの就任の挨拶をしているときだった。
子供にもお年寄りにも優しい対応をする柳井の姿が映る。
なんだか懐かしい・・早送りをしながら見進めていく。

交番に沖島が来た日が映し出された。慌てて通常再生に戻す。
これは沖島が罪の告白をするときだ!

「あ・・あの事件の犯人は・・俺だ。」

忘れもしない この後、罪の告白を聞いた。

「原因は、中学生時代の同級生たちから受けていたいじめだったんだ。
俺は・・彼らを許せなかった・・・」

ん??“彼ら?”
殺したいほど憎んでいたやつらを“彼ら”と言う?
交番勤務時代では見抜けなかったが、
今の自分が聞くと、沖島が不思議なことを語っているように思えた。
今感じる疑問はひとまず置いて、映像を先に進める。


「ひとつ、腑に落ちない点があります。“なぜ、放火だったんですか?”
最初から出頭するつもりでやるなら、もっと違う殺害方法が・・」

「これは出頭じゃない。
お前、刑事課志望だっただろ?柳井、お前が逮捕するんだ。」

ん??自分が質問したことの答えを、沖島は答えていない。


「どうして放火だったんだろう?
・・・・違う・・沖島さんじゃない。沖島さんはヤッてない。」

柳井は沖島が犯人でないと気付いてしまった。
どうしても沖島さんに会って話しをしないといけない!
それを知ってか知らずか、
取次を頼んでも、面会の許可が下りなかった。
沖島さんからの拒否・・



家でご飯を食べながら、考えるのは真犯人のことだった。
沖島さんでない、本当はだれなのだろうか・・

「いくら息子の復讐とはいえ、現職の刑事が少年を殺したりするかなぁ?」

恵につい話してしまった。
沖島には子供がないので、子供を持つ親の気持ちにはなれない。
でも仮にも刑事、子供のためとはいえ殺しは出来ないと心から思うし、
自分は多分やれないし、やらない。

だが、恵は考えが違っていた。
刑事だなんだと立場なんて考えずに、殺しに手を染めるだろうと・・
“同じ苦しみを味あわせてやりたい”こんな気持ちにとらわれるはず。
それが母親の心理なのかもしれない。


沖島は思い出したように走馬灯株式会社を尋ねた。

「ここではすべての人の人生が見られるって言ってたよな?」
「ええ。ご本人と関わりのある人であれば・・・」
「沖島さん、沖島昭造の人生を見せてくれ!」


早送りをしながら、沖島の当日の行動を見進める。
沖島さんはどこにいたのだろうか・・

沖島は長い間いろんなところをさまよい歩き、夜がすっかり更けていた。
公衆トイレに入り、ポケットから取り出した家族写真を眺めている。
その後歩き進める場所は・・・放火のあった廃ビル!
沖島は現場にいた!?

沖島は廃ビルを見上げ、スーツの胸ポケットの辺りを探り
拳銃を取りだした。

その瞬間 爆発音が響き渡り、廃ビルの一角が炎に包まれた。


「あ・・・・あぁぁぁ・・」
復讐を遂げるはずが、目前で阻止された。
沖島は力の抜けた声を発して、燃え盛るビルを見つめていた。

そこを沖島の妻:夏子が、灯油缶を持ってよろよろと歩いて出てくる。
昭造の顔を見ると、気が狂ったように夏子はわめき出した。


「どうしよう・・あなた、ごめんなさい・・
どうしても許せなかったの・・昭太を死に追いやった人間を・・
のうのうと生きているなんて・・・」

夏子の気持ちは痛いほどよくわかった。
もしかしたら直接手を下したのは自分のはずだから・・



映像を見て真実を知った柳井は、呆然とその場に座り込んで動けなかった。
映像は、自分が沖島に奥さんの自殺のことを告げに行く場面になっていた。
これ以上見る必要がない・・
映像を流したまま、走馬灯株式会社を後にした。



沖島との面会がようやく叶った。自分が手錠をかけて以来・・

「ごぶさたしています。沖島さん・・」
「あぁ・・柳井、今どこの部署だ?」
「刑事課です。」
「よかったなぁ・・」
「あなたのおかげです。」

「沖島さん、本当のことを話してください。
あの少年たちを殺したのは沖島さんじゃない。」

「誰かに話したか?」
「いいえ・・」


「どうして奥さんの罪を被ろうとしたんですか?」
「殺したのは俺だ。」

確かに当日、沖島が彼らを殺そうとして現場に行った。拳銃を持って・・
しかし、奥さんの方が一歩早かった。
現場に着くと、奥さんがすでに火を着けていた。そうですね?

「本当のことを話してください。」

罪を被ったなんて思ってない。
沖島自身が自分の手で殺したかったから・・


「どうして自分に逮捕させたのですか?」

「犯罪を犯した者は、償いをしなければならない。
だが死んでしまった妻は、償うことができない。
だから俺が、代わりに償おうと思った・・」

妻を・・・殺人犯にしたくなかった・・


息子を失った上に、人殺しとして死んだなんてむごすぎる。
夫の人殺しを悲しんで、自殺したと思われる方がまだいいだろう。

大いなる決意で沖島は刑に服していた。


「あの時気付けなかった・・俺がバカでした・・」
「気づいたじゃないか。だからここへ来たんだろう。
立派な刑事だ。」

柳井の成長を沖島は本当に喜んでくれている。
笑顔で祝福・・それが余計に痛く胸に刺さる・・


「誤認逮捕にしたら・・無理ですか?」
「俺が望んだことだ。だから・・柳井、このことは・・」
「言いませんよ。誰にも・・言えません」

沖島の懇願する顔を見ていたら、もうこれ以上何も言えなかった。
最後の望みをかなえてあげることぐらいしかできない・・

「ようやく、妻と息子の所に行ける・・」

面会時間は終わり、沖島が先に部屋を出る。
その後ろ姿を見ながら、最後のお別れをした。
沖島は振り向くと、柳井に最高の笑顔を見せた。

泣きながら、でも笑う・・最高の姿だった。


真実を知っても何も変えられなかった。
真実を知ったことは幸せだったのだろうか・・
沖島の後姿に、深々とお辞儀をした。



沖島は一歩ずつ階段を上っていく。妻と息子に会うための最後の儀式。
刑が執行される前の最後の時を、柳井に与えてくれていた。
柳井は感謝しながらも、うなだれたまま そこから動けなかった。



走馬灯株式会社では、映像が流れたままだった。
これは沖島のディスクのようだ。
熱血漢あふれる柳井が上官に叱られているところ・・

こってりと絞られた柳井は、トボトボと廊下を歩いていた。
沖島は柳井に声をかける。

「ずいぶん絞られたなぁ・・」
「手柄を立てたら刑事課に行けると思ったんです。」
「そうあせるな。真面目にやってりゃ いつかチャンスは来る。
お前なら、そのうち手柄を取れる。そしたら俺が刑事課に推薦してやるよ。」

それでもしょぼくれている柳井にタバコを差し出した。

「かみさんから止められてるから。俺は今これだ。」
禁煙パイプを見せながら笑いを誘った。


柳井に逮捕させたのは、自分の言葉を実行したかったからなのだろうか・・
沖島の人柄の良さを感じながら、
神沼は再生を止め、手早くディスクを片付けた。




究極に追いつめられると、人は本性を現す。
沖島は家族を、妻を愛し、柳井に目をかけていた。
生にあらがうことなく、思い残すことないようにとっさに考えた。
人間としてよく出来た人なんだと思います。


柳井家の夕食は餃子でした。
神戸餃子はご存知ですか?
つけだれが味噌なんですよ!!


味噌はちょっと・・・とお考えなら こちらはいかが?
つけだれ無しでおいしいです!






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走馬灯株式会社 第4話 妹尾 舞 ネタバレあらすじ 岡本玲 香椎由宇 ロクさん [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 Disk 4 第4話 妹尾 舞(20)

ベビーベッドの中ですやすやと眠る赤ちゃんの頭を
手製のブレスレットを付けた手が優しく撫でる。



走馬灯現象・・・それは死の間際に見る記憶映像。
それが今 観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社







DISC 4 妹尾 舞(20)


田中千代服飾学校のオープンキャンパスのポスターを見ながら
妹尾舞(岡本玲)は大きなため息をついていた。

ポスターを見ただけで、中に入ることはなかった。


陸橋の隅で座り込んでいる一人の男の人がいた。
大きな荷物を乗せたカートを脇に置き
汚れた服を着て、体中をかきむしりながら
通りすぎる人を見ていた。

その道を通りがかった舞。
座り込んでいるホームレスを、横目でチラリと見たが
気にも留めずに歩みを進めていた。

アロハシャツを着て、手に紙袋を下げた男の人が突然舞にぶつかった。
その拍子にガラスの割れる音がする。

「あぁぁぁぁ・・どうしてくれるんだよ!!」

髪袋の中にはワインボトルが入っていて、
ぶつかったときに落として割ってしまったようだ。


「ごめんなさい・・・」
「ごめんじゃないんだよ!高かったんだ、このワイン!!」
「弁償します・・・」
「30万だよ。」
「30万!?!?」
「ビンテージだもん。そのぐらいはするよ。」
「私、そんなに払えません・・」
「いくらなら払えるの?」


ぶつかってきた男は怒っているようにも見えるが、
その先を見越して、優しく舞の顔を覗き込みながら交渉してきた。

「ちょっと、お兄さんさぁ・・もういい加減にしておきなよ。」

陸橋の付け根の所で、
毎日のように座り込んでいる、さっき見たホームレスが声をかけてきた。
毎日決まったときに、決まった時間陸橋にいるので
アロハの男が他の女性にも同じ話をしていることを知っていた。
今回は舞に同情してくれたのか、救いの手を差し伸べてくれた。


「お譲ちゃんさ、一緒に警察に行こう。
おじさんが一緒に行ってあげるからさ。」

「ち・・ちょっと待った!今回は勘弁してやるから・・
俺もよそ見してたしな。許してやるよ。」

身に覚えがあったのか、警察沙汰にしたくなかったのか、
アロハの男はすんなりと引き下がり、足早に去っていった。


ホームレスの男は何も言わず、元いた場所に戻ろうと歩き出していた。

「ねぇ、お礼させて。
助けてくれた人には、ちゃんとお礼をしなさいって親に言われてるから・・」



近くの公園のベンチに腰をかけ、一緒にビールを飲む。
ホームレスのおじさんはノドを鳴らしてビールを飲んだ。

助けたばっかりに、余計なお金を出させたとおじさんは恐縮するが
あのままだったら30万を取られていた所だと思うと、
ビール代金ぐらいは安いものだ。

「私、瀬能舞っていうの。おじさんは?」
「・・・・ロクさん(佐戸井けん太)なんて呼ばれてる・・」

若い娘に名前を聞かれ、照れながら教えた。
助けてくれたし、一緒にビールも飲んだ・・
舞はこれから、おじさんを知り合いとして接することに決めた。


というのも、上京してきたばかりの舞は
身の上を語る友達もいなくて、さびしい思いを抱えていた。
普通に、気軽に話せる人が欲しかった・・

舞はデザイナーを志望して上京。
デザイナーの専門学校に行きたいが、
手持ちが足りずにバイトをする日々を過ごしていた。
その間にもデザイン事務所に出向き、
デッサンを見てもらうが、箸にも棒にもかからなかった。


ロクさんに見せてもわからないのはわかっていたが、
せっかくなのでロクさんにも見てもらった。


小さい時に夢で見た、自分がファッションデザイナーになっている姿・・・
その夢を夢で終わらせないためにも、デザイナーになりたかった。
そうすることが当たり前のことだと信じて、夢の体現のために頑張る。

母は舞を産んですぐに死んでしまい、父はどこにいるかもわからない。
施設に入れられて成長した舞は、親代わりの人に育ててもらった。

まくし立てるように、一気に自分のことを話した。
こんなにいっぱい人と話したのは本当に久しぶりのことだった。


ロクさんは、舞がデザイナーの話をする姿にハッとして、
執拗にお父さんのことを舞に尋ねる。
舞はいくら聞かれても
自分が赤ちゃんの時にいなくなった父のことを、覚えていなかった。

父のことを聞いてくるロクさんが不思議だったが、
バイトの時間が迫っていたので、それ以上の追及はやめにした。

「じゃ、またね。今日はありがとう。」

舞はこの場を去っていった。
ロクさんは後姿を見ながら考え事をした。
ビールを持つ その腕には、手作りのブレスレットが付いていた。


初めて会った人が助けてくれた。
自分の身の上も話し、いいお友達が出来た気分・・
世の中捨てたもんじゃないなぁ・・なんて思いながら
ちょっと笑顔で公園の中を歩いていた。


建物の裏口。
掃除道具が適当に並べられた奥にある扉に、
不似合なほど立派なネームプレートが取り付けられていた。
“走馬灯株式会社”
この不思議なネーミングに惹かれたのと、好奇心が手伝って
ドアノブに手を掛け、扉を開けた。


眩しくて目を開けていられないほどの光を受けて、
今までの人生がフラッシュバックされていく。



気が付いたら乗り込んでいたエレベータは屋上階に到着していた。
扉が開いた。おそるおそる扉の外に出ると
外では神沼が理央の到着を出迎えていた。

「妹尾舞さま、
ようこそお越しくださいました。走馬灯株式会社の神沼と申します。」


神沼(香椎由宇)は奥の部屋に舞を案内した。
ソファに腰を掛け、目の前のテーブルには
自分の名前が題名のDVDが00~20まで並べられていた。

「それでは妹尾舞さま、
あなたの20年の人生を心ゆくまで顧みてください。」

神沼はvol.00 をディスクにセットして部屋を後にした。



Vol.00は、すなわち妹尾舞の0歳の時の出来事・・
装飾関係の仕事場らしき場所の片隅に置かれたベビーベッドで眠っていた。
目を覚ました舞は、背を向けて仕事をしている男性に向かって泣きだす。

男性は少し諦めたように仕事の手を止め、舞の様子を見に来る。

「父さんな、まだ仕事中なんだ。これ食べておとなしくしててくれ。」

赤ちゃん用のお菓子を舞の口に入れながら話しかける。


この様子を見て、舞は初めて父の顔を知った。
こんな形だが、父の顔を見ることができてとてもうれしかった。
父は妹尾雅彦(辻本一樹)で、職業はファッションデザイナーのようだ。


「雅彦、この資料の衣装は出来上がってるか?」「おう!」

父は衣装を準備する。
男性はトルソーを用意して衣装を着せ、2人で最終確認をする。


2人で確認している映像を見ていて、
片方の人がロクさんに似ているように思えた。
画面に食い入るように見続けて、やっぱりロクさん本人だと思った。


デザインを書いたのはロクさんのようで、父はデザインをとても褒めている。
ロクさんもデザイナー??


赤ちゃんはいつでもすぐに眠ってしまう。
大人の自分には大事なことでも、赤ちゃんの自分ではどうでもいいこと・・
せっかくいいところでも、すぐに眠ってしまった。

目が開いている時間だけ映し出される映像を見るために
早送りをしながら見進めていく。
ロクさんが、父の首を絞めている様子が映し出された。


父の首を掴んで揺すっているように見える。
抵抗する風でもなく、力尽きたよう・・
ロクさんは手を離すと、泣きわめく舞の方に少しずつ近づいてくる。
腕を伸ばして舞にも手を掛けそうな雰囲気だった。

だが途中で近づくことを止め、部屋を出て行った。


先を見るのが怖くなり、ポーズボタンを押した。
さっき助けてくれたロクさんが、父を殺した?!
会話の中では、やたらに父のことを聞いていたし・・
もしかして、ロクさんは舞のことを知ってて近づいてきた?

怖くなった舞は、ここで再生をやめて部屋を出た。



今日もデザイン画を持ち込んで面接に挑む。
学校にも行っていない舞のデザインを採用してくれる会社はない。
それでも何とかこぎつけた面接だったが、
ロクさんのことを思い出して上の空・・
こんなことで採用はありえなかった。


ロクさんが私の父を殺した??
この考えは頭の中から消えず、トボトボと道を歩いていた。
いく先は決めずに歩いていたのに、
気が付いたら田中千代服飾学校の前に来ていた。


楽しそうに笑いながら出てくる生徒の姿を見ながら、
羨ましそうにオープンキャンパスのポスターを、今日も眺める。
生徒たちの後ろから、ロクさんが出てきた。
とっさに身構え、物陰に隠れて様子を探った。


足早に歩くロクさんを尾行する。これはただの好奇心・・

ロクさんは関わるとややこしそうなヤクザ系の男の人と会っている。

「そういう組織ならウチで紹介できるけど・・本当にいいの?
やっちまうのは簡単だけど・・・」

男はロクさんに話しをしている。
盗み聞きしている舞の姿を見つけたロクさん。
気付かれたことがわかり、舞は走って逃げだした。


何もなかったようにバイトに入った。
仕事をしていてもロクさんのことが思い出されて上の空・・
仕事が手に付かない状態・・
お客さんの顔がロクさんの顔のように見え、
感じなくてもいい恐怖をも感じてしまう・・重症だ・・



いつも座っていた陸橋に、ロクさんは今日いなかった。
会いたくなかったので都合がいい。
足早に家路を急ぐが、カートを引きずる音が聞こえてきた。
この音は、ロクさんがいつも引きずるカートの音に似ている・・・

振り返って存在を確認すると、やっぱりそこにロクさんが居た。


「来ないで!!」近づかないように警告する。

ロクさんは言われた位置に足を止め、腹巻の中に手を突っ込んだ。
あぶない道具が出てくると思い、身をすくめて抵抗しようとすると

「これ・・・・」分厚い封筒を差し出した。
「いや、あたし知ってんだから!あなたがお父さんを殺したって!!
私のことも殺そうと思って付きまとってんでしょ!!」


「黙って受け取ってくださいよ。」

舞の腕を掴み、強引に封筒を渡し、何も言わずにその場を去っていった。
ロクさんに渡された封筒の中身を確認すると、そこにはお金が入っていた・・・



「私のじゃなく、他の人のDVDも見ることができますか?」

舞はまた走馬灯株式会社に来ていた。

「ご本人と関わりのある方のものであるなら・・
一つの視点からでは見えてこない真実もあります。」


部屋に通されると、舞と景山六郎のvol.00~50のDVDが置かれていた。
とりあえず一番最近のvol.50を再生させる。


ロクさんが服飾学校から出てくる前が映し出された。
建物の中に入り、入学案内に手を伸ばす。
中を開いて入学金の案内を見る。2年で300万円ほどかかることを知った。

その足でロクさんは関わり合うのがややこしい男と会話を交わす。

「おい、おい!!本当にいいの?」
「お金が・・・いるんです・・」
「わかった。腎臓なら、一つ100万円ってところだ。」
「もう少し、何とかならないですかね?」
「腎臓じゃなくて、他のなら300万円出せるけど どう??
命の保証は・・・・ねえ。」
「お願いします。」


自分を殺そうと思って監視していると思ったのに・・
この密約はどういうこと??

さっき貰った封筒の中身を確認する。
中には300万円ほどの現金が入っていた。


お父さんとロクさんの間には、一体何があったのだろう?
不思議に思った舞は、20年前に当たる“景山六郎Vol. 31”を見ることにした。



ロクさんは父が出勤してくるのを廊下で待っていた。

「大変だ、大変なことになってるよ!!これを見てくれ・・・」
どこかのカタログに、自分たちのデザインした品が入っていた。

「ウチのデザイン画!!パクられている!!」
「これ、俺だから・・・」


有名ショップが、デザイナーとして誘いをかけていた。
このデザインは手土産のようなもの・・・

悪びれることなくロクさんに説明する父・・


「手土産って何だよ!!これは俺が書いたデザインだぞ!!」
「考えても見ろよ、お前が俺だったらどうするよ!」
「少なくともパクりなんてやんねぇよ!!!」

「そうかよ!!わかったよ!
お前が欲しいのは金だろ!わかったよ、用意してやるよ!!それでいいだろ!」
「そういうコトじゃねぇだろ!」

ロクさんは作業場に入る父の肩に手をかけた。

「こんな生活はうんざりなんだよ!!」
「俺とお前がさ、2人でこうやって会社を・・・」
「うるせぇな!!お前とは終わりなんだよ!!」

ロクさんの手を振りほどこうとして変な力が入った父・・
力の反動で足がもつれ、後ろ向きに机に激突してしまった。
打ち所が悪かったのか、名前を呼んでも返事がない。
ロクさんは慌てて近づき、父の肩の辺りを掴んで懸命に揺さぶる。

だが息を吹き返すことはなかった。

何か異変に気が付いたのか
ベビーベッドで眠っていた舞は火が付いたように泣き叫び
ロクさんは舞を抱きかかえに行こうとするが、
血が付いた腕を見てハッとし、

「ゴメン・・・・」

そのまま部屋を出て行った。



これは事故・・ロクさんは何も悪くない・・
映像は警察の姿に怯え、自殺も叶わない・・・・
そんな悲しい苦悩の日々を過ごしたロクさんの姿が映し出されていた。



ロクさんにひどいことを言ってしまった・・・
泣いている場合じゃない・・
舞は部屋を飛び出し、ロクさんに会うために走った。



息を切らして いつもの場所まで走った。
でもそこにロクさんの姿はない・・


ロクさんは苦しい息をしながらいつもの場所に帰ろうとしていた。
体が思ったように動かない・・
ベンチに腰かけ、腹巻から一枚の写真を取り出した。



舞は公園の方に駈け出した。
一緒にビールを飲んだ場所にいるかもしれない!
やっとベンチが見えた!
近づくが、やっぱりロクさんはいなかった。


大きな木の植え込みに、ぐるりと丸くベンチが作られていた。
舞が到着した裏側に座っていたロクさん・・

「舞ちゃん・・ごめんな・・俺のせいで・・・」

赤ちゃんの舞と舞の父、ロクさんの3ショットの写真だった。
写真につぶやくように懺悔して、命が尽きた・・・・


「どこに行っちゃったのよ、ロクさん!!
いなくなっちゃったら、怒ることもお礼言うこともできないじゃない!」

封筒を握りしめて涙を流した・・



数年の月日が過ぎた・・

あのロクさんからのお金を返す準備は出来ている。
机の一番下の引き出しに、大事にしまった。


舞は自分の夢を現実に変えていた。今ではショップを経営するほどに・・
買い物に来た女の子から憧れと羨望の眼差しで見られる立場だ。


「ロクさん。あたしここでずっと待ってるから・・」



神沼は出て行った舞がつけっぱなしにしているDVDを見ていた。

「ただいま!舞ちゃんお休みでしたか?
舞ちゃんは大きくなったらデザイナーさんになるんだよ。
舞ちゃんは美人さんだからモデルさんがいいかな?
やっぱりデザイナーさんだな。大きくなったら一緒に仕事しようね。」

手製のブレスレットを付けた人が、
舞の髪を優しく撫でながら話しかけている。
これが舞の夢の原点なのかもしれない・・・


神沼はここまで見るとディスクを取出し、手早く片付けを完了させた。




今回のエピソードを初めて見たときは勘違いをしていました。
ロクさんが舞の父親だと思っていたのです。
だって、出てくるシーンでは父親よりも優しいですし・・・
よく見ると他人なんですよね・・
なのに自分の命を投げ出して救済してくれる・・・

凄い人でした。

贖罪の人生が疲れてしまったのかもしれません。
最後は合わせてあげればいいのに・・意地悪だ!


これ、本当に美味しいです!


缶飲みではなく、グラスに入れると美味しさがさらに増します!






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走馬灯株式会社 第3話 多岐川理緒 ネタバレ 岩佐真悠子 [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 Disk 3 第3話 多岐川 理緒(22)


「待て 待てぇ~」
「こっちだよ~~~」

山深い田舎の陸橋で、少女たちが“追いかけっこ”をして遊んでいる。
前を走っていた少女が転んだ。

「はい。捕まえた♪」二人で楽しげに笑いあう。
「今度は私が鬼ね♪」


この映像を、無表情に見つめる走馬灯株式会社の神沼(香椎由宇)



走馬灯現象・・・それは死の間際に見る記憶映像。
それが今 観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社







DISC 3 多岐川理央(22)


カーナビが、車を走らせている途中で動きをやめた。
山間にポツリと残される・・・

運転手をしていた多岐川理央(岩佐真悠子)は
カーナビの画面をバンバンと叩きながら怒っていた。

隣でのんびりしていた理緒の彼:小泉隼人(石田卓也)は
怒っている理央をのんきになだめた。


理央は一刻も早く着いて温泉に入りたいと思っていた。
腕時計のアラームを0時にセットしながら
今日中に着くことを目標にした。


カーナビがないので、頼りになるのは地図だけ・・
広げて見てみるが、隼人がシートを倒して眠りに入ったことが腹立たしかった。

後部座席に座って 眠っていた沼田しのぶ(藤井美菜)

「日本人なら海外よりも温泉!」と
この3人での旅行を計画した張本人。
理緒はしのぶに地図を渡してナビを任せ、車を走らせた。



意外とすんなり目的地“二笑村”に到着。
村の入り口には、なぜか大きな門扉が建てられていたが
扉は全開で開いていたので、不思議だと感じることもなく
今日の宿泊地“二笑村 温泉旅館”に到着した。


旅館の女将が出迎えてくれ
しのぶと隼人は記帳のために先に上がっていった。
理央は、旅館の壁に飾られている額を見ながら

「ここって・・・・?」

何かを思い出しそうで、考えを巡らせていると しのぶに呼ばれた。
二人の方に向かって廊下を歩きだす。

仲居がすれ違いざまに「お先に。」と理央に声をかけて出て行った。
何のことだかわからずに、仲居の行く先を見ると
村人が大勢 仲居を迎えに来ていた。
特に不思議な要素はなく、気にすることなく部屋に向かった。



部屋でおかみがお茶を淹れながら、建物の説明を始めた。
“源泉かけ流しの温泉”
こんなことを聞くとすぐに入りたくなり、お風呂の支度を始める。

ずっと黙り込んで仕度をしていた理央。

「こういうとこ、お父さんも連れて来てあげたかったなぁ・・・」


父が死んで もう一年が経とうとしていた。
事故で死んだこともあり、なかなか気持ちの整理がつかなかったが
そろそろ立ち直らなければと思っていた。
でも、こういうところに来ると、つい父のことを思い出してしまう。


「大丈夫。俺が理緒を支えてあげる。」

隼人の言葉に、これまでどれほど勇気づけられただろう。
せっかくの温泉旅行なのに、しんみりしては楽しくない。
とりあえず温泉に入って、最初の“のんびり”を満喫することにした。

ふと窓の外を見ると、
一番いい部屋だと しのぶが自慢げに話しをしていたのに、
おびただしい数の墓が建てられているのが見えた。
一瞬気味悪さを感じたが、あまり気にすることはないと思い直し、
しのぶと露天風呂に向かった。



お風呂には誰もいなくて、2人だけの貸切状態。
昼間っから日本酒をなめるように飲みながら、お湯を満喫していた。

女2人、話題はやっぱり“彼氏”
理緒と隼人のカップルが“できちゃった結婚”をしそうな気がして
しのぶは莉央にくぎを刺した。
2人の関係を妬んでいる風ではないようだ。


しのぶは先に上がり、理央はお湯の中で まだのんびりしていた。
岩にもたれかかっていた背後から、何者かに頭をお湯に押さえつけられた。


不意をつかれたので酸素が足りない・・
懸命にもがくと、冷酒を乗せて浮かべていた風呂桶を掴むことができた。
やみくもに風呂桶を振り回す。
頭を押さえつけていた人は、身の危険を感じたのか逃げ出した。


九死に一生を得た理央は、また襲われる危険を感じ
浴衣を慌てて着ると、旅館に向かって駈け出した。

胸元を押さえながら下をむいて走っていると、目の前に人の気配を感じた。
顔を上げて見てみると、そこにはおばあさん・・・
同情とも憐みともつかぬ目で、こちらをじっと見つめ続ける。

目を逸らすのが怖かった。
一歩ずつ前に足を進めながらも おばあさんを凝視し続け
建物の近くまで歩くと、踵を返して扉を開けた。


建物についている看板”走馬灯株式会社“
旅館の入り口でもなんでもなかった。
理央はそんなものを見ている余裕もなく、
ドアノブに手を掛け、思いっきりの力で扉を開けた。

眩しくて目を開けていられないほどの光を受けて、
今までの人生がフラッシュバックされていく。



気が付いたら乗り込んでいたエレベータは屋上階に到着していた。
扉が開いた。
乗り込んだときの思いっきりの力の反動で体は扉の外に出る。
外では神沼が理央の到着を出迎えていた。


「ようこそお越しくださいました。走馬灯株式会社の神沼と申します。」
「会社?警察を呼んでください。さっきお風呂で襲われたんです。」

「ここは人生を顧みていただく場所でございます。」

警察を呼ぶことが先決だと理央は考えて話しをしたが、
神沼はエレベータの前にある部屋に理央を招き入れた。


「あなたがこの村に来られたのは偶然か運命か。
こちらのディスクでその答えが見つかるかもしれません

それでは多岐川理央さま、
あなたの22年の人生を心ゆくまで顧みてください。」


そう言うと神沼は“多岐川理央 Vol.05”のディスクをセットし
部屋を出て行った。


「理央、見てごらん 立派なお家だね。」
映し出されているのは、今日の宿泊地“二笑温泉旅館”
若い頃の父が理央の手を引いている様子。

「ここはなぁに??」
「この村に産まれた者は、みな必ずここに来るんだよ。」


この村で産まれて、二笑温泉旅館に来たことがあったようだ。
ディスクの内容が気になり、画面にクギづけになっていく。


「いいか理央、この村では ばあ様の預言は絶対だ。
予言が外れると、大変なことが起こるんだ。」

子供の理央では理解出来ないことを真顔で説明する父。
これだけ言うと安心したのか理央の手を引いて
旅館の階段を上がっていく。


2階の奥の部屋は祭壇がしつらえられてあり、
生き神様のように ばあ様が中央に座って祀られていた。


「どんな内容だろうと、ばあ様の預言は絶対。
もし予言が外れるようなことがあれば、村に災いが起きる。
わかってますね。」

旅館で出迎えてくれた女将が父に向かって念を押す。


「ばあ様、娘の理央です。
しきたりどうり、この娘の最期を予言して下さい。」

理央は父にうながされるままに、ばあ様に近づいた。

「お前は、22歳の7月30日この村の神不帰(かみかえらず)の滝で、溺れ死ぬ。」

飾り水晶玉に手をかざしながらばあ様はこう言った。

このばあ様は、さっき目をそらすことをためらったおばあさんだった。
あのおばあさんは予言者?
なんだか怖くなってポーズボタンを押した。
少し冷静に考えてみる。

22歳の7月30日・・・・??

部屋に置かれていたデジタル式のカレンダー付時計は
7月30日15:11を示していた。
理央の今の年齢は22歳。今日は7月30日。

死の宣告を受けている。それも 今日!!!!


ただの田舎の迷信だと思いたい。
先が気になった理央は、早送り再生を押した。


予言を受けたのと同時に、1階では男が騒いでいた。
「死にたくないんだ!!!!」
父の名を呼びながら、懸命に懇願している。

「あなたは今日、この村で首をつって死ぬの。
でないと、村に災いが起こるのよ。」

女将はこの男の人に諭すように話しをする。

「嫌だ!死にたくない!!」
「自分だって、今までさんざん死なせてきたくせに。」

理央のおかあさんは、この男の人が手にかけていたのだと知った。


ここで理央は悟った。さっきは誰かが自分を殺しに来ていたことに・・・
ばあ様の予言でいうと、“溺れ死ぬ”運命だったから・・



「だから・・・予言の通りに人を殺してんだって!!!」

急いで旅館に戻り、帰り支度をしながら
さっきまでの出来事を話して聞かせる。
風呂上りでのんびりしていた隼人としのぶは
理央の話すことが本当のこととは思えない。


「理央って、東京で産まれたんだろ?」隼人の言葉に
「5歳のときに逃がしてくれていた・・・」

その時の映像を思い返す。


父は理央の手を引き河原まで逃げていた。
後ろから村人がゾンビのように湧いて出て襲いかかろうとしていた。

「22歳なんて早すぎる!女房と子供を奪われてたまるか!!!」

決死の思いで村から抜け出していた。
何も覚えていない自分は、
わざわざ来なくていい村に足を踏み入れてしまった・・・
父の思いを知ったこともあり、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。


ケータイもつながらない、車のキーはみつからない・・・
ツイてないときは、とことんツイてない・・

帰る様子をおばあさんが見ていた。自分の死を予言した人・・・
そんなところに戻るつもりは毛頭なかった。

カバンを肩にかけ、村の出口に向かって歩き始めた。


村の出入り口の門は固く閉ざされていた。
どうしたら抜け出ることができるのかを考えていたとき、
目の前に人が倒れ込んできた。

この顔は・・・?
旅館ですれちがいに声をかけてきた仲居!!
そのときに言った「お先に。」の意味が今ではよくわかる。
彼女の次は自分・・・・


後ろから手に鎌や鍬をもって、村人総出でこちらにやってくる。

「お騒がせしてすみません。
その仲居は、前からノイローゼ気味でして、
自分で胸を突いて自殺したんでしょうねぇ・・
また、お墓が増えてしまいます。」

女将が淡々と説明口調で話しをする。
そんなわけはない。もうからくりはわかっている。

村の人口の割に、お墓がかなり多かった。
理央は少しづつこの村の異常さに気づいていく。


理央は出口に向かって走り、隼人は襲いかかる村人を止めた。
門は開かないので、脇にあった けもの道をひた走る。



どれぐらい走っただろう・・息が上がりこれ以上走れない。
木に捕まり、少し休憩・・・

「理央!!!」
しのぶが理央を心配して追いかけてきていた。


「お客様~~~~お戻りください!山は危険ですよ!!!」

女将の声がすぐそばで聞こえる。
木の幹にしゃがみ込み、息を潜めてやり過ごす。
山よりも、追いかけてくる村人の方が怖かった。
でもここに隼人がいない・・
見捨てて帰ることなんて出来なかった。
隼人を探しに戻ることにした。



月に もやがかかり、辺りは一層暗くなっていく。
隼人が見つからなくて、山を上がったり下りたりして村に近づいた。

水が多量に流れる音がする。ここは・・・滝?
理央は滝の存在に目をくれず、隼人の名を呼び続けた。


この滝は“神不帰の滝”
この滝こそが、理央が溺れ死ぬ場所・・・

ふと見た立札に書かれた“神不帰の滝”
読み方がわからなかったが、
よくよく考えてみると“かみかえらずのたき”
また自分から死ぬべき場所に来てしまった・・
早くこの場から立ち去らなければ・・


「えい!!!!」
しのぶが理央を落ちていた石で殴りつけてきた。

「ったく、世話かけさせないでよね。
お風呂でおとなしくしていてくれたらよかったのに・・」

ニヤリと笑いながら、理央のお腹を蹴り飛ばす。

「ちょっと眠っててね。」
しのぶは持っていた石で、もう一度理央を殴りつけようとした。
理央は落ちていた棒きれで、しのぶの足のすねの辺りを殴った。
足を押さえて痛がる。


「しのぶ・・・何で・・・?」
「ううっ ううっ ああああぁぁぁ アハハハハ!アハハハハ!!!」

痛がっていると思ったら、突然笑いだした。
気が触れた?狂ってる??
そんなしのぶを見ているのが怖くなり、理央は走って逃げだした。



飛び込んだのは走馬灯株式会社。

「ここって、他の人の人生も見れるの?」
「ご本人と関わりのあった人であれば、ご覧になることもできますが・・」
「しのぶの、沼田しのぶって子のを見せて!」



“沼田しのぶ Vol.22”を再生させる。

最初に確認したかったのは、露天風呂でのこと。
やっぱり後ろから頭を沈めていたのはしのぶだった。

でも・・どうして・・・・?

親友だと思っていた しのぶがこんなことをするのが考えられなかった。
次は出会ったとき“沼田しのぶ Vol.18”を取り出して再生させた。



「ばあ様、それでは行ってきます。」
二笑温泉旅館をでていくしのぶ。村人全員が見送りに来ていた。

「みなさま、ご安心ください。
うちのしのぶが、東京の大学に行くことになりました。
必ず、あの娘を村に連れて帰ります。」

女将が村人にこう話すと、村人から歓声が沸き起こった。
しのぶの母親は女将のようだ。


少し考えて、“沼田しのぶ Vol.05”を再生させた。

「はい。捕まえた♪」楽しげに笑いあう少女たち。
「今度は私が鬼ね♪」

このころんだ子は理央。
自分と反対の場面を見ていると言うことは、子供の頃の遊び友達。


鬼になった理央はしのぶを追いかける。
陸橋の根元でしのぶを迎えに来た母親(女将)
追いかけっこは自然に終わり、しのぶは母の方に走り出す。

「あの子と遊んじゃダメだっていったでしょ。
あの子はどうせ大人になったら死んじゃうんだから。」
「本当に?死ななかったら??」
「もしもの時は、あなたが死なせてあげて。
恋人も同じところでね。それがばあ様の予言だから・・・」


恋人・・・?どういうこと??

気になった理央は、自分のディスクVol.05をもう一度再生させた。



「お前は22歳の7月30日この村の神不帰の滝で、溺れ死ぬ。」
ばあ様が神託を下したところで、父親が激高しだした。

「お前は22歳の7月30日この村の神不帰の滝で、溺れ死ぬ。恋人も同じところで。」

ばあ様が一度話したところから早送り再生で見ていた。
2度も言っていると思わなかった。
しかも予言の内容が増えている。


隼人の身が危ないと感じた理央は神不帰の滝に引き返す。
村人に肩を持たれて、隼人は滝の方に歩いている姿を確認した。
なぜ抵抗もせずに連行されているんのだろう?
考えていた理央の肩をつかんだしのぶ。

「捕まえた♪」

子供の時にした遊びとはわけが違う。本当に捕えられた。
滝の近くまで連れて行かれる。


「あんたが私と仲良くしたのって・・」
「そう、全部この日のため。理央には今日溺れ死んでもらわなきゃ♪」


隼人は関係ないのに巻き込まれてしまった。
「隼人、大丈夫?」
「うん、大丈夫。どうせ俺も一緒に死ぬんだから・・」

隼人は死を受け入れている?おかしい・・・
陸橋でしのぶと遊んだ、5歳の時のことをつぶさに思い出そうと頭を巡らせる。

そういえば、陸橋のそばにある木の近くに“男の子”が立っていた・・
これは、子供の時の隼人!?
隼人もこの村で産まれた子供だった・・


「なんで、なんでなの隼人!!
ずっと一緒に生きて、支えてくれるって言ってたじゃん!!!!
あれは全部、全部ウソだったの!!」
「しょうがないよ。ばあ様の予言は絶対なんだからさ。」

「知ってる??理央のお父さんも私たちが殺してあげたんだよ♪」
最期に聞かせなくてもいいのに、
わざと苦痛を味あわせるようにしのぶがバラした。

「予言通りに殺すの、たいへんだったよな!!ハハハハハ!!!」

村人は楽しいイベントのように人の死を話す。
狂ってる。村の全員イカれてる。
理央は絶望のあまり下を向いたとき、ハタと気付いた。


「近づくな!近づいたら自分で死んでやるから!!!」

近くに落ちていた瓶を割り、首元に押し付けた。
理央の予言は“溺れ死に”死傷では予言どうりにならない。
村人は慌てて理央から離れた。


「一歩も近づかないで!!!」
「予言が外れたら、村に災いがくるの。お願いだから考え直して。」
友達ヅラしてしのぶが懇願してくる。

「やめろ、俺たち恋人どおしだろ?」
隼人も恋人ヅラをして理央を止める。


死にたくないけど、殺されるぐらいなら自分で死んだ方がまし!
ガラスを勢いよく首元に近づける。


ピピピピピピピピピ・・・・・

理央の腕時計のアラームが鳴った。
このタイマーは、0時丁度にセットし直した・・・
ということは、予言の日を超えたってこと??
7月31日0時!!

日付が変わった・・・予言がハズれた・・・・・・

村人は災いを恐れ、頭を抱えて嘆き悲しむ。


そして誰もいなくなった・・・・



東京に帰った理央。
家に帰る途中の道端で、電話かけ今日のバイトの休みをお願いした。
まだ心の整理がつかないでいた。

ケータイの待ち受けは、3ショットの笑顔の写真・・・
まやかしの友達関係だったことが信じられない・・

何かを考えることはやめにした。


特大ビジョンでは、ニュース速報が流れていた。
「緊急速報です。
台風6号による大雨の影響により二笑村で、大規模な土砂崩れが発生しました。
二笑村全体が土砂にのみ込まれ
、土砂崩れが二笑村に壊滅的な被害を与えています。・・」


予言が外れたら、村に災いが来る・・・
たしかそんなことを言っていたが、これは災いなのだろうか・・?
そんなことを考えながら家路を急ぐ。

「懸命な救助活動をしていますが、現在生存者は確認できていません・・」

ニュースの声を聞き流しながら歩いていると、
すれ違う人の中に違和感を覚えた。

目の前に立っていたのは しのぶと隼人。その後ろには村人たちがいた。
逃げ出そうと後ろを見ると、いつの間にか村人に囲まれていた。

「捕まえた♪」


神沼はここで再生を止める。というか、ここまでなのだろう。
手早く“多岐川 理央”のディスクを片付けた。




友達関係や恋人が、第三者によってコントロールされていたとしたら・・・
これはかなり怖いです。
自分の友達に限って・・
なんていいように考えると足元をすくわれるかしれません。


値段にびっくりしますよね。
でも、お湯のまろやかさは温泉以上です。
お手入れ次第で長い間使うことができます。


温泉にいくときの必需品はこのバッグですよね!!




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走馬灯株式会社 第2話 堤友樹 ネタバレ 柏原収史 手島優 [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 Disk 2 第2話  28歳

「アゴの下の方に注射を打っていきますね。
チクッとするけど、がまんしてね。」
女医が注射をしようとしている。
ここは手術室なのか・・・・?


この映像を止めたのは走馬灯株式会社の神沼(香椎由宇)
慣れた手つきで映像ディスクを取出し、ニヤリと笑った。
こうなる事が最初からわかっていたのだろうか。


走馬灯現象・・・それは死の間際に見る記憶映像。
それが今 観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社






Disk 2 堤友樹 (柏原収史) 28歳

地下にある隠れ家的バーでの2次会。
堤友樹はカウンター席に腰掛け、妻に電話を入れていた。
上司がもう一軒行くようで、まだ帰れない・・・

身重の妻のためにも早く家に帰りたが、それも叶わず
待ち受け画面の妻の顔を見て、自分を慰めていた。



「堤主任~~~~ 主任は、3軒目行くんですか?」
後ろから抱きついてきた中田サヤカ(手島優)
足元はふらついて、ろれつが回らなくなっている。

サヤカは誘うように上着を脱いで、胸元を強調してくる。
モーションをかけてきているのはわかっていたが、
友樹はこの女性に覚えがなかった。

「もう!覚えてないんですか?この前入った派遣の中田ですよ♪」

頭の中を引っ掻き回し、名前を思い出した。
「あの・・・サヤカちゃん?」
「あぁん、うれしい♪」

サヤカは友樹の顔を自分の胸近くまで引き寄せた。
谷間がのぞく胸元を至近距離で見せられて、男としての本能が目覚める。

「これから・・二人で飲み直しません?
私、堤主任と飲みたいなぁ・・・」
直球で誘いをかけるサヤカ。
ここまで言われると断ることが難しい。
二人は関係を持ってしまった。


ベッドの中で目を覚ました。隣はサヤカが眠っている。
誘惑に負けた自分を反省しながら、
眠っている間にホテルを出ようと身支度を始めた。

洗面所で顔を洗い、少し気分をすっきりとさせ部屋に戻る。
起きていたサヤカはベッドに腰を掛け、
タバコをくゆらせながらケータイを見ていた。
それは、友樹のケータイ!!


「ちょ・・何してんだよ!」
「番号登録しておこうと思って・・」
一夜限りの関係に、登録も何もない。

「で、友樹は 奥さんといつ別れるの?別れるでしょ?」
「何言ってんだ!」
「別れないなら、私 何するかわかんなけど・・」

「ねぇ、友樹とは運命感じるんだ。」

潤んだ瞳でこちらを見ている。
面倒な女と関わってしまったことを後悔しながら
素早く服を身に着け、足早に部屋から出た。



音を立てないように鍵を開け、音を立てないように扉を閉める。
家のリビングの電気を点けたとき、

「おかえり!」

妻:梨穂(松本莉緒)寝室から出てきた。
寝ていると思ったのでびっくりしたが、
遅くなっても出迎えてくれる妻が愛おしい。
梨穂は友樹のために夜食を作るためにキッチンに立った。


友樹のケータイが鳴る。メールのようだ。
開いて見ると、
差出人は中田サヤカ “記念写真だよ♪”の文章と添付された写真。

スクロールさせて写真を見ると、ベッドで眠る友樹とサヤカの写真。
自分の眠っている間に撮られていたと知り、ハッとする。
理穂はまだキッチンにいるので中身を見ていない。
とりあえず“課長”からだと言ってごまかした。



次の日、友樹は出勤してすぐ、PCメールをチェックする。
仕事メールの確認のためだが、差出人のほとんどが中田サヤカだった。
50件近いサヤカのメールに気持ち悪さを感じていたとき、

「おはようございます。」
耳元でささやくようにサヤカが挨拶をしてきた。
びっくりして慌てふためくが、周りの人は二人の関係を知らない。
いつも通りの対応に努めた。

サヤカはお茶を置いてその場を去る。
友樹は視線を感じて振り向くと、サヤカがこちらを凝視していた。
パラリと落ちた髪を耳に掛けながら・・・・



職場で変な緊張感が続き、まっすぐ家に帰りたくなかった友樹。
ちょうど2次会で使った店の近くを歩いていた。
一杯だけ飲むつもりで、店の階段を下りる。


扉を開けようとして“走馬灯株式会社”と書かれていることに気づいた。
店の名前が変わっただけだろうと、気にせず扉を開けた。

足を一歩踏み入れたと同時に、
今までの人生が早送りで巻き戻されていく。
その速さに驚きを感じていると、
いつの間にかエレベータに乗り込んでいて
最上階で扉が開いた。


この状況を把握しきれないまま、エレベータから出る。
周りをキョロキョロと見回すと、目の前に神沼が控えていた。

「ようこそお越しくださいました。
わたくし、走馬灯株式会社の神沼と申します。」
神沼は友樹に深々とお辞儀をする。

「ここは人生を顧みていただく場所でございます。」
部屋の扉を開けて、友樹を中に誘導する。
友樹はこの場所を、
とても質のいいビデオルームのようなものだと判断した。
何か不都合が出たときには、内線電話がつかえるらしい。


「そちらのディスクに、あなたの人生が収められております。
早送りやチャプター再生も可能ですし、
興味が湧かなければ、最後まで見ていただく必要がありません。」

堤友樹と書かれたディスクが00~28まで並べられていた。
神沼は00のディスクを入れた。


「それでは堤友樹さま。あなたの28年の人生を心ゆくまで顧みてください。」



「あ!笑ってる!ともくん!!ともくん、ママですよ~」

今よりも相当若い母が笑顔で話しかけていた。
周囲に映る風景を見て、実家だと気付いた。
ここで神沼の言葉を理解した。自分に起こった人生を見られることに・・


Vol.16まで見進めていた。
季節は冬。バレンタインデーの日だった。
2人の女子からチョコを貰った。どちらの娘もかわいくてうれしい。

そう、こんなにモテてた頃があったなぁ・・と
思い出して、つい鼻で笑ってしまった。


「堤くん待って!」
友樹が女子に呼び止められて立ち止まった。
呼び止めたのは長谷川。校内でも数えるほどのデブでブス。

「私と付き合ってほしい。」長谷川は告白。
「冗談だろ?」
「堤くんのこと、ずーっと見てた。ずっと憧れてた。
私の気持ち、貰って。手作りなの!かわいいハート型なの!
ねぇ貰って、貰ってよ~~~~」


自分の主張をグイグイと押し付けてくる長谷川がウザくて、
差し出されたチョコを払いのけた。

「お前みたいなやつと付き合う訳ねぇだろ!!」
落ちて散らばったチョコを拾い上げ、長谷川にぶつけて返した。


「友樹とは、運命感じるの。」
長谷川はそういいながら、耳に髪をかけた。


友樹はこのことばとしぐさを思い出した。
昨日と今日にかけて、サヤカがしていたことと同じ!
もしかして、長谷川はサヤカ!?
そんなことを考えながら、続きを見た。


告白の後から、長谷川の押しは強かった。
お弁当を作ってきたり、
友樹がどこにいても見つけ出したりして 付きまとっていた。

いくら拒絶しても、いくら拒絶しても付きまといは終わらない・・・


「これって運命なの。」
髪を耳に掛けながら、グイグイと攻めてくる。
友樹は薄ら気持ち悪い長谷川から離れようと 逃げ出した。

この映像で確信した友樹は、上着とバックを手に取り家路についた。


家に戻るやいなや、学生時代の友達に電話をし、長谷川の行方を聞いて回った。
だれも詳しいことは知らず、東京に出てきていることだけはわかった。


次の日は休日で、赤ちゃんの定期健診に付き添った。
産まれてくる子供のための準備の話をしながら歩いていると、
自分たちの前からサヤカが歩いてきた。


サヤカが長谷川だという疑惑が晴れていないので、ギクシャクしている友樹。
とりあえず梨穂にサヤカを紹介した。

「主人がいつもお世話になっております。」
「いえいえ、私の方こそ いつも優しくしていただいて・・・」

本妻と愛人が顔を合わせたような、火花が散っていた。
空気が悪いことを察知した友樹は、梨穂に話しをふった。

「どうしたの?こんなところで・・・」
「実は・・生理が来なくて調べに来たんです。」
「へ???」
身に覚えがありすぎて、友樹の驚きの声は裏返った。

「冗談ですよ♪
なんか、足の爪が巻爪になっちゃったみたいで 見てもらいに来たんです。」


無邪気に友樹に向かって笑顔を見せるサヤカ。
その後、おもむろに梨穂のお腹を撫でだした。
大きいお腹は9ヵ月。もうすぐ産み月だった。

「きっとかわいいお子さんなんでしょうね。」
梨穂の腕をとり、サヤカから引きはがした。


夜眠っていると、リビングの方で、大きな音がした。
梨穂をベッドに残し、友樹はおそるおそるリビングの方に様子を見に行った。

電気を点けると、飾ってあった二人の写真の写真立てが倒れていた。
身体に風を感じて窓の方を見てみると、締めたはずの窓が開いていた。
カーテンを開けて確認したが、人の気配は全くなかった。


友樹は長谷川が来たのだと思い、警察に連絡を入れた。
高校時代からのストーカーが来ていると。
直接的被害に遭っていないので、警察は動いてくれなかった。
その時に走馬灯株式会社のことを思い出し、急いで向かう。


入口では神沼が、
自分が来ることを知っていたかのように出迎えてくれていた。

「ここって、他のやつの人生もあるんだろ?」
「ございます。
ご本人と関わりのあった方であれば、お見せすることができます。
一つの目線からでは見えてこない真実もありますから・・・」

「長谷川っていう女の人生、見せて。」


友樹は長谷川正美Vol. 16 を開けてディスクを再生させた。
「何がサヤカだ!どうせ長谷川なんだろ?」

再生させて見たのは、バレンタインの日。
友樹が見たのと逆の目線・・・
長谷川正美は、友樹からチョコをぶつけられていた。
それに悲しみを持つのではなく、
バッグから白を基調にしたハートのシールでデコレーションされた手鏡を取り出す。
鏡を覗き込みながら
「絶対あきらめないから!!」とつぶやいてた。


早送りをしながら見ていくと
長谷川はずっと友樹をストーキングしていた。
登校中、お昼休憩、放課後・・
デジカメで、いろんな友樹が隠し撮りされていた。
友樹が学生時代につきあっていた彼女と、
誰もいない教室でキスして抱き合っていたときも、長谷川は見ていた。

「あんな女、死ねばいいのに・・」
長谷川は呪いの言葉を吐いていた。



ディスクは進んでいき、Vol.24 を再生させていた。
うとうとして目を覚ましたとき

「それではふき取ります。」
「長谷川さん、まずはアゴの骨から削って行くから。
かなり長い手術になるけど、そのつもりでね。」
「大丈夫です。大切な友樹のためだから・・・」

「アゴの下の方に注射を打っていきますね。
チクッとするけど、がまんしてね。」

友樹は長谷川が成形したことを知った。

「長谷川さん、これから包帯を取っていくね。」

手術は終わり、包帯を取るところまで時間が過ぎていた。
ようやく待ちに待った成形手術後の長谷川の顔が見れると思い、
なんだかわからない気合が入った。


包帯の分量が少しずつ減り、景色が明るくなってきた。
全部外されて、医師の顔が画面に映る。
医師は鏡を長谷川に渡す。

鏡を覗き込んだ長谷川は・・・・梨穂!?

見てはいけないものを見てしまった。
衝撃の事実に足元から崩れ落ちる。

「梨穂・・・・?」
よく考えてみると、梨穂はよく髪をかきあげるクセがあった・・・



病院から連絡をもらい、急いで駆け付けた。
まだ長谷川が梨穂だと思いきれなかった。
とにかく梨穂に会わなければいけない・・そんな気持ちでいた。


病室の扉近くで梨穂の様子をうかがった。
出産は終わり、梨穂は鏡で顔を覗き込んでいた。
手元をよく見ると、白を基調にしたハートのシールのついた手鏡だった。
あれは16歳の長谷川が持っていた物と全く同じ・・・・

梨穂は友樹の気配を感じて顔を上げ、微笑みかけてきた。
ぎこちない笑顔を返す友樹。

「やっと会えたね、赤ちゃんに・・
友樹の赤ちゃんを産むの、夢だったんだ・・」

「かわいい女の子ですよ。」
看護師はそう言いながら、友樹に赤ちゃんを抱かせた。

「こうなるのって、やっぱり運命だったのね。」
梨穂が16歳の時と変わらぬ言葉を投げかける。

友樹が赤ちゃんの顔を見てみると、
かわいらしさのかけらもない、長谷川に似た子だった。



茫然自失。友樹はロビーのソファでうなだれていた。
ケータイが鳴る。それは中田サヤカからのメール

ご報告。
妊娠しました。やっぱり運命だね♪



走馬灯株式会社の一室ではDVDが再生されたままだった。
この部屋は友樹が使用していた部屋・・

映し出される画面には、友樹が梨穂に声をかけた所だった。
「よかったら、一緒に飲まない?
突然こんなことを言うのも何だけど、“運命を感じる”んだよね。」

「なんだろう・・初めて会った気がしないんだよね。」


神沼はディスクを取出し、手際よく片付け始めた。





もし大好きな彼女が全身整形している人だったら!
こんなことを考えるのも怖いかもしれません。
それに、”昔大嫌いだったデブでブスの同級生”も乗っかります。

知らずに結婚して、子供が生まれる直前・・・

恐ろしすぎることが次々重なります。

一夜限りの関係と思っていた人が妊娠したことがわかり
八方ふさがりの状態からどうやって抜け出すんでしょうね。

実際ならこんなに怖いことはありません。


全身整形は怖いので、骨盤矯正はいかがでしょうか。


シンクロ選手じゃないですが、鼻が高くなるかしら?




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走馬灯株式会社 第1話 Disk 1 ネタバレ 窪田正孝 横山めぐみ [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 第1話 Disk 1 関隆広 23歳

「たくさん食べてね。」
「うん。いただきます!」
「あ!お母さん!!」
少年は少女とのままごとをやめて、迎えに来たお母さんの所に駈け出した。


マンションの一室。
シックにまとまった部屋には、存在感抜群の大型テレビがあった。
テレビには、子供のままごとシーンが映し出されている。
天井から水がしたたり落ちてきているが、
女は、横目で確認してからテレビを切った。
テレビではなくDVDを見ていたようで、ディスクを取り出した。

ギシギシ・・・ミシミシ・・ポトトトト・・
女の背後で音が聞こえる。

へやの隅で首吊りをした男が吊られたままだった。

持っていたディスクを机に置くと、慌てることなく部屋を出た。
大時計が正時をさしていたのか、弔いなのか、
鐘が鳴り出した。



走馬灯現象・・死の間際に見る記憶映像。
それが今観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社






DISK1 関 隆広(23)

関隆広(窪田正孝)は、恋人で婚約者の立花結子(梶原ひかり)と里帰り。
結子は隆広の親に会うのは初めてのことで、とても緊張していた。
隆広は、緊張している結子の緊張をほぐすように「大丈夫」を繰り返す。

「ただいま!」
「おかえり。遅かったのね。」
久しぶりに母:広子(横山めぐみ)と会った。
いつもと変わらない母が笑顔で出迎えてくれた。

「は・・初めまして、立花結子です。
隆広さんとは以前から親しくさせていただきまして・・」

緊張しながらまくし立てるように自己紹介をした。
こんなに緊張している結子は初めてだ。

「大丈夫だって。家の母さんは優しいから。」(ね)
隆広は母さんに同意を求めた。
隆広だけをずっと見ている母は、結子を全く見ていない。

「疲れたでしょ、早く上がって。」



母は腕によりをかけて料理を作っていた。
隆広はお茶を飲んでいて、結子は仏壇に手を合わせる。
隆広の父は、すでに亡くなっていた。

仏壇に遺影がないことを、不思議に思った結子は聞いてきた。
写真嫌いの父だったらしく、一枚も残っていないし、
隆広が生まれる前に死んだので、顔を知らなかった。

今では、母さんが女で一つで育ててくれたことを、感謝していた。

「今の俺があるのも、本当に母さんのお陰だよ。」

位牌の前の置かれている紙人形が目に付いた。
関家では、昔から誰かが亡くなると 人形を作って供養していた。

「これが父さん。こっちが爺ちゃんと婆ちゃん。」
「これは?」
人形は全部で4体あった。謎の1体は一体誰???
気になったものの、
昔からあったように思えて、それほど気にならなかった。


母さんと結子は一緒に台所に立って晩御飯の支度をしていた。
そんな2人の楽しそうな後ろ姿を見て、隆広は喜んだ。

夕食をみんなで食べる。
母さんの手料理は久しぶりでどれを食べても美味しい。
家に居られるのは明後日までで、隆広も結子も仕事が込んでいた。
結婚するのもお金がいるので、今の間はバリバリと2人で働きたかった。

「母さん。これからは、2人で親孝行するからさ。」

隆広のケータイが鳴った。 メールだ。幼なじみの宮本圭介(千代将太)から。
久しぶりに地元に帰ってきた隆広に飲みの誘い?
そう思って画面を開くと

「走馬灯株式会社って知ってるか?」

意味深な一行メールにけげんそうな顔をする。
誘われていなかったが、圭介の店に飲みに行くことにした。

店はクローズしていて、圭介は隅の方で丸くなってタバコをふかしていた。


「何だよ、走馬灯株式会社って。」
「知らないんだったら、無理に知る必要ねぇよ。」

圭介がメールしてきたくせに、知る必要がない!?
もったいつけて話さない圭介。少し経つと、ようやく口を開き始めた。

「そこの行くとさ、自分の人生が記録されたDVDが見れるんだ。
生まれた時から、今こうしいている瞬間までな。

そこで映像見てたらさ、最初は懐かしくて涙が出そうになったよ。
でも、だんだん辛くなってきてな ・・・」

「辛くなる?自分の人生なのに??」

「自分の人生、本当に知ってるって言い切れるのか?」

圭介は辛い気持ちをお酒で飲み干した。



圭介の言葉は隆広の心をチクチクさせた。
自分の知らない自分の人生???
そんなことを考えながら、ブラブラと家に向かって歩いていた。

切れかけの蛍光灯がチカチカとしている一軒の家に目が留まった。
その家の扉に掲げてあったのは“走馬灯株式会社”
圭介が言っていた走馬灯株式会社がこんなところにあった。
株式会社がさびれた商店街の一軒?
自分の過去が全部見られるような感じが一つもしなかった。
冗談か何かだろうと思ったが、酔っていた勢いもあり 扉を開けた。


ドアノブに手を掛けたと同時に、
自分の今まで生きてきた記憶がフラッシュバックする。

エレベータは最上階で止まり、扉が開いた。
さっきドアノブに手を掛けただけで、エレベータに乗った覚えはなかった。
目の前は、高層階のマンションの一室・・
とりあえずエレベータを下りて、辺りを見回す。

後ろに人の気配を感じた。そおっと見ると、黒髪の女性が立っていた。

「ようこそお越しくださいました。
わたくし走馬灯株式会社の神沼(香椎由宇)と申します。」
「走馬灯株式会社って?」
「人生を顧みていただく場所でございます。」

神沼は隆広を部屋の中に招き入れた。


隆広が手にしているのは 関隆広vol.00 というDVD。

「本当に自分の人生 見れるんですか?」
「そちらのディスクに、あなたの人生が収められております。
早送りやチャプター再生も可能です。
何かご不明の点がございましたら、内線電話でお尋ね下さい。」

「マルチ商法とかじゃないですよね?」
「お気に召さなければ、帰っていただいて結構です。
ただし、ご覧いただく映像はあなたの人生そのもの。
それを受け入れるかどうかは、あなた自身の問題です。
その点だけはご了承を・・」

神沼は隆広の手からディスクを取り、再生させる。


「それでは関隆広さま、
あなたの23年の人生を、心ゆくまで顧みてください。」

神沼は隆広に深々と頭を下げてから部屋を出た。


再生ボタンは押されたものの、画面は依然真っ黒で・・・
落ち着かない隆広は早送りボタンを押した。

ようやく現れたのは天井から吊り下げられたモビール。
産まれたころの赤ちゃんのおもちゃの中では定番中の定番。
それに女性の顔がサッと映っては消えた

「パパ、起きたよ。」
「ほら、ママですよ。」
「目元は俺に似てるな。将来はプロ野球選手だな?」
子供が出来た若夫婦が子供の顔を見ながら楽しそうに会話をしている。

隆広は少しずつこの状況を理解し始めていた。
もしかするとこれは、自分が生まれたときから見てきたモノを見られるようだ。
眠っているときは真っ黒で、起きると映像が映る。
自分の目で見たものを、見たままに見られる・・・

だとすると、この夫婦は誰だ?


真っ黒な映像からモビールが映った。赤ちゃんが目覚めたようだ。
電話がけたたましく鳴って、赤ちゃんはぐずっている。
女性は電話に出た。

「もしもし、はいそうです。主人です。事故!?
えっ・・大丈夫なんですか?今どこに?はい、すぐに行きます!」


訳の分からない映像が続き、隆広は内線電話をかけた。
映像は流れたままで、赤ちゃんは泣き叫び続けていた。

「さっき案内してもらった関ですけど、これやっぱ詐欺ですよね?
なんだったら警察とか呼び・・・」

TV画面から背を向けて話していたが、なんとなく振り向いた。
そこには、キョロキョロと様子をうかがう母の姿があった。
話しの途中で受話器を置いて、食い入るように画面を見つめる。


「かわいい、かわいい。」
赤ちゃんに笑顔で話しかける母さん。
笑顔が急に真面目な顔に変わり、辺りをもう一度見まわしだした。

母は、赤ちゃんを胸に抱き寄せ、外に出る。
辺りは暗く、赤ちゃんは泣き通し。
映る画面はアゴの下と胸元ばかりが続いた。
早送りをすると、胸元の背景が家の中に変わった。

この景色・・・見覚えがあった。っていうか、自分家?


「今日から、私がお母さんだからね。」


怖くなってポーズボタンを押した。
いろんな考えが頭の中を巡り、家に帰ることにした。

「もうお帰りなのですか?またのご来社お待ちしております。」
いつの間にか自分の側で控えていた神沼。
その横をすり抜けるように家路についた。


家の扉を開けると、母さんが出迎えてくれた。
その母の胸元のネックレス・・・
さっき見た母と同じものだった。



次の日朝ごはんを食べながらも、
母の胸元のネックレスが気になって仕方がなかった。
食事を終えて、縁側でタバコをふかしていると結子が隣に座ってきた。

「あの納屋、なんか嫌な思いでがあるんだよね・・・」
つぶやくように話した。でも、肝心な嫌な思い出のことは覚えていなかった。


結子は隆広のアルバムを見ていた。
どの隆広もかわいくて仕方がないが、隆広一人で写った写真ばかり・・

「お母さんが撮ったんだね。
ねえ、生まれたばっかりの写真はないの?病院とかで撮るやつ。」

結子に聞かれてはじめて不思議に思った。
そういえば、生後間もない自分の写真を見たことがなかった。

昨日見た映像を思い出して、続きがどうしても見たくなった。
自転車を走らせて、もう一度映像を見に行く。

看板を見つけたのが夜だったので、外観はさほど気にしていなかったが
昼間見ると、余計に不思議だった。
昭和の建物なのに、扉を開けると近代的なマンション・・

そんなことを考えるよりも、続きが気になってしょうがない。
エレベータが開き、神沼が挨拶をするが
軽く無視して部屋に入った。

もう一度“関隆広 00”のディスクを取り、再生させた。
00~04まで進んだ。

4歳の自分は、いつの間にか自分の部屋からいなくなった母さんを探していた。

「返してよ!ねえ、返してよ!!私の子供、返してよ!!!」

真剣に映像を見ていたわけではなく、タバコをくゆらせながら見ていた。
タバコの灰を灰皿に落とそうとして、目線を灰皿の方に向けたとき
女性の悲鳴にも似た、悲痛な声が聞こえた。

「何のことでしょう。家には隆広しかいませんけど・・・」
「あんたがさらったんでしょ!誘拐したのわかってんだから!!
「だから何のことでしょう?」
「ふざけないで!!いくら私の旦那に未練があるからって、どうかしてる!!」
「未練なんてありませんよ。私には隆広がいるんですから・・」


「ひょっとして・・あの人が死んだのって・・・」

女の激しい執念を垣間見た。4歳のことだった。
こんなこと、全然覚えていなかった。

“関隆広05”を手に取り、再生させた。
5歳の自分は“カエルの歌”を歌いながら家に帰ってきた。

玄関を開けて「ただいま!」と母に声をかける。
母は出迎えてくれなかった。

「あれ?おかあさんどこ??」
部屋中を探し回るが母さんはいない。

「キャー!!!」女性の悲鳴が聞こえた。
声の聞こえた納屋の方を縁側から見てみる。
植木が邪魔をして何も見えない。
納屋に近づくと、
いつも南京錠がかけられている納屋の扉が少しだけ開いていた。

「あ、おかあさん!!」

母さんの姿が見えたと思い、納屋の中に入った。
最初に目に飛び込んだのは、
血まみれの女性がこっちを向いたまま絶命している姿・・
その後に、血まみれのナタを持ってる母の姿だった。

「あぁぁぁ うわぁぁぁぁぁ・・・・」
隆広は声にならない悲鳴を上げて気絶してしまった。



母さんが人殺しをした!?
あまりにも衝撃的な映像・・・何が何かがわからなかった。
そばに置いてあるお茶を一息で飲み干した。

映像は止めていなかった。

子供の隆広は目を覚ました。
「大丈夫なの?隆広。
あなた納屋の前で倒れてて、お母さんどれだけ心配したか・・」
「ぼく、おばけみた!」
「そう。あの納屋にはお化けが出るの。
だからあの納屋に近づいちゃだめよ。」

母さんは紙人形を折っていた。
「人が死んだときは、その人の人形を作って仏壇に置くの。
そうすれば、死んだ人の未練や恨みを忘れて成仏できるから・・・」
「だれがしんだの?」
「隆広が知らない人・・・」


ずっと思っていた嫌な記憶・・・その正体を知ってしまった。
母さんが折っていた紙人形、誰だかわからない4体目と同じ・・
知らない人ではなく、もしかして実母??

重い足を引きずり家に帰った。
玄関を開けるのも勇気がいった。
そ~っと玄関を開けたのに、母は玄関口で自分を出迎えてくれた。

「母さん・・・」呼んだものの、何も聞けなかった。


夕飯の支度は出来ていて、後はご飯とみそ汁をよそうだけ。
イスに座ろうとして、結子の分がないことに気づいた。

「結子は?」
「おかわり、あるからね。」


もしや・・・母さんをじっと見つめるが、ほほ笑み返してくれるだけ・・
仏壇の紙人形が1体増えていた・・・
納屋の南京錠に血が・・・・



「あ!おかあさん!!」
少年は少女とのままごとをやめて、迎えに来たお母さんの所に駈け出した。
母に抱きつく。

「あの子はお友達?」
一緒におままごとをしていた少女を見ていた。

「隆広もいつか、あんな子と一緒になるのかなぁ・・・」
「おかあさんといっしょにいるよ。やくそく!」
「隆広、約束だからね。」

そう言いながら指切りした。



横山めぐみの笑顔がやけに怖く感じました。
初めてみた窪田正孝は、「ケータイ捜査官」
いつのまにか、タバコを吸える年になったんですねぇ・・
(しみじみ母目線)
そういえば、昼ドラ「Xmasの軌跡」で
ベッドシーンがあったのもびっくりしたのを思い出しました。

ホラーと言えばサスぺリア!


奇跡的にDVD化されてます。


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