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走馬灯株式会社 第7話 今泉安彦 あらすじ ネタバレ 平田満 [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 第7話 DISC.7 今泉 安彦(49)


走馬灯株式会社に辿り着いた者が入室を許される、マンションの一室。
床には割れたグラスが放置されていて、
神沼は客がつけっぱなしにした映像を見ていた。


「おい!みんないくぞ!!こっち見て!
明、お前が真ん中だ。お母さんいくよ、そろそろ・・
もう少し笑ってよ。明の成人式記念なんだし・・・」


家族が揃って写真を撮る機会がめっきり減ってしまっていたので
今日は少し嬉しい気分。
今泉家の家長・安彦(平田満)は、
家庭サービスと、息子の成長を祝えてテンションが高かった。

今日の主役長男の明(菊田大輔)は、
浮かれた父がペラペラと話し続けるのがうるさくて仕方がない。

次女の純子(國光真央)は、そんな父を嫌がり、
長女の奈々(岡野真也)は、こんなことをすること自体どうでもよかった。

妻の照美(山下容莉枝)は、こんなところだけ いい父親ぶる安彦を
あまりいい気分で見ていない。


家族全員の思いは違えども、一枚の写真に納まる。
安彦にとって最高の写真が出来た。


神沼は、今泉一家が写真を撮っているところまで見て、映像を消す・・・



走馬灯現象・・死の間際に見る記憶映像。
それが今観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社


夏のとある日、セミの鳴き声がうるさいほど響き渡る中
安彦はジャケットを小脇に抱えて、
太陽を嫌というほど浴びながら家路についていた。

家の玄関まで帰ってきたが、扉を開ける前に取りだしたのは「解雇通知書」
メデシン製薬で臨床管理部第一臨床課に勤務していたが
今日で会社を辞めた。
有給の消化などで籍は残っていても、出勤の必要がない・・・

どう話しを切り出すか・・すぐに答えは出なかった。
とりあえず、いつもと同じように振る舞うことだけを考え
意を決して 玄関扉を開けた。






Disc.7 今泉 安彦(49)


「ねえ、ただいまくらい言えないの?」

そーっと玄関を入り自室に行こうとしていた安彦に、照美が声をかけてきた。
夕食の支度中で顔がこちらを向いていなくてよかった・・
勘のいい照美が見ると、普通の顔をしていないのがすぐにバレる。


「ただいま。」
「ねぇ、来月からあんたの小遣い生活費に回すから。」

藪から棒に言われた小遣いカット・・
小遣いどころか生活費を、いつまでねん出できるかわからない。
新居を買ったツケか・・・



いつもと変わらない夕食。
テーブルに並んで座るが、安彦はいつものお誕生日席。
一緒のようで少し離れた所に座っている。

家族の目の前に並べられたのは、から揚げやサラダに炒め物
自分の目の前にはもやし炒めのみ・・・

良いようにとると、健康を考えての食事制限。
悪く言うと、はみご。


食事中でも片時もケータイを離さない奈々を見ながら、
会話一つもない食事に気づまりを感じた安彦は話し始めた。


「明、受験勉強はどうだ?薬学部行けそうか?」
「自分と同じ生き方、押し付けてんじゃねぇよ!」

「薬学部を出て製薬会社に勤めれば、一応お給料もらえるんだから」
照美の意見は辛らつだ・・

「奈々は、留学の準備進んでるのか?」
安彦は、まだ一生懸命に家族の会話をしようと話しかけた。

「お母さん、また洗濯物一緒に洗った?」

父から話しかけられたことは完全にスルーして
自分の洗濯物を父も物と一緒に洗われたことを怒っていた。

「あぁ~早く留学したい・・・」

家に気づまりを感じている奈々は、早く自由になりたかった。


「純子は?友達と仲良くしてるか?」
「してない。服がダサいから・・」

家族に安彦は必要とされていなかった。
照美は今日に限ってやたらに子供たちに話しかける安彦を見て、
様子がおかしいと感づいた。

「あんた、何か隠してんでしょ?隠すとろくなことになんないよ。」

ここは話し時だと思い、グラスに入ったビールを一息に流し込んだ。


「実は・・会社をクビになった・・・」


一瞬の沈黙の後
「お金は?お金どうすんの?家のローン 後21年残ってるのよ!」照美は怒っている。
「受験の金、どうすんだよ!」「あたしの留学は?」「かわいい服買ってよ!」

みんなつまるところ「お金」の心配・・・


「あんたのせいで、家族の将来めちゃくちゃよ!」

家族は誰も安彦を思ってくれないのか・・・
こんな事態になることはわかっていたが、
落ち込んで帰宅した今日は、そうっとしておいて欲しかった。



一人でヤケ酒を飲み、くだをまく。


「どうする?やる??」

そんな父の背中を見ながら明がみんなに声をかける。
その声は安彦にも届いていた。

「なんだよ・・お父さんも家族だろ!!」

自分がハブられたことが気に入らずに絡んでくる。
酔った時だけ饒舌に話し、朝になったら覚えていない父に
詳しい説明など不要だった。



朝から求人雑誌を片手に、職探しを開始した。
再就職先はすぐには見つからず、雑誌には赤いバツ印ばかりが増えている。

夕方になり、帰宅するにも足取りが重かった。
トボトボといつもの道を歩いていたら、ドアベルが聞こえた。
その音が自分を呼び止めたように感じた安彦は、ふと立ち止まる。

目に入ったのは“走馬灯株式会社”のネームプレート。
いつも通るが、このネームプレートは初めて見た気がする・・・
好奇心が先に立ち、アポなし飛び込みで面接してもらおうと思った。


ドアノブを握った瞬間、安彦の眼前に広がる今までの記憶・・
気がついたらエレベータに乗り込んでいて、屋上階で扉が開いた。


「ようこそお越しくださいました。走馬灯株式会社の神沼と申します。」
「あ・・あのぅ・・仕事を探してるんですけど・・」
「ここは人生を顧みていただく場所でございます。」
「宗教か何かですか?事務員でも何でもいいので雇ってほしいんですけど・・」
「お飲物もございますので・・・・」

神沼が部屋の中に案内した。


机に並べられていたのは“今泉安彦”のDVD。その中のVol.38を手渡された。

「こちらのディスクにあなたの人生が収められております。
早送りやチャプター再生も可能です。」

神沼は話しながらVol.38をセットした。
「いきなり研修用ビデオですか?」

神沼の話しを呑み込めてなかった。
いきなり自分の人生が見られるなんて誰が想像できただろう・・
仕事に雇ってもらうためのビデオ研修か何かだと勝手に判断した。


「それでは今泉安彦さま。あなたの49年の人生を心ゆくまで顧みてください。」


神沼は深々とお辞儀をすると、部屋を出て行った。


討ちし出されたのは公園で子供たちと遊ぶ自分目線の映像。

「お~い、気を付けろよ!」
滑り台で遊ぶ明と奈々の姿を見て、安彦が声をかける。

「お父さん、サッカーしよ!」
「ダメ!!お父さんは奈々とブランコなの!」
「やだよ、サッカーするんだよ!」
「違うよ、ブランコするの!!」

二人でお父さんの取り合いをする。

「順番にしなさい!!お父さんは一人なんだから。」

ベンチで座っていた照美がたまりかねて声をかけた。
臨月近くのお腹はかなりせり出していて、遊びに付き合えない。

「お父さん!じゃあ俺が先!!」
「奈々が先!!!」
順番の最初を兄妹が争う。

「じゃあ、ブランコが先だ。後でサッカー!」



そういえばこの頃の子供たちは、いつもなついてくれていた。
安彦もいいパパぶりを発揮して、子供たちの頼れるお父さんだった。


童謡「七つの子」を歌いながら家に帰る。3人で手を繋ぎながら・・


映像を見たことで、これ以上ないほど幸せな日々だったのだと、
今になってようやく噛みしめた。


ディスク再生はVol.49まで進んでいた。
映像を流しっぱなしにして、求人雑誌で目星を付けている。

映像はリストラを家族に告白したときまで進んでいた。

「どうする?やる??」
明が家族に何かを告げている。安彦は全然記憶にないこと。

「なんだよ、お父さんも家族だろ!」
酔っぱらって眠りかけていた。


「事故とかで死んでくれりゃぁ、保険金下りるんだよね?」と明が言うと
「死亡保険がはいれば、10年は楽に暮らせるわよ。」と照美が話す。
「じゃあさ、殺せばいいんじゃない?」と奈々が
「家族全員で殺せば、バレないかもね。」と照美が・・・・


酔っぱらって大の字になって寝ころんでいる安彦の顔を見ながら
殺しの相談!?
家族にここまで嫌われていたのだと知った安彦は、映像を止めた。


懐かしさと気を紛らさせるために、「七つの子」を口笛吹ながら家に帰る。
3人とお腹の中に一人。
映像で見た、自分が38歳の時が一番幸せだった・・・



仕事は見つからず、衝撃的な事実を知ったこともあり 家に入るのが怖かった。
玄関で一息ついてから家に入ると、妻は洗濯ものを取り込んでいた。

置かれているノートパソコンが中途半端に開いている。
何を見ているのかが知りたくなり、開いて見ると
映し出されたのは“完全犯罪マニュアル”の画面だった。
どうすれば事故を装って殺すことができるのかが書かれている。


「どうするか、決めた!一応みんなも確認して。」

明の声が近づき、慌てて画面を閉じた。
その場を離れようとしたときに明と鉢合わせ。

「帰ってんなら、帰ったって言えよ!」

“お帰り”と言われるどころか、明に注意をされる。


自室に入り、クラッシックをかけながら気を落ち着かせようとした。
でも、家族が自分を殺そうとしていることを知った安彦は恐ろしくてたまらない。

もしものために・・・
なんて軽い気持ちで会社から持ち出した、持ち出し禁止の毒薬。

(殺されるぐらいなら・・・・)

「ご飯!片付かないから早く食べて。」

照美が部屋に入っていたことに気づかなかった安彦は、ギクリとして気がそがれた。


今日の夕食はめざしが一匹。ご飯には大きな梅干しが一つ乗せられていた。
家族はとんかつを含めたバラエティに富んだ食事・・

「今、何か音しなかったか?」
奥の部屋で物音が聞こえ、明に聞いてみた。

「黙って食えよ!!」
明は父の言うことを聞くことなく、ご飯を食べ続けた。

「ろくな稼ぎもないクセに、無駄口ばっかり・・・」
照美の言葉は棘となって安彦の胸に刺さった。


食事をするのが嫌になり、外に出た。
ポケットにしまっていた毒薬入りの瓶を見つめ、ふたを開ける。
口に含めばイチコロなのはわかっているが、できなかった・・・
ふたを閉め直し、タバコをくゆらせる。

安彦の背後に全身黒づくめの人がこちらをうかがっていた。
変化を察知できるほど、安彦の気持ちに余裕はない。
家の門にもたれかかりタバコを吸っていたとき、黒づくめの男に襲われた。



朝から警察が状況確認に来た。頭に包帯を巻いた安彦が対応する。

「じゃあ、顔は見ていないんですね?
ご家族の話では、タンス貯金と通帳が盗られているようです。
物盗りで間違いないでしょう。」

「家族はだれも犯人を見ていないのですか?」
「ええ、4人共食卓にいたそうです。」

安彦は警官に聞いたことを総合して考えた。
「家族全員で殺せば、バレないかもね。」
照美の言っていたことが実行に移されていたとするならば・・・
今回の出来事は仕組まれたものだったように思えてきた。


「ちょっとゆっくりすれば?傷害保険が下りるんだし・・・」
リビングに戻るなり、照美が猫なで声で話してくる。

「本当は、死亡保険の方がたくさんもらえたんだけどね。」
純子は子供だから、思ったことがすぐに口から出てしまう。
照美がたしなめた。

この様子をみて、家族に狙われていることを確信した。
真相を確かめるために、走馬灯株式会社に行くことに決める。


どこに出かけるとも言わず、安彦は家を出た。
(本当にあいつらが殺ったって確認できたら、その時は・・・・)
かなり覚悟を決めているよう・・
明は父を尾行することにする。


真実を見ることに抵抗を感じていたが、ここでないと真実にはたどり着けない・・
今度は意思を持って“走馬灯株式会社”に入った。

机に並べられたのは照美Vol.45、明Vol.20、奈々Vol.17、純子Vol.11
家族分のディスクが並べられた。

「ご本人と関わりのあった方であれば、お見せすることができます。
それでは、ご家族の人生をご覧ください。」
神沼は頭を下げると部屋から出て行った。



まず、黒づくめの人を明と仮定して 明Vol.20を再生させることにした。

「どれにするか決めた。一応みんなも確認して。」
昨日の夕方からのようだ。

「帰ったなら、帰ったって言えよ!!」
明が怒り、安彦が部屋に逃げ込んだ。

その後、明は家族に開いていたPC画面を見せ・・・


「ようこそお越しくださいました。」
扉の向こうで神沼が誰かを招く声がした。部屋の扉が開く・・
入ってきたのは安彦の家族全員!?あわてて画面を消した。

「あんた、こんなところで何やってんの?」

問われても、「お前たちの人生を見ようとしました。」とか。
「お前たちが自分を殺そうとしたのを確認してました。」なんて言えない。


「会社の手続きで出かけたんだけど、暑くてちょっと休憩してたんだよ。
お前たちこそ、どうして・・・」
「え!?何だっていいでしょ。」

変な言い訳は家族には通用しない・・・
そんなとき、部屋を見回していた明が、
自分の名前が書かれたディスクケースを見つけた。

「なんか隠してんでしょ?隠すとろくなことになんないよ。」
嗅覚のいい照美はすぐに安彦の異変を察知する。

万事休すだと感じた安彦は、
ポケットに忍ばせていた毒薬をこっそりグラスに入れてセットした。


「これ、誰の?俺の名前書いてっけど。」
明はディスクを取出し、自分の名前が書かれていることの理由を聞いた。

「そちらのディスクに、ご家族の皆さんの人生が収められております。
心ゆくまで顧みてください。」
神沼はまだ部屋で控えていて、システムの説明を始めた。


「人生って映画だよ。全然面白くないし、見てもしょうがない・・・」

安彦の言葉を聞いて明はピンときた。
さっきまで入っていたディスクを再生させる。
見ていた続きが再生された。


明のPC画面をみんなで見るところ・・・
自分のPCだと気付いた明は再生を止める。

「てめえ!勝手に見てんじゃねぇよ!!」
「何で続きを見ないんだ?見られたら困るからだろ!!!
やっぱりお前らなんだな!見たら全部わかるんだよ!!」


明に掴みかかられたが、振りほどき ディスクを再生させた。

PC画面に映し出されたのは“自殺完全マニュアル”
趣味が悪い兄を奈々は気持ち悪がった。

「それよりプレゼント、これでいいよな?」

映し出されたのは買い物サイトの、3本セットのネクタイ。

「プレゼント・・・・?」安彦は面食らっていた。
「だから止めろって言ったのに・・・」

再生は続いていた。
「サプライズはどうするの?」と 純子が、
「サプライズはやっぱり食事中のケーキよね?」と照美が答える。
「クラッカーで出迎えるとか!」明がアイデアを出し
「愛妻弁当作っちゃえよ!!」奈々が第二の青春を進める。

奈々は自作の誕生日カードを作っていた。
父さんよりハンサムな父さんに仕上がっていた。
「いいじゃん!!絶対喜ぶよ!」


みんなが内緒で誕生日会を開いてくれるつもりだったことを知った・・・
家族は今も変わっていなかった・・・
こんなに思ってくれる家族を疑ってしまった・・・
膝から崩れ落ちるようにしゃがみこんでしまう。


照美は一時停止ボタンを押し、安彦の肩を取り優しく立たせた。
「この子たちね、あなたの誕生日にサプライズパーティしたいって。」

「親父、今日で50だろ。今は無職だけどいつも頑張ってくれてるし・・」
照れくさそうに明が言うと

「普段は冷たい態度しか取れないけど、たまには親孝行しようと思って・・」
はにかみながら奈々が言う。

自分たちがいろいろ考えていたのに、
急に出て行ってしまった父を心配して、明が尾行して行先を突き止めた。

「お仕事とか、いろいろ大変だと思うけど 頑張ってねお父さん♪」

最高の誕生日。うれしくて涙があふれ出てしまう・・

「ったく、こっちが恥ずかしいだろ!」
「ほら、早く帰ろう!」


安彦のケータイが鳴った。立ち止まり電話を取る。
警察から強盗犯が捕まったことを知らされる。

「おい、強盗の犯人捕まったって。」

照美は安心して、机に置かれていたグラスに入っていた水を飲もうとする。
そのグラスはさっき毒薬を入れた!!!

「やめろ!!!!」


神沼はグラスが割れる音と、柱時計が鳴る音を外で聞いた。





究極のツンデレですね。
家族全員交えてのいじめと取ると、重みが違います。
安彦がどうとらえているかがポイント。

今のお父さんを反映しているようでちょっと胸が痛かったです。
グラスが割れたのは、飲んでから落としたのではなく、
安彦が止めたから、だと思いたい!!



安彦一人、もやし炒めを食べてましたが
今話題の50度洗いをしていれば、劇的に美味しくなります。


から揚げはドーンと盛られたのを食べたいですね。





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