SSブログ

走馬灯株式会社 第8話 笠木修道 長澤比佐志 ネタバレ ストーリー [走馬灯株式会社]

走馬灯株式会社 Disc.8 第8話 笠木 修道 長澤 比佐志

「はい。どうした?あぁ いいや適当に任せてくれ。
今?息抜きの散歩中だ。大丈夫、すぐに戻るよ。」

吊り橋の上で、電話で話しをしている男。
散歩中でリラックスしているからか、口調は柔らかい。

男は電話を切った後、景色を楽しんでいた。
速足で人が近づく音が聞こえる。

ピピピピピピピピピ・・・・
近づいた人の腕時計のアラームが鳴りだした。
たたずむ男にばれないように背後に回るつもりでいたので、
突然のことで驚いた。セットした覚えのない時間・・

後には引けないと思い、
たたずむ男の側に近づき、強引に橋から突き落とした。

グシャ・・・

地面に叩きつけられた音が響き渡る。

ハァハァハァ・・・

荒い呼吸をしながら、橋の上から落ちた状態を確認した。
自分でやったことだが怖くなり、急いでこの場から離れた。
夢中で森の中を走り、ようやく乗ってきた車に戻り 一息ついた。


背後を確認するためか、今の自分の顔を見たいのか、
バックミラーを自分の顔の方に向ける・・・


冷静にこの一連の映像を見ていた神沼(香椎由宇)は電源を切り、
部屋を出ようとした。

ピピピピピピピ・・・

さっきの映像と同じアラーム音が部屋に響き渡る。
この部屋の使用主が忘れて行ったものらしい・・・



走馬灯現象・・死の間際に見る記憶映像。
それが今観られるとしたら・・・・・
走馬灯株式会社


セミの音がうるさいほどの夏の日、
車は山間のトンネルを抜けると、
閑静な住宅が立ち並ぶ地域に向かって走っていた。
迷うことなく目的地に着いた長澤比佐志(郭智博)は車から降り、
戸惑いながらインターホンを鳴らした。


DISC.8 笠木修道(42)・長澤比佐志(26)


「すみませんね、急にお呼び立てして・・・」

笠木の別荘に来た長澤は、笠木の妻・陽子(濱田万葉)の案内で家に入る。
今日は笠木に呼び出されて来たので、何事かと 内心ドキドキしていた。


「先生・・大丈夫ですか?」
「大丈夫なように見えるか?
まあ、授賞式の後だったのがせめてもの救いだ。
こんな顔で新聞に載らずに済んだからな。
何であんなところから落ちたのか、よく思い出せないんだよ。」

笠木はおでこに大きなバンドエイドを貼り、目はうつろ・・・
「ベッドでずっと“長澤、長澤”って・・
普通アシスタントよりも、妻の名を呼ぶものなのに・・」

陽子はお茶を運び、病床のときのことを長澤に話してくれた。
お茶を手渡された修道は、一口飲むとテーブルに戻そうとする。
手探りでテーブルの位置を確認する様子を見て、陽子が介添えをする。

「橋から落ちたとき、メガネの破片が刺さってしまって
主人の目はもう・・・・」

長澤は、笠木のすぐそばに
視覚障害者用の杖・白杖(はくじょう)がある理由がわかった。


「そんなに嬉しそうな顔するなよ。」
笠木は長澤の顔を見透かすような発言をするが、これは冗談。
だがぶっきら棒に言われると、あながち冗談でもないようだ。

「お前のバカ面はもう二度と見れない。」


笠木は厚さ5センチほどある綴じられた紙の束を長澤に差出し、
読むように指示する。
手からこぼれ落ちるように落とされた紙の束を拾い、長澤は読みだした。

「受賞者の笠木修道氏は語る。
作品で描いたテーマは、普遍的な人間そのもの。
だからこそ、あらゆる世代からの支持を受けたのだ・・・」

「本当に良いことを言うよなぁ・・そう思うだろ?」
「はい・・・・」

笠木は 第136回直木賞「夜に哭く」の作家。
受賞したばかりで受けた取材の記事が束になっていた。


笠木は長澤を伴って、事故現場の吊り橋に行ってみることにした。
全く覚えていない事故の時のことを思い出すかもしれない・・
陽子は目が見えなくなったばかりで、
白杖を使うのにも慣れていない修道のことが気がかりだった。

「大丈夫だ。役立たずだが、長澤に案内してもらう。
まさか、嫌だとでも言うのか?」


笠木は本当のことを知っているのか?それとも偶然か?
長澤には断ることすら出来なかった。



コツコツコツコツ・・・・白杖の音だけが響き渡る。
目印一つない道を歩く笠木。その側を長澤が歩いていた。
不慣れだと思えないほど白杖を使いこなし、まっすぐに歩くが、
緩やかなカーブのことまではわからず、草の方に向かってく。

長澤は笠木の開いている方の肘を掴んで道を修正しようとした。

「引っ張るな!! 手綱を持つのは私だ!!!
お前はただ、歩くだけでいい。バカなお前でもそれぐらいはできるだろう。」

長澤の腕を強引につかみ、先に歩かせる。


霧が出てきて、立ち入り禁止の看板が見えた。

「この先だ。」
笠木は先を行くために、張られたロープをまたいだ。
長澤は躊躇し、先に行くのを止めたが、前を歩く笠木は長澤の腕を探している。
諦めたようにロープをまたぎ、笠木が探している手の先に立った。


カラカラカラ・・・鳴木の音が聞こえてきた。
2人を呼んでいるようにも思える。
音の方を見ると、小屋があり 木でできた風鈴が吊り下げられていた。
風に舞って音がしたようだ。

小屋の扉には看板のようなものが見える。
そのことを笠木に告げると、
看板に書かれた名前を見に行くために連れて行けと言う。

「走馬灯株式会社・・・・」
長澤の言葉に反応した笠木は、手探りで扉を開けた。






笠木の眼前に、今までの記憶が流れる。
気がついたらエレベータに乗り込んでいて、屋上階で扉が開いた。
扉を開けていない長澤も一緒に乗り込んでいた。

「ようこそお越しくださいました。走馬灯株式会社の神沼と申します。
ここは、人生を顧みていただく場所でございます。どうぞ・・・」

神沼は部屋の中に案内をするが、
怪しい場所に立ち寄りたくない長澤は、帰ることを勧める。

「好奇心こそ、作家の命だろ!
そんなことだから見習いのままなんだよ。」

笠木は神沼の声の方に歩き出す。長澤は仕方がなく一緒に入った。


長澤は“長澤比佐志VOL.26”を手にしている。
机の上には笠木と長澤の人生分のディスクが並べられていた。

「そちらのディスクに、あなた方の人生が収められております。」
「人生??面白そうだ。」

ディスクを持って立ちすくんでいる長澤。
見えない目で見ようとする笠木は、ソファに座った。

「それでは笠木修道さま、長澤比佐志さま。
お二人の人生を、心ゆくまで顧みて下さい。」
神沼は一礼をして、部屋を出て行った。


笠木はディスクの再生を促す。

「どっちを・・・?」
「お前の人生なんて、見てどうする?」

長澤は“笠木修道vol.38”を再生させた。


映し出されたのは、暖炉の炎の前でお酒を飲んでいる笠木の姿・・
陽子に案内されて長澤が家に入ってきた。

「清書係をさせていただく、長澤です。
ずっと前から先生の大ファンです。よろしくお願いします。」

青年らしい軽やかさと明るさを持っていた。
笑顔で笠木に挨拶する。


「これ、僕が先生の所に来たときの映像ですよ。」
「声を聞けばわかる。キャーキャー吠えるな!」


映像は“笠木修道vol.40”まで進んでいた。

「書き直せ。これが私の文体か?調子に乗って自分の色を出すな!!」

映像の中の長澤は、書いた文章をけなされていた。
清書だけなのに、原稿を顔にぶつけるぐらい叱られている。

「どうした?早く書き直せ。」
「やっぱり、先生の作品は 先生が書かれた方が・・・・
読者を欺くことにもなりますし、僕もそろそろ・・・」

「そろそろ!?そろそろ何だ?
お前、自分の名前だけでやって行けるとでも思ってるのか?
お前の駄文が評価されるのも、私の実績があってこそだ。
無名の長澤比佐志の書いた本なんて、誰も読まない。
この世にそれ一冊しか本がなかったとしてもな。」


笠木はゴーストライターを長澤にさせていた。
文章を書かせてからけなす・・
言う側は楽しいだろうが、聞かされる側はたまったもんじゃない。
ストレス発散の道具でしかないのだろうか・・

「本当、いいこと言うよなぁ・・」
笠木は自分の言った言葉を自分で褒めた。

「私の名前で小説を書けるだけでも、有り難いと思えよ。」

くやしいとも、悲しいともつかない気持ちになるが、何も言い返せない。
一緒にいると気が変になりそうだったので、
トイレに行くと告げ、部屋を出た。


長澤はトイレに行くのではなく、笠木をこのまま置いて帰ろうと思っていた。
この行動は神沼に見透かされていて、エレベータに乗り込む前に声をかけられる。
「帰る」とは告げられず、言葉を濁した。

「人生は、生まれてから現在まで全て記録されておりますので・・
あいまいな記憶なども、はっきりご覧いただくことができます。」


「ギクッ」としたが、誰にも話せないこと・・
もし笠木が事件の場面を見たとしたら、誰が犯人かわかってしまう・・・
それだけは避けたい・・
ディスクがなければ解決すると思い、慌てて部屋に入る。

笠木は自分でディスクの交換をしていた。
動きはとてもなめらかで、健常者とかわらない・・
もしかして、見えていないふりして 見えているかも・・・


新しいディスクでも、長澤は怒られていた。
長澤が原稿を書くのが遅く、
なのにダメ出しを食らってばかりで締切ギリギリだった。

「後、どれぐらいかかる?」
「後、半日ぐらいで・・・」
「半日!?一時間で終えろ!」


長澤に限界が来ていた。映像はそれをあおる。
置いてあった果物ナイフを手に取り、背後にまわった。
ナイフの先を、笠木の顔の近くに持っていったとき、
笠木が後ろを振り向いた。

見えてはいない。ナイフの存在には気づかず、飲み物の催促。
思いきれない長澤は、言われた通りにお茶を用意していた。

「あと、42巻だ。最新のものが見たい。セットしろ!」


事故に遭った時まで来てしまった・・
長澤は、ただ画面だけを見つめる。

「この後に橋から落ちた。長澤、確認しろ!」

映像では、ピピピピピピピ・・・時計のアラームが鳴り響いた。
音の主は笠木の方に走ってきて・・・

「止めろ!!!」一時停止ボタンを押した。

「この場面には、何が映っている?」
「なにも写ってませんけど・・」

本当は ありえないほどの形相で、笠木を突き落とそうとする長澤の顔!!

「本当に何も映ってないのか?」
「はい。だからもう戻りませんか?家のことが心配だし・・」

どうにかして笠木をここから引きはがしたかった。

「もう一度だ。音量を上げてもう一度再生しろ!
微かに足音が聞こえた気がする・・
誰かに突き落とされたのかもしれない・・・」

なかなか巻き戻さない長澤にイラついて、笠木はリモコンを取り上げて動かした。


橋の上を歩く笠木。背後からアラーム音と足早に走る男・・・

「今の音、聞こえたよな?あのアラームの音、聞いたことがある。」

後ろにいた長澤の腕を掴み、
「この時計の音だ。私のお下がりだからよく覚えている。
何でお前があそこに居たんだ?

長澤、今度はお前の人生も見せてもらおうか。」


腕を掴んで離さない笠木。
長澤は怖くなり、笠木を置いて部屋を出た。
代わりに神沼が入室する。

「まさか・・飼い犬に手を噛まれるとは・・・」
「どんな方にもそれぞれの人生がございます。
ただ ひとつの目線からだけでは、それを知ることもできません・・
長澤比佐志さまの人生、ご覧になられますか?」


掴まれた拍子で時計が外れた。
長澤は時計を気にせず、走って逃げだした。とにかく少しでも遠くに・・
立ち入り禁止の看板があった辺りまで戻る。
下り坂なので、飛ぶように走って逃げる・・・


神沼は“長澤比佐志vol.26”をセットした。
笠木の邪魔にならないように後ろに控えて映像を一緒に見る。


「いい加減 少しは成長しろよ!」
長澤は笠木に、書き上げたばかりの原稿を破られた。
破られた原稿を持ち、部屋を出た所で奥さん・陽子に会う。
奥さんは主人・修道の行動が目に余り、たしなめようとするが

「いいんです。僕が悪いんですから・・・
先生みたいに書けるように、必死に頑張るんで・・・」

長澤はめげることなく机に向かった。
連日徹夜で原稿を書いていた。奥さんはコーヒーを運んでくれた。

「先生には今度こそ直木賞を獲ってもらいたいんです。」

キーボードを叩く音が聞こえる。
笠木は 長澤の別の面を初めて知った・・・



走って、走って、走って・・・ようやく車道まで出てきた。
トンネルのそば近くで息が続かなくなり、走るのを止めた。
荒い息を整えながら、気配に気づき顔を上げると・・・

キキキキキキキ・・・グシャ・・・・

長澤は車に轢かれた。


普通ではありえない音を聞いた。笠木は神沼に何が起こったのかを問う。

「車に はねられたようです。
映像は、長澤さまが現在リアルタイムでご覧になられている人生です。」


長澤は生きていた。
体を動かそうとしているが、起き上がれそうにない・・

「た・・・たすけて・・・・・」

起き上がれずに寝転がる。衝撃を受けた体がきしんでとても痛い。

コツコツコツコツ・・・・杖の音がこちらに近づく。
顔だけ動かして確認すると、白杖を持った男の人の下半身だけが見えた。
先生??まさか・・・

まさかではなく、本物の笠木だった。

「殺すなら殺せよ!いつもバカにしやがって!!
あんたの下で、どんな思いしてきたかわかるか!

ずっとあんたのファンだった。作品を手伝えて本当にうれしかった。
でも・・僕だって小説家になりたい!
あんたのイヌなんかで終わりたくない!!


笠木は長澤の傍らにしゃがみこみ、手を差し伸べた。

「つかまれ。お前の人生、見せてもらった。
お前の気持ちは、よぉくわかったよ。」


長澤はおずおずと手を差し出す。
笠木は固い握手を交わすように手を握り、支え上げた。

「歩けるか?」
「先生、このご恩は忘れません・・・ありがとうございます。」

笠木の肩を借りて一歩ずつ歩く。

「おい、勘違いするなよ。私は“わかった”と言っただけだ。
お前の人生は何も変わらないし、変えさせない!」


“ご恩は忘れません”と言ったことを後悔せずにいられない・・
これは、悪魔と契約したも同じ・・



「いやぁ・・さすが笠木先生ですね。
直木賞に続いて、芸術選奨の受賞。まことにおめでとうございます。」

「不慮の事故で視力こそ失いましたが、
作家としても心は少しも失われていなかった。ということですかね。
作家にとってもっとも大切なものは、大空をはばたくような自由な心です。
鎖に繋がれて生きることほど、哀れなことは無い。」

「実は今、新作を書いているところなんですよ。
完成したら、取材を頼みます。」


お茶を運んできた長澤に聞こえるように話す。
長澤は小さな資料だらけの部屋に戻り、原稿に向かった。
長澤が書いている原稿は、笠木修道名義・・・・


神沼はここまで見ると映像を止めた。



飼い殺しで利益を得る。
恐ろしい考えですが、本当に出来ればラクかしら?
忠実に従うことでしか自分の能力を発揮できないとしたら・・・
需要と供給のバランスが合ったといえるのかしら?

疲れ目にはビルベリーが効きます。


PCのIDやパスワード管理は大変ですよね。
これは、簡単に管理ができます。
(映像がないのが残念・・)




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。