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家族八景 芝生は緑  高木家編 10話 最終回 ネタバレ 感想 火田七瀬 [家族八景]

家族八景 芝生は緑 〜高木家編〜

私は、人の心が読める家政婦。

私は、人の心が読めてしまう。
心を読むとき、その人が、私にはどんな風に見えるか?
それは、その家によって様々だ。
家には、家それぞれの空気があるからなのか?

隣の市川家から、高木家に来た火田七瀬(木南晴夏)
主人の高木輝彦(大河内浩)は、ソファで新聞を読み、
妻の直子(野波麻帆)は、出かける支度をしていた。

(ったく、散財ばかりしやがって!だいたいそんなスーツ、いつ買ったんだ!!
俺は、聞いてないぞ!)

(あんたなんて、家事どころか医者の仕事すら ろくにやってないじゃない。
急患を嫌がる医者がどこにいるのよ。
四コマばっかり読んで。天気予報、競馬予想・・・
たまには、医学書でも読んだらどうなの。)

心の中で罵り合う二人。

この家では、心の声を聞くときは顔が4倍になるようだ。

(ちょっとはお隣を見習え!)
心の中なのに、2人共同じ事を言っていた。こんなところだけはシンクロしている。

隣の主人にメロメロな嫁と、隣の奥さんが気に入っている旦那。
2人は一緒に居る所を各自で妄想していた。


(芝生が青いにも程がある・・・
どんな性格の人間にも、必ずいい面と悪い面がある。
長らく家政婦をやってきたおかげで、人間学習になった。
だけど、こんな二組のような例は見たことがない。

隣同士に住む夫婦が、
お互いの長所と短所をここまではっきりと裏返しに見ているだなんて・・・

どんな誤解や錯覚にも、必ず真実が含まれているはず。
だとしたら、この4人が今のままでいることは、むしろ不道徳なことなんじゃないか・・?

実験してやろう。彼らの願望を私の手で実現させてやろう。
それが、能力者としての私の倫理だ。)


七瀬は家事をこなしながら、隣同士のペアをくっつけてみることに決めた。


輝彦からスタートさせる。
リビングで新聞を読みながら、隣の市川季子(星野真里)の動向を探る輝彦。
七瀬は輝彦の狙いをのらりくらりとかわしながら、確信へと近づける。

「向こうの奥様は本当にお気の毒。全然自分の時間がないんです。
お昼の買い物のついでに、商店街にある“ひばり”っていう喫茶店で
コーヒーを飲むのが唯一の楽しみだ。っておっしゃってました。」

病院以外で合う絶好の場所を、さりげなく聞けたと思った輝彦は嬉しくて仕方がない。
この喫茶店は、オムライスとジャージャー麺が美味しいお店。
明日の昼休みに、偶然を装って会いに行くことに決めた。


次は直子。
リビングでパックをしている直子の所にわざと顔を出した。
案の定、直子が七瀬を呼び止める。
お隣のこと、それも省吾のことを聞きたくて仕方がないようだ。

「調子はどう?お隣では忙しかったでしょう?」
直子は、とりあえずあたりさわりのない話を始めてきた。

「お隣のご主人。明日から駅前のスーパーに現場入りだそうです。」
七瀬はいきなり確信をついてみた。

欲しかった情報をすぐに聞くことができたので、直子はとても喜んだ。

「そういえば、奥様のマドレーヌをお隣のご主人がずいぶん喜んでおられました。
また、差し入れてはいかがでしょうか?」

同じものを差し入れるのも何だし・・何を差し入れにしたらいいかを七瀬に聞いて来た。
「私、おはぎ作れます。」

(現場の方に行けば、奥さんがいないのでゆっくり話ができるわ。
ななちゃんにおはぎ20人前、作らせようっと。)

自分が提案したことなので、拒否することもできなかった。


次の日の朝、おはぎを作り奥様を送り出した。
(おはぎ、大変だった…そろそろ2人が行動を起こしているときかな?
意識を追いかけてみよう。)

七瀬は、床のふき掃除の手を止めて、意識を集中させた。

輝彦は、偶然を装って喫茶店で会っていた。
季子は、突然のことでドキドキしている。

「奇遇ですなぁ。よく来られるのですか?」輝彦が、率先して話しかける。

「家にいるときはゆっくりしたいんですけれど、
主人が居ると、気が休まらなくて…」

「それはいかんですなぁ、実にいかんですなぁ…
医者としても、一人の男としても。」

話をしながら、輝彦は少しずつ顔を近づけて行く。

「どうです奥さん。近々お食事でも。」がっちりと誘ってみた。
「はい。」季子はびっくりしながらも、とても喜ぶ。

(うまく行っているようね。次は奥さんの方。)

意識を直子の方に向ける。
直子は、省吾の現場に顔を出していた。
「ななちゃんから聞いたの。はい、陣中見舞い♪朝から大変だったのよ。」

おはぎを見て、現場の人はみんな喜んだ。
「スーパーもお仕事上手く行ったんでしょ?よかったらお食事でもどうかなぁって。」
「青天の霹靂、ありがとうございます。」

(よし。こっちも順調。朝からおはぎを作ったかいがあった。)


翌日の朝。洗濯物を干している季子は浮かれ気分。
(どうしましょう。高木先生に食事に誘われてしまった。
しかも、東日本ホテルのレストラン。夢ではないかしら♪)

(うわぁ、盛り上がってんなぁ。)
あからさまに浮かれている季子の姿を見て、ふと思ってしまった。

(だけど、お食事だけで済むかしら?そんなことってあるかしら?
大人の男女が、ホテルで食事して、それだけで済むなんてことあるかしら??
新しい下着出さなきゃ。)

(あんた、どうしたいのよ。)
食事よりもその先までを想像している季子に思わず心で突っ込みを入れる。


(見たことですか。高木さんの奥さん、あなたいつも私のことバカにしてたでしょ。
無視して、いない事にして。私のこと甘く身すぎたようね。
あなたが省吾さんを追い回している間に、こっちだってやることやってやるんだから。)

輝彦に恋心を抱いているのは当てつけなのだろうか?



呼び鈴が鳴った。妄想にふける季子はもういいとして、七瀬は玄関の扉を開ける。
誰もいない。辺りをキョロキョロ見回していたら、
「奥さん!」開けた扉の奥に隠れていた省吾がひょっこりと顔を出した。

ふいをつかれた七瀬はその場で固まった。
バツの悪い思いをしてしまった省吾は、
「ななちゃん、元気?」
取り繕うように、とりあえず七瀬に声をかけ、おはぎをいれていたお重を七瀬に渡す。

「奥さん、居てはる?」直子は出かけていた。
「そうか。かまへん、かまへん。明日、ビッグチャンス待っとるしな。」
ポロリと言葉に出してしまった省吾の言葉に
「ビッグチャンス??」
知っていて、わざと質問を返してみた。

省吾は、慌てて言葉をにごす。
「これ、返しておいて。ほな、お邪魔虫。バイビー!」
相変わらずの物言いで帰って行った。
(明日は直子さんと東日本ホテルや!!もう大変!!!)

七瀬はもう一組の方も東日本ホテルだと知った。


どうすれば2組はかち合わずに済むか?七瀬は夜、お風呂に入りながら考えた。
そんな都合のいい案は浮かばない。

輝彦の方に意識を飛ばすと、季子との営みの事を考えている。
直子の方も、省吾との営みの事を考えていた。

七瀬は開き直った。
(そうなったら、そうなったで構わない。
むしろ、どんな局面になるか見ものだわ。)

事の成り行きを楽しむことにした。



いよいよ待ち合わせの時間に迫る。
ガラス製のカップを拭いていた七瀬は、意識を飛ばそうとしたときに電話が鳴った。

「もしもし、ななちゃん。うちの人そっちに戻ってなぁい?」
直子からの探りの電話だった。

また電話が鳴る。
「もしもしななちゃん。直子はそっちに戻ってるか?」
輝彦からの探り電話だった。

(うろたえてる、うろたえてる。どうやら鉢合わせしたみたいね。
さあ、これからどうなるかしら?何しろ出会った場所がホテルだもの。
大げんかになるか?それともお互いに開き直るか?)


りんごを磨いていたら、直子が家に帰ってきた。
かなり不機嫌で仏頂面をしている。

(あの女!!!!!許せない!
いつも休憩時間に情事にふけっていたんだわ。)

直子は鉢合わせした時の情景を思い浮かべていた。
季子は、省吾の顔を見ると 悲鳴をあげて泣き出す。

(うわ。勘違いしてる。)
そう、勘違い。二組ともこれが初めてのこと・・・
でも、そんなことはわからない。直子は嫉妬に駆られていた。

(2人のあの怯え方は、ただ事じゃあなかった。
だとしたら、じ、情事が終わった後だったのかしら?
それともあれからホテルの部屋に行って、
どうせ見つかったからって、度胸を据えて……)

タンスをつかんで、怒りをぶつける。

気分を落ち着けようとシャワーを浴びたが、怒りがふつふつと湧いてくる。

(にしても、あの男なんなのよ!
自分の奥さんにであった途端、不機嫌になって黙り込んで。
(一体なんなのよ。あんなの了見の狭い男だと思わなかった。)

(ずいぶん評価下がったなぁ…)
直子の思う省吾の評価の下がり方がハンパなかった。
もう憧れの人ではなくなったのだろう。

(夫が戻るまでに落ち着いた方がいいわね。
なんて言ってやろうかしら?
でも、こっちにも弱みがあるわね。向こうも私たちのことを疑っているだろうから。
むしろその方がいいかな?
そうよ!疑っているなら、疑わせておいて損はないわ。
だまっていればいいのよ。先に怒鳴った方が負けなのよ。
バカにされてたまるもんですか!
ニヤニヤ笑ってやる。
ただ夫の顔を見て、ニヤニヤ笑ってやるんだから。)

とっさに思いつかないと考えて、
直子は輝夫が帰って来たときにどうするべきかを考えた。
輝夫が帰ってくるのをドンと構えて待つことにした。


輝夫はビクビクしながら帰ってきた。
(あいつは怒ってるんだろうか?いきなり突っかかってきたらどうする?
あべこべに言い返してやろうか。
しかし、なんて気が重いんだ…なんでこんな事に……

それにしたって、あの女には幻滅した。急にメソメソ泣き出しやがって。
なぜ私は、あんな子供みたいな女にひと時だけでも関心を抱いてしまったんだ。)

(こっちも評価低!!)
輝夫の季子に対する評価の下がり方もハンパなかった。

(妻はやはり、あの男とずっと以前から関係があったのだろうか?
あの態度、きっとそうだ。あんな男のどこがいいんだ。
あの手の筋肉質な男は、セックスには淡白なんだ。
医学的な統計でも出ているんだ。
私の方が、ずっとねちっこくて良いに決まってるんだ!)

(だんまりを決め込んでやろう。私の沽券を保つには、それしかない。)

ダイニングで顔を合わせた2人。
直子は決めていた通り、輝夫に向かってニヤニヤして見せた。
輝夫も負けじとニヤニヤ返しをする

(やっぱり、そうなんだわ。)
(やっぱり、そうか。あの男と!)

(あの女、私より味が良いのかしら?)
(あんな男に、俺以上の性的能力があると思えん。)

心の中の言葉がいっぱい溜まりすぎて、
心の声を聞く時の顔がどんどん膨らんで行く。4倍以上に大きくなっていく。

(そうだ!痕跡をのこしているかもしれん!)
「お休み。」

七瀬に告げると、2人は寝室に向かった。

七瀬は眠りから覚めた。獣の声が聞こえて仕方がない。
これは獣の声ではなく、2人の嫉妬が絡まった情事の最中の声だった。

(そう、これは挑戦。そして同時に復讐でもある。
互いの肉体に衝撃を与え合う復讐。
嫉妬が、互いへの嫉妬が激しい高まりを与えて、そして……)

「愛してる。お前は俺の妻だ。」「あなたは私の主人よ。」

高みに上り詰めると果てた・・・


(負けた。今回だけは。
断ち切れそうな夫婦の絆を守るために
互いの過ちを利用してでも、性衝動を高めようとする貪欲さ。
自分には、この相手しかいないと言う事を、どうにかして自分に納得させようとする。
都合のいいすり替え。そして、中年男女の情欲に、私は、負けたんだ。)

夜暗いうちから起き出し、身支度を整える。
高木家の扉の前で一礼をし、出て行こうとした。
後ろは、市川家。

まだ朝になっていないというのに、玄関扉を季子は磨いていた。
左目の上辺りに大きなガーゼを貼っている。
だが、とても慈愛深い笑顔を浮かべていた。

季子にも一礼して、ここから離れた。


まだまだ私にはわからないような、複雑な心が人間の中にある。
私は、人の心が読める家政婦。
心を読む時に、その人がどんな風にみえるのか?
それは、その家によって様々だ。
家には、家それぞれの空気があるからなのか?
この能力は、私にとって何の意味をもつのかは、わからない。
ただ、人の心を覗くとき、そこにはいつもおどろきがある。
だから私は、これからもどこかの家で、その家族たちと生きて行くのだろう。





今まで読んでいただきありがとうございました。

家族八景。小説は読んだことがありませんでしたので、初めて内容を知りました。
七瀬はどうしてこころの中が読めて、家政婦をしているのか?
少しづつ小出しに生い立ちなどが出てきましたが、
わかるような、わからないような、ふわふわしたまま終わりになりました。
この曖昧な感じがいいのでしょうか。

まだ先に何かがありそうで、何かをやらかしそうで・・・

終盤に七瀬が暴走していきますが、こんなものでは終わらないような気がして
まだ隠しネタでも出てくるのでは?と思わされます。

何にもない、ごく普通の平凡な家庭で働くとどうなるのか??
そんなところも見たかったですね。


DVD発売が決定しました。


これがあれば家政婦いらず??




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家族八景 芝生は緑 市川家編 第9話 ネタバレ ストーリー 木南晴夏 火田七瀬 [家族八景]

家族八景 芝生は緑 〜市川家編〜

私は、人の心が読める家政婦。

火田七瀬(木南晴夏)の次の仕事先は市川家。
主人の省吾(西村和彦)は建築デザインの仕事をしている。

この家に来て、挨拶を終えたばかりの七瀬に、
今度駅前に新しくできる、高級スーパーのラフ図面を見せる。
この内装とデザインを一週間で仕上げることになっていた。
急ぎで仕事を片付けないといけない。
省吾は職場ではなく、家で缶詰になって仕上げるつもりで、
七瀬を一週間雇ったのだった。

「缶詰とガーファンクルや!」
コテコテの関西弁とダジャレを話す省吾。
「それ、サイモンとガーファンクルや!」と突っ込む人もなく、
七瀬は意味もわからず省吾の顔を見つめるだけ・・・


「普段は別にある事務所で仕事をしているんだけど、
忙しいときは家でやる方がはかどる見たいで…」

省吾の妻・季子(星野真里)がフォローして七瀬に状況説明するが、
省吾にとって、フォローはどうでも良くて
さっきのガーファンクルを引きずってエアギターを楽しんでいた。

リビング中に変な空気が漂っていたときに、電話が鳴った。仕事の要件だった。
季子に、一緒に省吾の身の回りの世話をするように言われる。

「省吾さん。お仕事に入っちゃうと、ちょっと大変になるから。」
季子に囁くように言われるが、意味が飲み込めてなかった。

「ななちゃん。そいつ、めっちゃトロいから、お手伝いしたって。」
電話を終えた省吾が七瀬に言うと、

「私トロいんです。大トロです。トロイの木馬です。
だから手伝ってもらうと助かるなぁって。」
季子は旦那に気兼ねをしている様子。



私は人の心が読めてしまう。
心を読むとき、その人がどう見えるか?それはその家によって様々だ。
家には家それぞれの空気があるからなのか…


(あかん。内装めっちゃ苦手や。ディテールむずかし!)
相撲のコントのときに着る、お相撲さんの着ぐるみを主人は着ていた。

ノロノロと白ネギをこそげるように切っていた季子は、
(やだやだ。また滞ってるよ。この人、内装苦手なのよねぇ。
ていうか、年々短気になってない?ななちゃん居てくれて良かったぁ。)

この家ではどうやらお相撲さんのぽわ〜んな人に見えるらしい。


「おい、飯や。飯早よしてくれ。ひょっとして、まだできてへんのか?」
仕度を始めたばかりで、ご飯は全然できていなかった。
ネギと包丁を手にしたまま省吾に近づき、季子はおどおどした口調で謝る。

「陽が暮れたら飯って相場は決まっとるねん。」
「わかれよ!俺の腹具合を。集中を切らしたくないねん。
創造的な仕事ってそういうもんや!」


包丁を持ったままの季子から包丁を取り上げたのに、自分が振り回していた。
(この人怖!っていうか扱いにく!!奥さん一人じゃもたないでしょ。)
七瀬はベタベタな関西弁を使う省吾を怖い人だと認識した。

「あかん。いよいよ腹立ってきた。ほんま、どんだけトロくさいねん。」
嫁は慌てて料理を作っているが、やってることは白ネギの根元をこそげること。
何をしたいのか???

(ちょっとは、隣の奥さん見習えっちゅうねん。
あんな奥さんやったら最高やろうなぁ。
品があって、賢くて、グラマラスで、センスがあって、華があって、エロスがあって、
一体、何拍子揃ってんねん。)

旦那は隣の奥さんとの妄想を膨らませた。省吾の妄想の世界・・・
「今のところ、6拍子よ。省吾さん。」
隣の奥さん・高木直子(野波麻帆)は、ソファの肘置きの所にもたれかかり、
ハイヒールを履いたまま、省吾に向かって足を差し出す。


妄想が膨らみすぎて、会いたくて堪らなくなってしまった。
(仕事中やのに、めっちゃ会いたなってもた!)

それに引き換え、自分の嫁は何もかもが足りない…
省吾は今すぐの食事を諦めて、仕事に戻った。

心の声を聞いた七瀬は、省吾が隣の奥さんに関心があるとわかった。


次の日、
呼び鈴が鳴り七瀬が出てみると、直子が訪ねてきていた。
七瀬と話す声で、直子だとわかった省吾は、慌てて玄関に出てきた。
直子は、陣中見舞いとしてマドレーヌの差し入れをくれた。
省吾はその場で、喜んでマドレーヌを食べる。

「あなた作る人。僕食べる人。」
そう言われて直子はケラケラと笑い出した。
(ケラケラケラ。解る、直子さん。今日も どストライクや!!!)

「家政婦さん。いいなぁ…私も頼もうかしら。」
「奥さんの所は要りませんよ。こんなに家事が出来るねんから…」
話しをしながらも、省吾はマドレーヌを食べ続けた。

「そんなこと言ったら、こちらの奥さん 家事出来ないみたいじゃない。」
出来る女性をアピールするために、直子は強調して言ってみた。

省吾はこの言葉に乗っかって、季子の話しを始める。
この間 図面にナメタケをこぼした話を直子に披露。
季子は一番やったらいけない場面に限って、何かをやらかしてしまう…

直子は省吾の言葉に乗っかって、話を膨らまして楽しげに話をする。
(奥さん。あいつやダメなんです。僕にはあなたが必要なんです。
マドレーヌなんて、どうでもええんです。僕の心はもう元には戻れーぬなんです。)

嫁にとって、こんなことは人に一番話しをされたくない所…

省吾が気づいたら、季子がそこに立っていた。
直子に挨拶だけして、七瀬を連れて洗濯物を干しに行く。


ベランダで、2人で洗濯を干していた。
玄関先で話す会話は聞こえていて、つい、聞き耳を立てる。

「隣の奥さん。家の主人と話し会うみたい。
私、難しい話し、良くわからなくて…」
嫁は七瀬に話しかけて来た。
(なにがモダニズムの限界よ。
そんなことより、スーパーの内装 工夫したらどうなのよ。クリーム色一辺倒で。
それに、マドレーヌなんて、型さえあれば誰だって作れんだから!)

季子は相当腹立たしく思っているのか、かなり毒ついている。
(まあ、あれだけないがしろにされたら気分悪いか。)
心の中だけだし、言いたくなるのも解る七瀬だった。

(なんであんなヒステリー野郎と結婚しちゃったんだろう…
私が求めているのは、もっと穏やかで、優しくて、いたわりがあって…
そう、高木先生のような……)

高木先生のことを考えてしまい、嫁は妄想の世界に入って行った。
(あなたのその、優しい笑顔、愛情深い眼差し。
愛おしゅうございます。お会いしとうございます。)

七瀬は、季子が病院の先生に恋していることを知った。

(あ!お会いできた!!)
嫁は隣のベランダに出て来た人をガン見していた。

お隣?その人は隣の旦那!?高木輝彦(大河内浩)
隣の主人が季子の思い人!!!
七瀬はかなり驚いた。

目が会って、会釈をする。
(どどど…どうしよう。目があって、変な挨拶しちゃった。
今の私の笑顔、絶対ぎこちなかった。
やり直したい。あぁ…先生!!
その穏やかな瞳で、何を見つめておられるのです?
医学の未来?未知なる病原菌?

わかっています。先生には使命がありますもの。
一人でも多くの患者さんを救うという使命が!

だけど、叶うならならここに、愛にさまよえる夢遊病患者がいることに
どうか、お気づき下さいませ。
好きよ!、50歳台!!)

妄想は相当で、七瀬は呆れてしまう。


洗濯を干し終わり、洗濯カゴを片付けようと部屋に入ると、
まだ玄関で話をしていた。

(奥さん、奥さん!!僕は奥さんとどこまでも飛んで行きたいんです!!)
(先生、先生!!私をどこまでもさらって下さい!!!)

省吾と季子の妄想は、頂点に達していた。


その夜のお風呂タイム。
七瀬は湯船の中で、2人の事を考えていた。
夫婦なのに、こんなに心を欺きあっている。
自らを縛り付けながら、一つ屋根の下で暮らしているなんて…
薄々思っていた事だけど、
私は多分、一生結婚しないかもしれない…)

次の日七瀬は、直子が持って来たマドレーヌを乗せていた皿を返しに高木家に行った。

「そうだ!ななちゃん。ちょっとお話があるんだど。」
直子に言われ、七瀬はリビングに通された。

リビングには、医療関係の本が散乱して、
その中には一夜漬けモダニズムや、猿でも出来る簡単エクレアの本も混ざっていた。


「スカウトですか?」

「ななちゃんがずいぶん働き者だって聞いたから、家でもお願いしたいなって。
もちろん、お隣のお仕事が終わってからで良いのよ。どうかしら?」

「私は構いませんが…」

七瀬は、来週から高木家で働く事になった。
(やったぁ!これで省吾さんの情報が入りやすくなるわ。)
直子はとても喜んだ。


この家では、心の声が見えるとき、大顔面になるようだ。
心の声は欲望の塊。それを大顔面で見せられると、かなり迫力を感じた。

直子は家政婦の件を、この場で輝彦に了解をさせる。
自分の旦那を想うがままにコントロールしているようだ。

輝彦は、特に反論する事なく了解した。
(なんでもかんでも勝手に決めやがって、この出しゃばり女!)
(まあしかし、これはお隣の奥さんと親しくなるチャンスかもしれんからな。
何しろ、今のままじゃぁ、医者と患者以上の関係は望めんからな。)

隣どうしで相思相愛。不思議な糸が絡み合っているかのようだ。
愛する、今最高に気になる人はお隣さん。
夫婦の会話をしているようで、相手への当てつけ合戦。

直子の妄想が始まった。
(省吾さん。あなたのような、野心的な男こそが私にふさわしい。
私は必ずあなたを捕まえて見せる!)

(季子さん。あなたの白く美しい肌。あなたは自分のポテンシャルに気づいていない。
よければ私が、気づかせてあげたい。)


ここ4人はドロドロだ。“隣の芝生は青い”よく言ったもんだ。


七瀬が高木家から戻ってくると、省吾がキッチンで探し物をしている。
(ない、ないぞ。どこや、どこ行ったんや!)

七瀬は省吾に声をかけてみた。
「ななちゃん、マドレーヌの皿知らんか?」
さっき返しに行った事を告げると、
(なんやと?帰した??なにしてくれてんねん、この小娘が!
あれは、俺と直子さんとを結ぶ、唯一の架け橋やろが!
何を勝手に返してくれとんねん!)

「ななちゃん、今度からそういうの 置いといてくれれるかな?
ほら、ご近所付き合いとかあるやん。
家政婦って、家のまつりごとって、書いて家政婦やん。
家の外のことは、せんでいい。」

(どうすんねん、どうすんねん。あの皿がとっておきのチャンスやのに!!
もうじきが現場入りやから、これで長らく会えへんやんか。
どうしてくれんねん。どう落とし前つけてくれんねん。)

心の声が聞こえるので、悶絶しながら心の中での怒りをを聞く羽目になった。
なんだか“とほほ”な気分だ。

怒りが収まっていないところに、出かけていた季子が帰って来た。
ちょっとタイミングが悪い。

「どこ、ほっつき歩いとったんや!」
怒りの矛先が季子の方に向いた。

「ちょっと、喫茶店に…」

「茶しばく暇あったら、ななちゃんをちゃんと監視せんかい!
スタンドプレイ してもたやんか!」

季子の両肩をにぎり、怒りながら奥の部屋に追い詰めて行く。
今はひたすら謝るしかない。


「さっきはすみませんでした。私が勝手に…」
季子に詫びを入れる七瀬。

「え?え?え?…良いの、良いの全然。いつものことだし。」
旦那に言われのないことで怒られたのに、なぜかニヤついていた。
(はぁ…高木先生。やはりあなたは理想の男性像です。
あんなに親身に私の事を診て下さるなんて…)

季子は喫茶店ではなく、病院に行っていた。
(先生が私を診断して下さった。しかも、お薬まで…
気遣って下さってくれる。先生は、私の精神の安定まで診て下さっているんだわ。
病状以外に交わした自由会話!自由会話よ!)

高木先生と、いつもと違う会話まで出来たことで、有頂天になっていた。
ニヤニヤが止まらない。ずっと、この夢の世界に浸っていたいとまで思った。
触診がないのがもどかしく、“触られたい”願望に駆られていた。

季子は、それ以上は不貞に当たると、妄想にブレーキをかける。
頭を冷やすかのように、冷蔵庫を開け、ケチャップを取り出す。

高ぶる気持ちが、なぜかケチャップを高々と掲げさせ、机に振り落とされた。
力一杯に机に叩きつけられたケチャップは、蓋が開き放物線を描いて飛んで行く。
それは、省吾の耳のあたりまで届いた。

省吾は、言葉にならない怒りを向ける。

「生まれてすみませ〜〜〜ん!!!!」
季子の謝罪は凄く昔にまでさかのぼる…


今日は七瀬の契約満了日。省吾の仕事はうまく行った。
七瀬に感謝の気持ちを語ってくれる省吾は、季子にも感謝を言葉で表した。
こんなことはないことなので、季子はとても嬉しがった。

最後の日は、省吾が作ってくれる、かに入りのうどんすきだった。
なんだかんだあっても、心優しい、妻思いの人だった。

七瀬が寝ていると、夜の営みの声が聞こえて目が覚めた。
声と一緒に、心の声も聞こえる。
(これは直子さんや、直子さんや!)省吾は、季子を直子だと思い、
(先生、私は今、先生に抱かれている。)季子は、省吾を輝彦だと思った。
夫婦で別の人を思い浮かべている。

(この夫婦、本当に最低だ。欺まんにも程がある。)

七瀬が市川家夫婦の、聞きたくもない夜の営みの心の声を聞かされているときに、
別の声も聞こえだした。


(奥さん!奥さん!)この声は、隣の家の輝彦の声!
(省吾さん!省吾さん!)この声は、隣の直子の声だった。
隣の家の夫婦も、同じことし、同じことを考えていた。


(この2組をこのままにして置いて良い訳がない。私の道徳がそれを許さない。
建前的貞操観念なら、いっそ、なくなってしまえばいい。)

七瀬は隣の家のオファーを受けた。

契約満了の次の日に、高木家の呼び鈴を鳴らした。
高木家の二人は、七瀬を暖かく迎え入れてくれた。


火をつけてやろう。そして、じっくりと観察してやろう。

七瀬は、説明のつかない正義感に満ち溢れていた。



家族八景がブルーレイになります。



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家族八景 第8話 亡母渇仰 あらすじ ネタバレ 黄川田将也 [家族八景]

家族八景 第8話 亡母渇仰

私は人の心が読める家政婦。
火田七瀬(木南晴夏)が次に紹介されたのは「清水」家。
今、清水家の母・恒子(宍戸美和公)のお葬式の真っ最中。

親戚一同が集まり、恒子の息子・信太郎(黄川田将也)は
悲しみのあまり、子供のように大声で泣いていた。
信太郎の鳴き声と、読経が部屋で響く。


私は人の心が読めてしまう。
心を読むとき、その人が私にはどう見えるか?
それはその家によって様々だ。

この家ではどうやらヒゲが生えて見えるらしい。
(この涙は一体、いつまで続くのかしら?
この人の体は、全部涙でできているんじゃないかしら?)

清水 幸江(東風万智子)はいつまでも泣き続ける旦那に呆れながら考えていた。

「凄い声だなぁ…」「まだ子供何だよ」
彼の泣く姿と声を聞いて集まった者はこう思っていた。

“恒子さんは、嫁の幸江にはきつく当たっていて、息子にはとても甘い人だった。”

人は死んでからの方が、本当の評価を受けるのかもしれない…
みんなが思う恒子の評価はこんなものだった。

(幸江さん、やっと解放されたわね。)
介護や何やらで、幸江は恒子に付きっきりだった。
そんな姿を見ていた一人の女性は、幸江のことを考えていた。

(解放されたなんてとんでもない。幸江さんが辛いのは、これから…)
信太郎は母親がいたからちゃんと出来ていたと七瀬は思っていた。

(この人、一生お母さんの呪縛から抜け出せないんじゃないかしら…)
幸江は泣き続ける旦那を見ながらちょっと考えてしまった。

(なぜだ、なぜ死んだ。僕を残して…ママ、ママは悪い人だ。僕を一人残して。
僕に対する裏切りだ。)
悲しみにくれる信太郎を見ながら

(罵倒された。憎まれた。看病すればするほど憎まれた。
近所の家に聞こえるぐらいの大声で。)
幸江は看病していたころを思い出していた。

恒子は、幸江の看病に真心がこもっていない。
真心がないから、寿命が来る前に殺されてしまうと
口癖のように近所に聞こえるほどの声で幸江を罵倒していた。

幸江がいくら否定をしてもそれは逆効果で、火に油を注ぐようなものだった。

(あれだけ憎まれて、あれだけ怒鳴られて、まだ真心を持てなんて、無理よ。無理だわ。)


(ゔゔゔゔ……)

七瀬はどこからか聞こえる奇妙な心の声を聞いた。
誰の心の声なのかは特定が出来ない。

一層大きな声で泣く信太郎に親戚の人が悲しみを和らげようと肩に手を当てるが、
(やめろ!俺の悲しみは、こんなもんじゃないんだ!!
放っといてくれ!ママ!!マァマ!!!何で、何で死んじゃうんだ!)

生前のこと・・・
信太郎は会社の愚痴を母親の枕元で話していた。母はそれを優しくたしなめる。
こんな何気ない時間が二人にとっての最高のときだった。


そんな二人の様子を七瀬は通りがかって見てしまった。
七瀬はお風呂の中で、このことを思い出した。
(恒子さん、後どれぐらい持つかなぁ…
出来れば死の瞬間には立ち会いたくないなぁ…死にゆく人間の声は、もう聞きたくない。)




(何でこの人と結婚しちゃったんだろ…冷静に考えれば気づいたはず。
いえ、騙されたのよ)

いつも幸江は自問自答していた。今日もやっぱり自問自答をする。
そう、騙されたと思っていたかった。こう思うことが唯一の慰めだった。

(その問いは、何度も何度も繰り返して来たじゃない。
恨むなら、見抜けなかった自分を恨むんだわ。)

七瀬は幸江が思っていることの正論を何の気なしに解いていた。
自分が怖くなってこの場を離れた。


(怖い。自分が怖い。神にでもなったつもりなの?
やっぱり私は、人里離れた所でひっそり暮らすべきなんだ。)

七瀬がこう考えるのには理由があった。
それは3年前、七瀬が17歳の時…

スーパーの試食販売のパートをしていた。
まだ子供の考えだったので、一緒に働くオバさん2人に能力を使い、掌握していた。
能力の事はバレてはいないが、オバさん達は腫れ物を触るかのように接してくる。

ウインナーの試食販売をしていたとき
試食をしたが、買わずに帰ろうとする客の心を読んで、
商品を売るには足りない部分を補った。

能力をこう使えば百発百中で商品が売れる。
オバさん達は能力と思っていないが、凄いと思っていた。
(この子を利用すれば、この子は金になる。)
(まるで、人の心が分かるみたいね。今も私の心を覗いているんじゃないかしら?
恐ろしい。私、この子が恐ろしい。)

「そんなに怖いですか?」

七瀬は恐ろしがっているオバさんに、心の声の返事を口でしてしまった。
やっぱり覗かれていたと思い、オバさんは震え上がる。


七瀬は、半ば自暴自棄になっていたのかもしれない。
切り立った崖の淵に立って、底を覗いているみたいだった。
そこに、向かって飛び込んでしまいたいような…
吸い込まれて行きそうな…そんな気持ちだった。

自分の能力を、晒してしまいたい欲望に駆られていた。
それは、幼くて強い欲望。能力を使えば、人を支配できる。


(だからこそ、私は傍観者でいないといけない。人と積極的に関わってはいけない。)


(いいシーンだ。)
七瀬がキッチンで考えてを巡らせていたら、背後から心の声が聞こえた。
慌てて振り返ると、引き戸を少し開けて親戚の茂蔵(佐藤二朗)がこっちを覗いていた。

「お茶をもらえるかな?」
(色も白い、肌も綺麗だ。抱き心地が良さそうだ。
いいスタイルだ。ヒップから足にかけてのラインがいい。)
七瀬がお茶を淹れる様子を舐めまわすように見ていた。

「姉が亡くなって、君はどうするね?信太郎の所に残るの?」
「いえ…」
「だったらね、うちに来なさい。」(うちに来い)
「あの、辞めるんです。」
「そっか…だったらね、うちに来なさい。」
(いや、だから…)「辞めるんです。家政婦を。」
話を理解してくれているのか、理解をするつもりはないのか、
執拗に七瀬を自分の家で雇いたいと言い続ける。言えば来ると思っているのだろうか。
金で愛人にしたい目論みが見え隠れする。

幸江が茂蔵叔父さんを呼びに来た。七瀬にとっての助け船。
噛み合わない話しと、執拗な誘いから逃れられた。

幸江は茂蔵に用時を話し、キッチンから追い出す。その後慌てて扉を閉めた。
(あの人、ななちゃんにまでちょっかいを出してたのかしら?)

「ありがとうございました。」
幸江にお茶を出しながら七瀬は感謝した。

「やっぱりなんか変なこと言われた?」
「家に手伝いに来ないかって。」
「絶対に行っちゃダメよ。あの人はダメなの。凄くしつこいから。」
(こういう子が、ころっと騙されたら大変。)

(この人、心配してくれてるんだ…)
七瀬は幸江の優しさをとてもうれしく思っていた。


七瀬は火葬場まで一緒に来るように幸江に言われる。
七瀬はもちろん断らない。

(助かるわ。あの人…私じゃ手に負えない…)
「ななちゃんが居てくれて本当に良かった。
家でまともなの、家でその…話しが通じるのはななちゃんだけだから。」

(そう、まともなのはあなただけだった。
私はまともなんかじゃない。だって、私はあなたのことを、心の中でバカにしてた。)

「お義母さん、ななちゃんにきつく当たらなかった?」
「いえ。ご病気でイライラしてらっしゃったので
嫌味のようのことはたまにおっしゃってましたけど…
それ以外は特に何も。」
(お義母さんも、根は優しい人だったんだ。
ただ、あの人を愛しすぎたあまり、私に辛く当たった。
あれは嫉妬だったんだ。)

「あのう…大丈夫ですか?」
義母はいい人だったと自分に言い聞かせる幸江に同情した。
(私にも分からないなぁ…)
「さぁ…でも、時間がかかるかもしれないけど、しっかりしてくれるんじゃないかしら?
あの人、根は強いとこあるし、大丈夫だと思う。」

棺が出棺される。運ばれて行く棺にすがりつき、涙をさらに流す信太郎。
(さちえ…)

またどこからか聞こえて来た。七瀬は声の主を探す。
自分の周りにはいない。外に目を向けると、木の影からニヤリと笑う男の人がいた。


喪主の出棺の挨拶として信太郎にマイクが渡される。
「このたびは、ご愁傷様でした。」
この言葉を言うのが精一杯で、また泣き崩れてしまった。

(ご愁傷様なのは、あなた。)
七瀬が心でこう思うが、周りのみんなも同じように思っていた。
嫁はここ言葉のせいで辱めを受けているように感じていた。

火葬場での最後のお別れ。棺を抱いて泣き続ける信太郎を引き剥がし
棺は中に入れられ、扉は固く閉じた。
点火前の経が詠まれていた。

(ゔゔゔゔ………)またうめき声のようなものを七瀬は聞いた。
(どこ?ここはどこ?)

(まさか、そんなことがあるはずない。)七瀬の嫌な予感は的中!

(幸江、あの女が医者と共謀して、私を生きたままこんな所へ)
(生きてる!?)

もしかしたら…頭によぎる思いが嘘であるようにと思いながら
幸江の顔を見てみるが、気づくようでもない。

(あぁ、これで終わりじゃないんだわ。この後、また夜までみんなの世話を…)
幸江は別のことを考えていた。

(違う。この人じゃない。幸江さんは何も知らない。)

信太郎を見てみる。(ママ、ママ…)

これは誰かに騙された?と、一人づつ顔を見回すと、
さっき木の影から見ていた人もここに来ていた。
(やっぱり病気治らなかったなぁ…
恒子さん、子供の頃可愛がってもらったなぁ…
感謝の気持ちを込めて…笑顔で見送ってあげよう。)
怪しいと思っていた人は、恒子の幼馴染だったようだ。


(違う、誰かに騙されたんじゃない!
恒子さん、棺桶の中で息をふきかえしたんだ!)

棺桶の中でもがく恒子の声が頭の中で響く。
いくら恒子が大声を出しても、分厚い扉の向こうではこちらまでは聞こえない。

(私しか知らないんだ。お経が終わったら焼かれる!)
常子が一層激しく叫び声をあげる。

(うるさい、黙って。今考えてる!)

どう言えばもう一度棺桶を開けることができるのか?
いくら考えてもいい案は浮かばない。
生きていると言えば、自分の能力がバレてしまう。
ひた隠しにしてきた能力。それはなんのため?
だれも蘇生したなんて思わない。

(私に能力がなければ、こんなこえは聞こえなかった。
これは事故。私には関係ない。関係ない。)
恒子の金切り声が頭に響き続ける。

(自分の身を守るために、一人の人間を見殺しにするの?)

(信太郎。ママは生きてるのよ!助けて!!怖い、怖い…怖い!怖い!こわい!…)

断末魔の叫び声。意識が強すぎてしゃがみこんでしまう。
(お願い、赦して…恒子さん 赦して…)

七瀬は立ち上がり、この場から走って逃げ出す。
これ以上恒子の声を聞きたくないし、聞いていられなかった。

(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…
早く離れなきゃ。こんな力いらない!いらない!!
赦して、赦してください。)

業火に焼かれる恒子の声が、走って逃げても聞こえた。

本当に見殺しにしてしまった…

七瀬は壊れたように叫び声をあげる。





家族八景。てっきり8話で最終回だと思ってました。飛んだ勘違い。
この作品は全10話でした。
七瀬が壊れるほどの衝撃を受けたこの回を受けて
あと2話で七瀬は能力と本当の折り合いをつけられるのか?
暴走していくのか?楽しみなところです。

黄川田将也さん。自分的には久しぶり感があります。
この強烈マザコン役は凄いハマってました。
見ながら「TANNKA 短歌」を思い出しました。
この役も危うげな無邪気さが全面に出ていましたよね。




別の七瀬も見てみますか?

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家族八景 第7話 知と欲 あらすじ ネタバレ 鈴木一真 [家族八景]

家族八景 第7話 知と欲

火田七瀬(木南晴夏)が今回の紹介されて来たのは「山崎」家。

玄関で遠藤恵理(阿部真里)を見送るのは主人の山崎潤三郎(本田博太郎)
「先生、よろしくお願いします。シナリオお待ちしていますね。」
「うん、まあ期待しないで。つまらんものを書きたくないのよ。この年になると。」
遠藤の後ろ姿、特に網タイツを穿いた足を直視した。

アコースティックギターを直接肩から下げて家に帰って来た息子の洋司(鈴木一真)
遠藤と挨拶をし、少し世間話。
帰る後ろ姿、特に網タイツを穿いた足を見て「Oh、モウレツ」


七瀬は遠藤が帰ったとも知らずに、部屋にお茶を運んで来た。

廊下で潤三郎から、遠藤が帰ったことを聞かされるが、
淹れてきた紅茶は飲んでくれるようだ。
七瀬は紅茶に砂糖を入れ、スプーンでかき混ぜながら潤三郎を見ていた。


私は人の心が読めてしまう。心を読むとき、その人が私にはどう見えるのか?
それはその家によって様々だ。

この家では、どうやら体操着姿に見えるようだ。

(恋文かぁ…なんでも最初が肝心だからなぁ…)
主人はラブレターのことで考え事をしている。

(ん??俺の知的な苦悩に魅了されたのか?)
潤三郎は主人をジッと見ながら、ずっと紅茶を混ぜていた。

(いけない…)
と思ったときには潤三郎に声をかけられてしまった。

「もう、溶けただろう?」
「すみません。ぼーっとしていました。」
七瀬は潤三郎に紅茶を差し出す。
「おいおい、若いんだから。」

潤三郎は七瀬にキメポーズをして見せた。今でいうところのドヤ顔って感じ。
(どうだ、俺はこの角度が一番格好イイのだ!)
いくら旦那様にキメポーズをされても、
ラクダ色の肌着の上に、半袖体操着を着て、
胸には大きく“じゅんさぶろう”と名札が縫いこまれていて、
背中には、天使の羽のようなものを着け、赤白帽をかぶっていてはサマにならない。

七瀬は対応に苦慮し、目線を下に下ろした。
「君も、山崎潤三郎の名前ぐらいは知っているだろう?」
「は、はい…すみません。」
「えっ?知らないの?じゃぁ、“犬をけしかける少女” は?映画にもなったんだけど。」

「それは、何か聞いたことあるような…気がします。」
「謝られると、悲しくなるから…」

「それも、若さなのかなぁ…」
カップを手に持ち、窓辺で独り言を言いながらたそがれてしまった。
旦那様は有名な脚本家らしい。
若い頃ヒット作を連発、業界では巨匠と呼ばれている。

(若さかぁ…若さとバカさ。俺はもう、だめなのか?
もう書けないのか?何もアイデアが浮かばん。)

居間で、洋司はギターを弾き、潤三郎は新聞を読んでいた。
「あの人よく来るね。ほら、TV局の。女性で、若い遠藤さん。」

「夕飯を一緒に取る事になってね。」
「へぇ…」(二人でか?) 洋司は勘ぐったように返事をした。

「出かけるのはおっくうだ。家で飯でも食おうってなってさ。
お前も一緒にどう?」

「親父にしては珍しいね。一人のプロデューサーに入れ込むなんてさ。」
(スケベジジイめ。俺の親父だな、全く。)

「彼女はね、最近恋人と別れたばかりらしいよ。」
「へぇ、そんな事でまで話すんだ。」
(どうだ!俺もまだまだモテる。)

(親父のやつ、あの人のことを狙ってんのか?まさかな、俺の方がモテるにきまってる。)

二人の間に流れている微妙な空気は・・嫉妬?

次の日、遠藤が またやって来た。
潤三郎は遠藤を楽しませようと、オーバーリアクションで話をしていた。
遠藤は潤三郎の話を楽しそうに聞いていた。
七瀬がお茶を運び、差し出すタイミングをはかっていたとき

(どうだ。少年っぽいだろう。少年の心を忘れてない感じだろう。)
(大丈夫かしらこの人。シナリオ書けるのかしら?)

遠藤は話が面白いのかどうかも分からずに、口だけで笑っていた。
潤三郎は今の話題をどこまで引っ張るかを考えていて、
遠藤はどこまでこの話に付き合うのかを考えていた。

潤三郎は話題を引き延ばすことにし、話を膨らませる。
(イイなぁ。若い子と話すのはいいなぁ…この子と結婚して、余生を過ごすのも悪くないか。)
(もう、ダメなのかしら?この人。)

(もう、シナリオの事は忘れるか?あれこれ悩まずに。そういうのもいいなぁ…)
(俺が!のんびり暮らす?! ダメだ、渇きが足りない。
こんな事じゃダメだ。もっと飢えだよ。渇きだよ。)
(書かない俺なんてクソだ。死んだほうがマシだ。
俺は満ち足りてはダメなんだ。死ぬ恐怖を、この焦燥を、シナリオに利用できないのか?)

虚ろな表情で考えている潤三郎を見て、七瀬は心配になった。

玄関まで遠藤を見送る七瀬。
(かなり若いわね、この子。名前何て言ったっけ?七瀬…日田七瀬。)
「あのう、お幾つ?」
「七瀬です。」(しまった。)「20です。」

七瀬は心の中でされた問いかけに答えてしまった。
何事もなかったように振る舞うと、そんなに不思議だと思われなかった。

(洋司さん。こういう子がタイプだったりするのかしら?)


廊下に置かれたリクライニングチェアを揺らしながら手紙を読み、悶絶している洋司。
七瀬に見つかり慌ててポケットに手紙を隠した。

「ななちゃん、居たの?」「失礼しました。」
(手紙?えりさんから?凄く興奮してる。まさか、ラブレター??)
「今日、…」
「いらっしゃいましたよ。」「えっ?」
(いけない…)
質問が口から発せられた物ではないのに、聞く前に返事をしてしまった。


「遠藤さんですね?」「何でわかった?」
(手紙の事、知ってるのか?)

「最近、旦那様と、遠藤さんにしかお会いしていないもので。」
最もらしい言い訳を言ってごまかしたが、
友達、居ないの?と心配されてしまった。

「そんなには…」
(不憫な子だな…キレイな顔しているのに。)

洋司は自分の部屋に帰って行った。
(20だったらヤッても全然問題ないかな?)
七瀬も視野に入れているようだ。女性でありさえすれば、誰でもいいのだろうか?


遠藤は家に食事に来た。みんなで一緒にカニすきを食べる。
潤三郎は、前に遠藤にウケた犬のネタを、また繰り返し話し始めた。
遠藤は初めて聞くかのように笑い、感嘆の声をあげる。
前回聞いたときは全く記憶に残らなかったので、初めて聞いたのと同じことだった。


「この話したよね?この話、しただろ?」
潤三郎は、知らずに同じ話をしたわけでなく、ワザと同じ話をしていた。

「いやぁ、初めてみたいに聞くなぁとおもって。何度も新鮮に聞けるのって・・」

遠藤はバツが悪いので、潤三郎にビールのお酌をして話を変えようとした。
洋司のほうは、この変な空気を変えようと、七瀬に飲み物のお代わりを頼む。

「大藪満寿夫(徳井優)くん、全然こないね?」
「次は大藪も一緒にお伺いしていいですか?」
「草稿が上がったら、大藪くんも連れてきなさい。」
上司の大藪も、山崎の家に来ていいお許しが出た。


「時間なんかいくらでもあるんだから、書けばいいのに。」
「時間があれば書けるってもんじゃないんだよ。」
息子の嫌味を言われて、ムキになって言い返す潤三郎。


遠藤は、前に潤三郎が話していた “犬をけしかける少女 ”の続編を、
局長が是非ともやりたいと言っていたことを、潤三郎に話す。

潤三郎は、局長が続編の話に食いついてくれたのが嬉しかったが
「昔の自分に食わせてもらってるようじゃ、どうしょうもねえな。」と洋司が一蹴。
「それをお前が言うな!」「確かに。」

潤三郎は洋司に腹を立てているようで、でも、そんなに怒ってはなかった。
遠藤には、嫌ごとも言い合える友達のような関係に見えていた。

(何だろ?この気持ちの悪い感覚は…)
七瀬はこの2人の上辺をなぞるような会話が気持ち悪かった。


潤三郎は、七瀬に自分の隣に座るように言い、ビールをお酌してくれた。
(何だろう、この親子の感じ…)
七瀬はこの違和感を言い表せる言葉が、まだ見つからなかった。


遠藤は洋司に、脚本家の息子だと、学校何かでいろいろ聞かれるのかを聞いていた。
「私の名前を出して、ずいぶんナンパしたらしいじゃないか?
聞いたよ。お前が連れてきた彼女から。聞いたのは学生の頃だったかな?」

それなら20年も前の話。七瀬はまだ産まれていない。
「そうか、20年も前のなら、跡形もないか。」
潤三郎が20年の長さをしみじみ思っていたら、

「跡形というのは、なくなった物に使うんじゃないの?
昔はあったけど、今はない物にさ。」
洋司が言葉のチョイスを指摘する。

「時間がただ真っ直ぐに流れるならね。
俺は最近時間というのは、
湖みたいにただそこにあるものなんじゃないかってね。思っているんだよ。」

潤三郎が思う時間の概念を説明し続けるが、
遠藤と洋司は話を聞かずに、机の下で指を絡める。性的高ぶりを感じていた。

(この2人の感覚、恋愛に似てるんだ。それで気味が悪いんだ。)

さっきからずっと思っていた違和感の意味が分かった七瀬。
これまではそんなに感じなかったのに、それぞれのいろんな欲望や感情があふれ出てきて、
お酒ではなく、感情に酔いそうになった。

このままだと倒れそうで危ない。七瀬はその場を離れた。


お風呂の中で、“人が持つ、強烈に強い感情がある。”この事実を受け止めていた。
自分の能力は危険なのかもしれない。
もし、人の感情を無抵抗に受け入れていたら、自分が消えてしまう・・・
七瀬はそんな気がした。怖い。


お風呂から上がり自分の与えられた部屋に行く途中、洋司の部屋があった。
いつもはすぐ寝てしまうのに、まだ電気が付いている。
中から女性の声・・・?

七瀬は洋司の部屋を隙間から覗くと、遠藤が洋司の部屋にいた。

2人は抱き合う。(ちょっと強引過ぎない?)
突然に抱きついてきた洋司を、ちょっと拒絶する。

(あれ?何だよ。あんな熱烈なラブレター書いてきたくせに。)
(何この人。私のこと何だと思ってんの!あんなロマンチックなラブレター書いておいて。)

(何だよこいつ。もう我慢できん。)

洋司は強引に遠藤を押し倒した。遠藤は観念してされるがままになっていた。

(ラブレター???二人とも相手から誘われたと思っている?)
七瀬は、また変な違和感を感じていた。


(洋司のやつ。洋司のやつ。)おかしい?潤三郎の心の声が聞こえる。
(俺の女。洋司のやつ。俺の女…)

声が気になって、もう一度洋司の部屋を覗く。

洋司の部屋の隅には、隣の部屋と繋がった小さな穴が開いていた。
そこから潤三郎は息子の情事を覗いていた。

(これだ。この感情の高ぶりだ!これこそ欲望なのだ。
飢えと恐怖。そして、これは焦燥と悲しみだ。
身を焦がすような憧れだ。そうだ!もっと激しく!もっとだ!!)

自分の女だと思っている遠藤が息子と寝ている。
嫉妬にも似た感情が、潤三郎を高みに持っていく。


次の日の朝になっていた。
原稿に向かって一心不乱に鉛筆を走らせ続ける潤三郎。

(人間を突き動かすのは欲望なのだ。私の欲望は埃を被ってしまっていただけだ。
知識や技術でそれが欲望に降り積もって固まってしまったんだ。
そうだ、そんな物削り取って捨ててしまえ。)

七瀬は潤三郎の部屋を階段途中の隙間から覗いていた。
遠藤がお風呂を使うために階段を降りてくる。
七瀬はなにも言わずに一礼した。

洋司も七瀬と同じ所で執筆の様子を覗き見る。
「あんな親父、何年かぶりに見たよ。」七瀬に話しかける。

「まるで、何かに取り憑かれたみたいです。」
芸術の発露を初めてみた七瀬は圧倒されていた。

「あれが親父だよ。親父は化け物だ、芸術に身を捧げた。ね。」
「俺とあいつ、寝たんだ。昨日。何でだと思う?」

「愛し合ってたから?」
七瀬が恋愛における当たり前の感情を話すと、洋司は首を横に振った。

「親父が、仕組んだんだよ。」
「えっ!」(やっぱり…)

「俺とあいつに、熱烈なラブレター書いてさ。意味がわかんないだろ?
ラブレターを書いて、俺たちがそうするように仕向けたんだ。」
「どうしてそんな…」

「俺にもさっぱりわかんないよ。でも、よかったんだよ。ああなるためにさ。」

(必要だったんだ。欲望にくべる薪のようなものが。)
潤三郎の行動の理由がわかった。七瀬は妙に納得する。

(名作だ。これは名作になる。)
原稿を書きながら、潤三郎は名作が生まれる予感がしていた。

(これが芸術に身を捧げた姿。なんだか神々しくも見える。
これからどんなシナリオができるのか、完成したものが見たい。)
潤三郎の芸術は爆発していた。


シナリオが完成して、すぐに大藪と一緒に来た遠藤。
机の上には「知と欲」と書かれたシナリオが置かれていた。


大藪はシナリオをもらってすぐに読んだが、全く意味がわからなかった。
表現が抽象的すぎたのが原因らしい。
もう少し、軽妙でポップな作品の方が、潤三郎には合う。という助言をする。

・・・つまりは、ボツ。

七瀬はお茶を運びに来て、シナリオがボツだと知った。
あの情熱が…あまりに驚いて、固まってしまった。




学習能力が高そうで、意外と自分の状況に溺れやすい七瀬。
とうとう7話まで来てしまいましたが、
七瀬に安住の地は見つかるのでしようか?

今回の食事がお鍋。
今シーズンは毛ガニ、食べてなかったなぁ・・・なんて思ってしまいました。


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家族八景 第6話 日曜画家 あらすじ ネタバレ 石野真子 [家族八景]

家族八景 第6話 日曜画家

火田七瀬(木南晴夏)が次に向かった家は、竹村家。

「そうなの、そうなの。居たの、居たの。以前には居たの家政婦さん。家にも居たの。
以前と言ってもね、主人のお父さんが生きてらした頃なんだけどね。
だから、前から家政婦さんに来てもらいたかったの。本当の本当よ。」
「はぁ・・・」

「そうなのよ。でもさあ、いろんなお話聞くでしょ。最近の若い家政婦さん。
贅沢になって、家族同様の待遇をしろとか、洋裁学校に行かせろとか、
休みは何日欲しいとか、いろいろ言ってくるって。
そういうの何?注文、要求、注文。やだ、注文2回言っちゃった。」
「そうですか・・」

「そういう話、さんざん聞かされてたからね、私も二の足を踏んでいたんだけどね、
あなたはそんなことはないって紹介状に書いてあったからね、
私も思い切って雇ってみようと思ったにょ。
思ったにょって言っちゃった。思ったの。」
「なるほど。」

「最近の家政婦さんはね、本当に贅沢言うんだって。
昔の家政婦さんはね、何も言わなくったってパッパッパッって、チャッチャッチャッって」


私は人の心が読めてしまう。心を読むとき、私にはどう見えるか?
それはその家によってさまざまだ。


七瀬は、奥様の登志(石野真子)の長い話を頭からスルーして、
庭につぼみをつけた小さな花を眺めていた。

(最初が肝心。最初にちゃんと釘を打っておかなきゃ。
この子だって徐々に注文?要求?注文?いろいろ言ってくるかもしれない。
家は名家なんだから、務めるだけでありがたいと思いなさい。)


心の中でもいっぱい話す登志。
どうやらこの家ではお歯黒に見えるようだ。
それも、笑顔で歯をむき出しで見せてくる。

(何て口数が少ない。年上の、年長者の私がこれだけ喋っているのに
この子は、はいとかなるほどだけ。もっと長いこと喋りなさい。
年下なら、もっと長いこと喋りなさい。)

話す隙もなく話をしていた登志がこんなことを考えていたと知り、
「あのう、先ほど本屋さんでこちらのお宅までの道を尋ねたときに、
こちらのご主人が絵を描いていらっしゃると伺ったのですが、どんなカテゴリーと言いますか
どんなジャンルの絵を描いていらっしゃるのですか?」
(割と長いこと喋れるんじゃない。)

「抽象画だか何だかわからない絵を・・」(あの男、金にならない絵ばかり描いて。)
「もっとも平日は会社に勤めていて、絵を描くのは日曜だけ。」
(自分の書きたい絵ばかり描いて、芸術家気取りやがって。)

でも新聞の連載小説に挿絵を描いたこともあるのよ。
(あれは金になったのに、最近は金になる絵を一切描きたがらない。)
「新聞に。凄いですね。」


「ただいま。」
竹村家主人、天洲( 矢島健一)が帰宅。

部屋に入ってきた天洲は、七瀬の顔を見ながら突っ立っていた。
「今日から家で働いてもらうことになった、火田七瀬さんよ。」
(ざまぁ見ろ、驚いてやがる。あなたは絵のこと以外興味がないだろ?)

「もう雇っちゃったんだもの、今さらどうすることもできないわ。」
(雇う金が心配なら、もっと金になる絵を描きな。)


天洲の心を見てみると、お歯黒にはなっているが言葉が出ていない・・
どこか別の場所に意識が行ってしまっているようだ。

登志は天洲に向かっていろいろと話しかけているが、言葉を聞いている風でもない。

(うそ、この人何も考えていない。)
七瀬は初めてのことに遭遇して少し驚いていた。

登志は天洲に今までよりもハイスピードで話を続けていく。
天洲の心は何も考えていない。
でも、登志の顔の前に長四角 緑色の図形が写った。



夕食の食卓の上座に座る天洲の心は、変わらずに空っぽだった。
(今までいろんな人の心を読んできたけど、こんな心の中は初めてだ。)

登志の顔の前はやはり、長四角 緑色の図形ようなものがあり、
息子の克己の前は、直角三角形 赤色の図形のようなものがある。
これが人の顔の前に出ているときは、言葉が図形に遮断されているようで、
天洲の耳には届いていない。完全にスルーだ。


登志が天洲に声をかける。思い出したように食事を食べる天洲。
「またぼんやりして。」(芸術家ぶってんじゃないわよ。)
「家政婦さんを雇ったんだから・・・・」
登志が話をしている途中で天洲は聞くことをやめていた。

(聞きたくないことを遮断してる。)
天洲の図形は、聞きたくないことの話を家族が始めると出現するのだと理解した。


「ななちゃんだっけ?本当に君、美人だね。」
克己に声をかけられて克己の方を見てみる。
(あ、この人こんな顔だったんだ。
(ずっとご主人の意識を通して見てたから、この人の顔は三角形にしか見えなかった。)

「だいたい美人さんてのはさ、美人さん自身が一番、
美人さん自身が美人さんってわかってるんだよ。」
「いまちょっと説明、失敗した。」
ここは登志とちょっと似ている。言葉を重ねて失敗する感じ。

(しかしマジでかわいいな。処女か?処女かなぁ?処女だな。
でもこの子がいたら、金の話がしづらいな。なんとかパチンコの軍資金せびらなきゃ。)


「そうだ、なんか甘いものでもあるかな?」
「ケーキならあるけど。」(どうせ今日もパチンコ負けてせびりたいんだろ?)
(だったら“あれ”を言いな!あれを。)

登志は克己に何かを言わせたくて仕方がないようだ。

「親父、また新聞に挿絵描いてくんないかな?」
(それだ!!!言え!それをもっと言え!!)
「そうねぇ、あの挿絵のギャラ、会社の一か月より高い給料だったもんねぇ。」

お金の話を登志と克己が始めた。天洲はまた世界に入り込む。
七瀬は注意深く天洲を見ていると、
会話は耳に入り、出てくるときには記号に変わっていた。
言葉を認識する前に別の物に変化させる。凄い才能だ。


「ごちそうさま。」
天洲は食事を終えてアトリエに戻ろうとする。
扉近くにいた七瀬の顔をじっと見つめ、また世界に入っていった。
七瀬は七瀬のままで、図形にはなっていない。
天洲は七瀬を思い浮かべ、そこに雪が降っていた。



次の日、窓ガラスを拭きながら、昨日見た図形のことを考えていた。
あれは芸術家としての防衛手段だろうか?何にしろ天洲は凄い人だ。


他の人は図形なのに、何で自分だけ図形じゃないのだろうか・・・?
ロマンチックっていうか、なんか悪い気がしない。

「何喜んでんだろ、私。」
みんなとは違う自分だけが特別だと感じて、喜びを隠せずにいた。
独り言が出てしまうぐらいに集中してしまっていた。


「いつまで窓ふきやってんのよ!タダで雇ってんじゃないんだからね。
さっさと終わらせて、次はアトリエの掃除!」
登志は自分のいら立つ感情をそのまま七瀬にぶつけてきた。


七瀬はアトリエに入る。正面に飾られているキャンバスには
一面に、白い椿の花のような真ん丸な花形のようなものと、
右隅に緑の長方形と、赤の直角三角形が描かれていた。
(この図形、奥様と克己さん?)


掃除を終えてアトリエを出たところで、帰宅した天洲に会った。
「七瀬さん。掃除してくれたんだね、僕のアトリエ。ありがとう。」

天洲は世界に入り込み、七瀬を思い浮かべていた。
降り積もる雪は、体を半分ほど埋めていた。
(なんか・・嬉しい。こんな気持ちは初めてだ。)


夕食。天洲はまだ席についていない。登志と克己は天洲を待っていた。
克己はずっと七瀬をガン見してくる。
(合わせろよ、合わせろよ!俺と視線を。
自信ありなんだよ。俺は目には自信ありなんだよ。)

(お願い閉じて。目か口どっちかを閉じて。)

(こんなウブな娘は、俺の眼力と早いテンポの口説きで簡単に落ちる。)
(落ちません。空から海が落ちてきても、あなたには落ちません。)

(いきなりキスして、動揺させて、その後はホテルへ・・・)
(何で父親と息子でこうも違うんだろ?)

克己が心で話していることに、七瀬は一つづつ突っ込みを入れた。


天洲が席に着いた。食事をしながら登志と克己は
絵を描かせるためにどうしたらいいのかをずっと考えていた。
2人で会話をしながら、
懸命に天洲が“描く”と言わせるために言葉攻めをしていた。


天洲は世界に入り込み、話をスルーしていたが、容量がオーバーでバグってしまった。
現実に戻れない天洲を心配して、七瀬は天洲を現実に戻す。

逃げるようにアトリエに戻ろうとする天洲は、七瀬の顔を見て また世界に入る。
いつの間にか七瀬に振る雪は2/3ほど積っていた。


七瀬はお風呂の中で、
自分に降り積もっている雪の量が増えたことを思い出していた。

(もし雪が旦那様の好意の表れで、
積れば積るほど好意の気持ちが大きくなっているのだとしたら・・・)
「旦那様も私のことを。」(“も”ってなんだよ。“も”って。)

(私のような能力を持った人間でも、人並みに)「誰かを好きになれるんだ。」
人を好きになる。こんな感情を持てたことがうれしかった。



ある日の日曜。女性が2人家に遊びにやってくる。
梶原 里子(八代みなせ)と 落合 美佐(真凛)は
天洲のアトリエを見学する約束をしていたようだ。

登志は七瀬にお茶を持っていくように言い、
そのあと残って部屋の監視をするように指示した。

「私や克己がいくら言っても売り絵を描こうとしないから。
会社の若い子たちに言われたら、その気になると思って。
隙を見てあの子たちに耳打ちをして。売り絵のことを言ってくれって。」
(これも家政婦としてのしごとだよ。)


落合が話を始めたら、天洲は世界に入っていく。
黄色のひし形の図形が落合の顔の前に。梶原には図形がなかった。

七瀬は自分以外にも、図形にならない人がいたので驚いた。
図形が出た人の話はスルーなのに、
図形の出ていない人の言葉は言葉として届いているようだ。


天洲が自分の世界に入っているときは、お歯黒で目を閉じている。
突然、目が開いた。

(いつにするかなぁ。梶原の使い込みは僕しか知らない。
それをネタにこの娘をホテルに連れ込むのは、いつにするかなぁ・・
ホテルに連れ込むのは決算の近くがいいなぁ。
使い込んだ金を経理に戻せなくなってからの方が、ゆすりが効く。
良い笑い声だ。さぞかし色っぽい喘ぎ声をあげてくれるのだろう。)

(決算2日前、揺すって動揺させ、そのあと強引にホテルへ。若い肉体を味わいつくし・・)

天洲の頭の中で思い描く絵は、白いキャンバスに花のようなものが増えていく。
この後待っているであろう女子社員との情事を考えるごとに、
欲望の大きさで形が大きかったり、小さかったり。
埋め尽くすほどのたくさんの花でいっぱいになった。

落合が突然立ち上がり、天洲を罵倒し、怒って部屋を出て行ってしまった。
七瀬が後を追いかけると、廊下の隅で泣いていた。


「ごめんなさい。なんか急に。」(やっぱり課長は落合さんのことが・・・)
「恥ずかしい、興奮しちゃって。」
(落合さんに注意してあげなきゃ。課長の女癖は最悪だって。)

「もう大丈夫です。落ち着きましたから。」(でもダメ。私と課長のことがバレちゃう。)

「泣いたらなんか、すっきりしちゃった。」
(くやしい!課長にはダマされた。子供を堕胎した費用だって払ってくれないし。)

落合は天洲との不倫の果てに、子供を堕胎させていたのだった。
七瀬が天洲に抱いていた感情が音を立てて崩れていく。



翌朝。
「落合さんですか?今日中に誓いこんだお金を返しておきなさい。」
七瀬は落合に匿名電話をした。


ふすまを乱暴に両開きで開けると、ちょうど天洲が出勤するところだった。
「会社に行ってきますね。七瀬さん。」

天洲の頭の中の七瀬に降り積もっていた雪は、もうすぐ七瀬を埋め尽くそうとしていた。
(これは雪じゃない、キャンバスだ。)

天洲は自分の中の世界で、また目を開ける。
(ウブな子。芸術家の憧れを利用して、優しく口説いてホテルに連れ込んで・・・・)

開けた目を閉じた。
そのとき、現実の七瀬の顔の前には、青色の正方形が出来ていた。

「気の毒な人。私、今日で・・辞めさせていただきます。」

天洲は妄想を募らせ、実行する青写真もできていた。
そんな時に聞かされた言葉に驚きは隠せない。
天洲を無視して、登志に挨拶に行く。

「あっそ、あっそ、辞めるんだったらね、
早く辞めてもらった方が家としてはありがたいね。
だってさ、あんた前から不満そうなぶっちょう面してたもんねぇ。
さぞかし注文、要求、注文。あったんだろうよ・・・・」

「最近の若い子は本当に信用できにゃい。できにゃいって言っちゃった。
でもいいわよ、できにゃいで。だってできにゃいんだもん。」

登志の話は終わりそうにない。
庭の方を見ると、この家に来るときはつぼみが堅そうだった花が開いていた。

花を見て、七瀬は小さく微笑む。




地味によく働く家政婦さんに見えますが、
毎回家が違う(設定上当然のことですが。)
ということは、いろんなところを旅しているのでは?とも思います。

特殊能力を持っているがゆえに、
特殊な環境を、知らず知らずに選んでいるのでは?

温泉のような入浴剤。
当初は話数が進むごとに色が薄くなる。なんてことも言われてましたが、
色は薄くならないと木南晴夏さんが言われていましたね。







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家族八景 第5話 紅蓮菩薩 あらすじ ネタバレ 木南晴夏 [家族八景]

家族八景 第5話 紅蓮菩薩

次の住み込み先は根岸家。生まれて10か月の赤ちゃんを抱いて、
火田 七瀬(木南晴夏)の面接をする根岸 菊子(井村空美)
面接というよりは、世間話をしているようだ。

「触りたい?触りたいでしょ?」
見ているだけでいいと遠慮をする七瀬だが、赤ちゃんを抱くことになった。


私は人の心が読める家政婦。心を読むとき、私にどう見えるのか?
それはその家によってさまざまだ。

ぎこちなく赤ちゃんを抱いて、菊子のほうを見ると
(任せられないわね。この子に赤ん坊の世話は。なんてぎこちない抱き方。)

この家ではどうやら水着姿に見えるらしい。
菊子はカラフルなビキニ、大きなサングラスをカチューシャのように頭に乗せ、
左の耳元にはハイビスカスの花が挿してあった。

(なんか言うことがあるでしょ?
人様の赤ん坊を抱いたら、なんか言うことがあるでしょ。)
菊子の心を読んで、言い忘れていたというか、言うつもりのなかった言葉・・

「本当にかわいいですね。」
慌てて見切り発車して言ってしまったので、とてもぎこちない口調になってしまった。

「え?本当!まだ10か月だし、お猿さんみたいでしょ?」
やっぱり言ってももらえるのはうれしい。菊子は満面の笑みだ。

(何?その間は?)
「い、いえ、さるなんかじゃないです。何て言うか・・さるじゃないです。」
間を埋めるために発したので、さる以外の言葉が出てこなかった。
(さるじゃないっていうのは、私が一番よくわかっているわ。)
しまった・・・「ものすごく、とてつもなくかわいいお子さんだと・・・」
「そうかしら?」

フォローするように話したが、またしても単調な言葉しか出なかった。
でも菊子は満面の笑み。よかった 機嫌を損ねていないようだ。


部屋を一通り案内される。
この家の主人:新三(眞島秀和)の書斎の部屋の扉には
“無断で入るべからず”と張り紙がされていた。

新三は父親が学長を務めている私立大学の心理学の助教授。
菊子にこう聞かされて、「すごいですねぇ・・・」
七瀬は本当に凄さを感じたので、今度は言葉がよどみなく口から出た。

(よし!産まれたばかりの赤ちゃんに、助教授。
絵にかいたような幸せな家庭のあとは・・・)

菊子は奥の廊下に目をやる。そこにはなぜか白ブリーフが落ちていた。
「主人、研究以外はまるで無頓着で・・・」
(かしこい妻のイメージがこれで際立つ!)


(まさか!菊子がわざとパンツを廊下に落とした!?)
七瀬は菊子の作戦を恐ろしく感じていたが、

「大変ですね。」とだけ言っておく。
(近所に言いふらして!賢い奥さんだって。自分で言いふらすわけにいかないのよ。
そのために必要もないのにあなたを雇ったんだから。)


玄関の扉が開いた。新三の帰宅。菊子はパンツを後ろ手で隠し、出迎える。

七瀬は菊子から紹介されて新三に挨拶をする。
(火田・・・火田?どこかでその苗字を聞いたような・・・?)
七瀬の名前を聞いてから新三はどこでこの名を聞いたのかを思い出そうとしていた。
(まぁ、いいっか。)思い出せなかったが、思い出すことをやめた。

書斎の掃除は新三に言われたとき以外はしない。
部屋にも入らないようにと念押しをされた。

今回の家は心理学の助教授の家だから、期待していた。
自分の能力のことがいろいろわかるかもしれない・・そう思っていた。
部屋に入るきっかけだった掃除を拒否され、研究資料を盗み見ることもできない。


朝ごはんのコーヒーを新三に運ぶ七瀬。
新三は七瀬の顔を見て(火田、火田・・?やっぱり聞いたことがあるような・・・)
思い出せないモヤモヤが頭の中に残っていて、考えを巡らしてしまっていた。
(だめだ・・思い出せない。気持ち悪いなぁ・・・)

新三はデスクで寝てしまったので、体中が痛い。それも肩が格別に痛い。
コリをほぐそうと、肩をぐりぐりと押さえつける。

(そりゃ方も凝るでしょうよ。研究室のデスクでは。)
(心理学部には女の生徒さんが多いから、こんな男にも浮気相手が見つかるんだわ。)
菊子は女子大生と浮気をしていることを、とっくに知っていた。

新三は肩を揉みながら昨日の女子大生とのことを思い出していた。


七瀬は洗濯をしようと洗濯室に。
洗濯籠の一番上に置かれていたのは新三のカッターシャツ。
広げると、左の肩のあたりにくっきりとキスマークがついていた。

カッターシャツを広げたままキスマークを見ていると、
「嫌だわ。私の、私の口紅が・・ 私の口紅、私の、私の・・・・」
洗濯室に慌てて入ってきて、夫の浮気の証拠を見られて狼狽しながらも、
菊子は懸命に自分の物だと主張し続ける。

(手のひらで夫を転がしてなきゃ、そうでないと賢い妻のイメージが崩れちゃう。)
(賢い妻。おしとやかで賢い妻、上品で賢い妻、かいがいしい賢い妻、
ひかえ目は賢い妻。賢い妻、賢い妻、賢い妻・・・・・)



夕食、新三は納豆をかき混ぜ、菊子はサツマイモの煮物を食べていた。
「あら、このお芋さん美味しくできたわ。」(今、女のことを考えている!)
(女のぬくもりに浸りながら混ぜてやがる!)
「あなた、このお芋さんとっても美味しくできたから召し上がってくださいな。」

心の中は嫉妬で煮えたぎっているのに、ほほ笑みを浮かべて新三に話しかける菊子。

「召し上がって、お芋さん。」
ここまで言われると仕方がない納豆を混ぜる箸を止め、芋を一口食べる。
(お芋さんって芋に借りでもあるのか?この女。)

「うまいな。」「でしょ?うれしい♪」
(わかってんのか?芋の味。女の味に浸りながら芋の味がわかんのか?)

「レンコンさんも、シイタケさんも美味しくできたのよ♪」
(たくさんだ、“さん”付けはもうたくさんだ。)

「あとで食べるから。」
「怒られちゃった♪」
小首をかしげ、舌をちょっと出し、“てへ”っとポーズを取る菊子。
(なんだ!今のペロってなんだ!お前は小娘か、うっとおしい!)

(くやしい!毎日のように若い女と!!!)
菊子は怒りを感じながら、煮物のシイタケを箸で突き刺して口まで運ぶ。
「う~ん♪おいしい。ありがとう シイタケさん。」
新三がイラついているのをわかって、わざとこの言葉を言った。


食後、リビングで本を読んでいる新三。
七瀬はテーブルを拭きながら新三の心の中を覗く。
本を読んでいるのはパフォーマンスで、
デスクの上で女子大生との関係のことを思い出していた。

(やはり良い。女子大生の肌は良い。)
なんだかとても最高に情事のことに浸りきっていた。
(まあ、これくらいの火遊びなら良い。バレない分には良い。)
こんなに露骨に分かりやすい行動を取っていながらも、バレていないと思っていた。
デスクの上だけでコトにおよぶ人。ツメも甘かった。

そんな女子大生とのことに浸りきっている新三の姿を
戸口から憎々しげに見つめていた菊子。

嫉妬に燃える菊子を見て、七瀬はぎょっとするが、
目があったところでお風呂に行くように言われる。


七瀬はお風呂の中で菊子がどうして何も言わずに
嫉妬しながら耐えているのかを考えた。
(奥様は旦那様の浮気を確信すればするほど演技が完璧になっていく。)


洗面所で音がする。見に行くと菊子が何かをしているみたいだ。
近づいて様子を見てみると、化粧水やら乳液やらを洗面所に流し捨て、
開いた瓶をゴミ箱に何本も、何本も捨てていた。

アイラインは剥げて目の周りがパンダのように黒く、
口紅を手で乱暴に拭った跡が頬についていた。

何があったのかと心の中を覗いてみると
夜、セクシーな服に着替えて新三に迫ったが、
「お前、重いよ。」
迫る菊子と距離を取り、ポツリとつぶやくように言っていた。


翌朝、菊子は出かけて行った。家には誰もいない。今がチャンス!

七瀬は新三の書斎に入る。研究資料や、研究対象物、ラットが飼われていた。
机に積まれている本を開いて見るが、解るか解らないかも分からなかった。
本はあきらめ、本棚に並べられた資料のファイルを見てみる。
綺麗にラベルが貼られていてとても見やすい。

その中に、「ESP実験報告」と書かれたファイルを見つけた。(ESP=超感覚的知覚) 
慌ててファイルを取出し、中を見た。
一般人のESP能力の測定(無作為に抽出した被験者100人のデータ)

開いてすぐの被験者の名は
火田精一郎 武部製紙総務部長 実験日:1968年2月16日

「嘘・・・父さん・・・」

驚いて身動き一つ出来ずにいたときに電話のベルが鳴った。
七瀬は父のページだけを抜き取り、部屋を出て、玄関そばにある電話機まで急いだ。
受話器を取る寸前で電話が切れる。

玄関の方に視線を感じ見てみると、
玄関扉のガラス部分から新三がこちらの様子を見ていた。
気付かれたとわかると、玄関を開け七瀬の前に立つ。

(思い出した。思い出した、火田精一郎。)
「君のお父さんは、武部製紙の総務部長をしていた火田精一郎だね。」
(火田精一郎の実験結果は凄かった。この能力は遺伝しているかもしれない。
さっそく実験をしよう。)
「ちょっと書斎に来てくれないか?早く!」


新三はファイルを取出し、火田精一郎を探す。
ページをめくっても、めくってもどこにも見当たらない。

「あのう・・旦那様」取ったとバレないうちに七瀬は声をかけた。
新三は探すのをあきらめ、七瀬を椅子に座らせる。

「お父さんは元気?」
「死にました。3年前、私が高校を卒業する前の年に・・・」
(知ってるよ。まぁ一応手順としてな。)
「それは残念だったね。」
神妙な顔で新三は言ってくれた。とても演技派だ。

七瀬の父は昔、新三の研究を手伝っていた。
心理学の実験で、ESPカードを使ったテストを受けていたのだった。
(凄い成績だった。みんな驚いていた。
この子にも能力があれば、凄い研究成果が発表できる。
教授にだって、昇進できるかもしれない。)

ESPカードを使ったテストのやり方を説明し始める。
新三が説明を終えてすぐに、七瀬は新三の上着を預かると言って聞かなかった。
不審に感じながらも、上着を七瀬に預ける。

(万が一、私の能力がバレたら見世物にされて、きっとひどい目に遭う。
わざと間違った答えを言っても、どう判断されるかわからない。
テストだけは何としても避けなきゃ!)

「あのう・・旦那様。
奥様が戻られる前に、お掃除とかお洗濯とかやっておきたいんですけど・・
あっ!お米も炊かなきゃいけないし・・・」

わざとアホっぽい口調で新三に話をしてみた。
(愚鈍だ。この子は愚鈍だ。父親はあんなに利口だったのに。)

「大丈夫。菊子には、私の方から言っておくから。」
「私、心理学とかわからないし・・・」
(当たり前だ!お前のような教養のない人間に分かってたまるか!)

「私が奥様に怒られちゃうんで・・・」
菊子が夕食の時に新三にして見せたように、舌をペロッと出した。

「だから!私が言っておくと言っただろう!!」
突然切れたような物言いで怒りだした。

「あははは・・ごめん、ごめん。怒ったわけじゃぁないんだよ。」
幼い子供をあやすような口調で優しく言い含めた。

小学校の子供たちに受けてもらった時の資料を見せて
安心させようと、七瀬に背を向けた。
七瀬はその隙に、新三の上着のポケットにいつも入れている目薬を取り出した。


「とにかくね、心理テストなんて、君が思っているような・・・」
新三は話しをしながら七瀬の方に振り向くと、七瀬は泣いていた。
「えぇ!!心理学的に何が起こってるんだ?」
(泣くってなんだ?泣くってどうだ?)

「泣いてんじゃないよ!!!」
怒鳴りつける新三。余計大きく鳴き声を上げる七瀬。
「違う、違う・・・それほど急ぐことないな。次の機会にしよっか?
今日はいいよ。今日はいいです。」
(まあいい、時間はたっぷりあるんだ。)

七瀬は預かっていたコートをソファに置き、部屋を出た。
(何とかこの場は切り抜けたけど、いずれ必ずテストを受けさせようとするだろう。
どうすれば・・・・)


書斎の扉前で涙をぬぐう七瀬を、外出から戻ってきた菊子が見てしまった。
(家政婦にまで、ついに家政婦にまで手を出した。
許せない・・家政婦にまで。ケダモノ。)

「ななちゃん。そこで何をしているの?」
「旦那様にお茶を・・・」「お茶を運んだら、涙がでるの?」
(無理やり手籠めに・・・ケダモノ!許せない!)

菊子の心の声を聞きながら、妙案が浮かぶ。
嫉妬と怒りに心を支配されている菊子の感情を利用すれば、
新三の追及から逃れられるかもしれない。

「奥様、私見ちゃったんです。旦那様が女の人とラブホテルから出てくるところを・・・」
「ありがと。でもそのこと誰にも言わないでね。ななちゃん。これが賢い妻なのよ。」

周りから賢い妻であると思われたい。
この執着心はこの程度の言葉ではびくともしなかった。

「旦那様とその女の人、笑いながら奥様のことを、バカって言ってました。
人にどう見られるか?しか考えていない頭の悪い女だって。」

この言葉は菊子の胸に響いた。怒りが頂点にまで達する。
涙を流しながら完璧な笑顔で七瀬を見つめる。
この迫力に押され、立っていられなくなり、七瀬は崩れるように座り込んでしまった。

「お暇を、お暇を頂かせてください・・・」
「無理もないわね。さようなら。」

今夜は赤く月が輝く夜だった。七瀬は荷物をまとめて根岸家の玄関を出る。

新三は目薬を上着のポケットを探って取り出した。中身はカラ・・
自分の思っていた量よりも少ないと感じていたが、気にも留めなかった。

菊子は果物の皮を剥くには大きすぎる刃渡りの包丁で、リンゴの皮を剥いていた。
剥くというよりは、とりあえず手を動かしているだけのようで
かなり分厚い皮が落ちていく。

その包丁を握ったまま新三の書斎に、音もなく現れた。

この後・・旦那様が七瀬の前に現れることは二度となかった。





最後のプライドがなくなってしまったとき、どんな行動を取るのか?
人それぞれだと思いますが、
ここまで大胆な行動をできるのなら、
自分の気持ちを新三にぶつけて欲しかったですね。
なぜここまで新三に執着していたのかが分かったかもしれません。


ESPで英語?







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家族八景 第3話 澱の呪縛 あらすじ ネタバレ 木南晴夏 [家族八景]

家族八景 第3話 澱の呪縛

私は人の心が読める家政婦・・・

少しさびれた商店街のはずれにある古本屋「神波書房」
火田 七瀬 (木南晴夏)が次に紹介された、店舗兼住居の古本屋だった。

店番をしているのは主人の神波 浩一郎 (橋本じゅん)
妻の兼子 (清水ミチコ)が体を壊し、子だくさんで家の中が回らないので
家計に余裕はないが、家政婦を雇うことにしたのだった。

浩一郎は七瀬に家族の紹介を話し続けるが、頭に入らない。


どの家にも匂いがある。生活臭、埃臭さ、住人の体臭・・
でもこの家の臭いは凄まじい。
浩一郎はこのにおいを何とも思っていないのだろうか?

心の声を聞いてみる。
浩一郎は話す内容と心の中に変わりがない。裏表のない人。

でも、臭いに関しては鈍感だ・・

家の中に通される。心を読むとき、その人が私にどう見えるのか?
それはその家によってさまざま。
この家に人たちは、どうやらケモノに見える。頭には角、鼻輪が付いている。


2階に上がる階段は、まるでけもの道。
真ん中だけは人が通れるように開いていて
両側には洗濯物やらガラクタが放置されていた。
浩一郎に2階は子供部屋だと説明してくれるが、
上にあがらなくていいと指示される。本当にいいのかなぁ・・


一階の居間、者が散乱していてとても汚い。そして臭い。
一番奥に置いてあるコタツで寝ていたのは浩一郎の妻・兼子。
寝起きの腫れぼったい目で、七瀬をジッと睨み付ける。
この間が耐えられなくて、兼子の心を見る。

(ストライク!)

ん??ストライクって何?

兼子は立ち上がって (ストライク!)
トイレの場所を教えて (ストライク!)
風呂場の場所を教えて (ストライク!)
流しの中に洗えていない山盛りのお皿がある、台所を教えて (ストライク!)

料理の担当は兼子で、洗い物は七瀬が担当。
兼子は冷蔵庫からアイスバーを取出し、おもむろに食べだす。
「あんたも食べる?」七瀬にアイスを渡してくる。

包み紙を見ると“ストライクアイス” あぁ、納得。
兼子はストライクアイスバーを食べながら、(パラダイス!)
かなりご機嫌のようだ。

洗濯物から作業をするように指示していた兼子は突然せき込みだした。
「やっぱり持病が・・・」(なんつって)
「まだ治んなくて・・・」(仮病だけどね)
「もう、大変」(なかなかの演技力!ハリウッド女優か!お前!!)
兼子の病気は仮病だったんだ・・・


床一面に散乱する洗濯物。この臭い・・・頭が痛くなってきた。
二層式の洗濯機。洗濯物を入れて回すと、汚れて水が赤茶色に変わる。
洗っても、洗っても終わらない。

次は食器洗いに取り掛かる。何日洗ってないんだろう?
ぼんやりと食器を見つめていたら、子供たちが七瀬に抱きついてきた。
五郎 (武井祐人)、悦子 (末原一乃)、六郎(藤木夢現)だ。
学校から帰ってきて、興味津々で七瀬のことを見ている。

七瀬は丁寧に自己紹介をし、頭を下げる。
六郎は(えへへ)
悦子は(このお姉ちゃん、お人形さんみたい)
吾郎は(俺がお嫁さんにもらってやるぜ)
みんな考えていることがかわいい。

勝手口から道子 (茜音)、良三(岡本拓朗)、敬介(野口翔馬)たちが帰宅。
その後すぐに大学生の明夫( 浜野謙太)
「困ったことがあったら何でも言ってよ。だって七瀬ちゃんは俺たちの家族なんだから。」

みんな家族と思ってくれた。綺麗な目、裏表のない心。
怠け者の母親を支えながら明るく生きているこの子たち、ちょっと健気かもしれない。

「お姉ちゃん」悦子が七瀬をそう呼ぶ。
今日来たばかりの自分をお姉ちゃんと呼んでくれるのがとてもうれしい。

・・・・でも、臭い。(いやなの?俺たち)(いやなの?私たち)
七瀬が嫌がっているように感じている子供たちに、返事が困って
「私・・ちょっと・・・うれしくなってしまって・・・」
繕うようなセリフを言ってしまった。

この家族いい人たちばかりだけど・・・臭い。


夕食、大皿に盛られた料理は
ベチャベチャした野菜の炒め物と焼いた豆腐の納豆掛け。
この食事はどんな味がするんだろう・・・
七瀬はみんなの心の中を覗く。全員食べ物のことには無関心だった。
料理と体臭が入り混じった臭いが・・・「うっ・・」七瀬は思わず吐きそうになった。

この人たちは雑然とした部屋で、大雑把な料理を取るうちに
味、臭い、汚さに慣れて麻痺してしまったに違いない。
元凶は・・・きっと母親。

「だれだこいつ。」食事中に返ってきたのは長男の慎一(山本浩司)
(中の上だな)心の中で七瀬を自分なりに解釈した。
お風呂の支度が出来ていないと知ると、(中の下)に格下げ。


五郎と六郎が風呂から上がり、コタツで寝ている母親の周りを走り回る。
七瀬は今日洗った下着を渡すが、渡された意味を理解してくれない。

「今着ているのは、さっき脱いだ下着ですよね?それは洗濯しますね。」
(だめなの?だっておととい替えたばっかだし。)

道子と悦子がお風呂から上がり、母にお風呂をすすめるが、七瀬に入るように言う。
「私、今日入んないんだから。」
七瀬は明夫に勧めるが、「僕はこないだ入ったよ。」キザって話してくる。

七瀬は湯船の中で猛烈な頭の痛みに襲われた。
変な入浴剤だからだと思っていたが、湯船をよく見ると垢だらけ・・・
「キャー―――――!!!!!」

七瀬が洗面所で手を洗っていると、
野球部の良三が深夜の素振りを終えて家に入ってきた。
おもむろに七瀬の歯ブラシを手に取り、歯磨きを始める。

「あっ!!それ私のです。」「あぁそうなんだ・・」
気にする風でもなく、歯を磨き続ける。(なんだよ!俺何かした?)
念入りに舌まで歯ブラシで磨き、洗いもせずに七瀬に返す。

七瀬は洗面所にある歯ブラシの数を数えた。
「1、2、3、4、5。5本!?」毛先は全部ゆがんでいて、数は足りていない・・
あきらめた七瀬は指に歯磨き粉をつけて歯にこすり付けた。


自分の与えられた部屋に戻る。
(臭い、汚い、頭が痛い。いつかこの悪臭と汚さに慣れてしまうのかしら?
この頭痛が収まったとき、この家族と同様に・・・・)
こんな恐ろしいことは考えたくない!思い出さないようにすぐさま布団にもぐりこんだ。


夜中に目が覚め、部屋から出て居間へと行く。
そこにはアイスバーをペロペロ食べている人が!その人が振り返る・・・自分!?
この家に染まりきった自分の姿だった。
「キャー―――」飛び起きると朝。さっき見たのはどうやら夢のよう。
こんな夢を見たのは、この汚さと臭いのせい。このままではおかしくなる。
「負けるか!」


子供たち全員出かけた。浩一郎は商店街の会合。兼子は店番。家には誰もいない!
七瀬はゴム手袋にマスクをして戦闘態勢!一つずつ家事をこなしていく。

まずは居間から。一階は綺麗になった。次は二階!
二階はいいと言われていたが、意を決して飛び込む。
居間以上に散乱された部屋。どの子供の部屋も、汚さMAXだった。
新しい人数分の歯ブラシを準備して、全部屋の掃除が終わった。

居間で安心してマスクを外し深呼吸。
(く、臭い。こんなに綺麗にしたのに・・・)

今までの匂いが染みついていて、部屋を掃除したぐらいでは臭いが取れなかった。
強烈な臭いを思いっきり嗅いでしまい、倒れこんで気絶してしまう。


子供たちが帰宅して、寝ている七瀬を起こしてくれた。
みんな体のことを心配してくれているようだ。
部屋が綺麗になって、子供たちは口ぐちに感謝してくれる。

心の中は部屋が綺麗なことを喜んでいると思って見たら、
勝手に自分たちの部屋を掃除し、見られたくないものも見ていることを怒っていた。
というか、部屋の中を見られたことを恥ずかしがっていた。


今日の夕食も昨日と同じメニュー。
みんなは食事をしながら、七瀬がおせっかいで覗き屋だとまだ思っている。

浩一郎が「きれいな部屋で食べる食事はおいしいなぁ・・」
(美味しい?美味しいのかこの飯は??)
この言葉を聞いた兼子は、(嫌味?)「そうね。」
(掃除をしなかった私への当てつけ?)「今まで家は汚かったから。」

母親が“家が汚い”と言ってしまったことで、
子供たちは今までの家は汚かったと認識してしまった。

心の中で母親のせいにする子供たち。その考えは母を甘やかす父へと考えが及び
真一は(この女から見たら、俺たちはケモノに見えるんだろうな。)
他の子供たちも(ケモノ、ケモノ、ケモノ・・・俺たちはケモノだ!!)


(私はとんでもないことをしてしまったのかもしれない・・・
部屋を綺麗に掃除してしまったことで、自分たちの不潔さに気づいてしまったんだ・・)
みんなの心の声が七瀬を追いつめていく。


澱のごとく沈殿していた、生暖かく住み心地のいい 異臭に包まれた不潔さを
私はむき出しにしてしまったんだ・・・


風呂場に駆け出し、浴槽に溜めてあった湯を浴びる。反省のような詫びのような・・
家人はこの行動をわかっていながらも食事を続ける。



翌日、この家を出て行くことに決め、七瀬は暇をもらう。
浩一郎と兼子に挨拶をする。
「大家族だからしょうがないね。」(うちの不潔さに耐えかねたから?)
浩一郎は大家族だから仕方がないことを強調しているが、口と心は合っていない。

話しの途中で浩一郎がおならをした。その匂いを嗅ぎながら話す浩一郎と兼子。
どんどん口に出すことと心が同じになっていった。


私が去れば、彼らは以前のように不潔さに慣れ、麻痺していくだろう。
そうしてまた澱は溜まっていく・・・


外に出て深呼吸をし、外の空気を味わう。「さあ!」




なんとも気持ちの悪い回でした。なかなかヘビー・・・
部屋にし染みついた臭いは消せないものなんでしょうか?


こんなので本気を出せば臭いは取れる??






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家族八景 第2話 水蜜桃 あらすじ ネタバレ 木南晴夏 [家族八景]

家族八景 第2話 「水蜜桃」

最初に桐生家の家族構成を説明しよう。
桐生家の主人、桐生 勝美 (田山涼成)は、定年退職してから2年。
妻、照子 (千葉雅子)は姉さん女房で、夫のことを軽く見ている。
子供、竜一 (正名僕蔵)は、この家での唯一の稼ぎ頭で長男。
子供、忠二 (須賀健太)は、高校生で二男。
竜一の妻、綾子 (佐藤寛子)は、義理父のことを疎ましく思っている。
竜一と綾子の子、彰 (池澤巧)は、小学生。


今日の桐生家の夕食はすき焼き。
家政婦の火田 七瀬(木南晴夏)はすき焼きを照子、綾子、彰の前で作っていた。
彰は歯磨きが大好きで、歯磨きを母親にしつこいぐらいにねだる。
そんな彰を叱り飛ばす綾子。
その怒った言葉じりで七瀬にみんなを呼ぶように言う。

「すき焼きの準備ができました!」近所にも聞こえるぐらいの大きい声。

この言葉とほぼ同時ぐらいに帰宅してきたのは忠二。
部活が長引いたので帰宅が遅くなってしまった。
忠二は柔道部。青あざが絶えない。
子供のころからひ弱だった忠二が柔道をしていることを感謝する照子。


私は人の心が読める家政婦。心を読むとき、その人が私にどう見えるか?
それはその家によってさまざま。桐生家ではどうやら花が咲くよう。
頭やメガネ。頭の全体を覆い尽くすように咲いたり、鼻の穴から一輪咲いたりする。


忠二の心の中を読むと、本当の部活(切手収集クラブ)のことは言えずにいて、
無理やり柔道部の話をするのに疲れている。それでも無理に話をしていた。

照子と綾子は忠二が柔道部でないことに、とっくに気づいていた。
無理に話をする忠二の話に付き合うのがしんどくて、綾子は忠二に竜一を呼んでもらう。

“疲れる、騙されているフリは疲れる”綾子が思っていて、
“疲れるわけないだろ!切手集めで。”照子も思っていた。
“歯が磨きたい!歯が磨きたい!”
彰が口に出していることと、心の中は一緒だった。
子供は裏表がなく、とても素直だ。

竜一が食卓についた。

私がこの桐生家の家政婦になって、一週間経つ。
この家族の悪意はただ一人に集中的に向けられていた。

桐生家主人、勝美。
定年退職してから2年経つのに一日中家の中をうろうろするだけ。
ヒマなら外に働きに出ればいいのにと、みんなはこう思っていた。
勝美は動作がゆっくりで、なかなか席につかない。忠二は父にイラついていた。

勝美が席につくやいなや、箸を持ちすき焼きの肉を取っていく。
遅ればせながら勝美が肉に手を伸ばそうとすると、照子が声をかけ、箸が止まる。

悪意に満ちた食卓・・・ 七瀬は勝美に同情し声をかける。
勝美が考えているのはすき焼きに残っている肉・・誰の話も聞こうとしない。

脳内は職場で社員一丸となってプロジェクトにあたっているときのことを浮かべていた。
勝美にとっての栄光の日々。至福の時。

動きが止まった勝美に照子は声をかける。幸せが壊れた。

彰はおもむろに
「おじいちゃん。一日中家でぶらぶらしているとアホになるぞ!
家の中でふらふらしていると、頭の中もふらふらするぞ!」

突拍子もないことをいう彰をたしなめる綾子。
“よく言った”家族全員そう思っていた。


忠二が柔道部でないと気づいているのに、わざと腕立て伏せをして見せる綾子。
仕方がなく忠二も腕立て伏せをするが、一回も満足にできない。

この様子をぼんやりと勝美が見ていた。


竜一夫婦の部屋の前の廊下を掃除していた七瀬。
障子の隙間から彰が昼寝をしているのが見えた。
その横で夫婦がいちゃいちゃしている光景も。

何も見なかったことにして、掃除を続ける。
ひと気を感じて顔をあげると、夫婦のいちゃいちゃ声を勝美が聞いていた。



「いやですよ!いや!あなた自分を幾つだと思っているんですか?」
照子が真夜中に声を荒げる。


不眠症の照子は、クラシックのカラヤンを流して
ようやく眠れそうになっていたところだった。
そこを迫っていった勝美。大声で拒絶される。
照子は教室の外で立たされる子供のように、勝美を部屋の外に立たせる。
うなだれてその場に立っていた。その後、階段に腰を下ろし手紙を読む。

この手紙はアルバイト不採用通知。
若いときに警備員のバイトをしていて、
犯人を捕まえたと思ったら社長で、社長と思った人が犯人だったことがあって
警備の仕事だけはつきたくないと思っていたが、そこを曲げて応募したのに不採用・・・
通知書を破り捨てるが怒りは収まらない。

そんな勝美のところに、目をこすりながら彰がやってきた。勝美にお話をねだる。
足もとに挟み込むように座らせ、後ろから抱きかかえるように話を始めた。

勝美がしてくれる昔話はいろんな話が混じっていて、
その間違ったところを一つづつ突っ込む。
そのうちに彰は眠ってしまった。

そんな光景を七瀬はほほえましく見ていた。


次の日、勝美はグローブとバットを持って、彰をキャッチボールに誘おうとしていた。
また障子の隙間から覗く。

手には旅行パンフレット。
「誘わなくてもいいかな?」「下手に誘うと付いてきちゃう。」
自分たち家族だけでの旅行を計画していた。
でも、竜一はその気にはなれないでいた。

「彰はおじいちゃんに旅行に来て欲しい?」綾子が彰に問うと、
「おじいちゃん、きらーーい。だって短くした桃太郎の話しかしないんだもん。」

孫から嫌われていると勝美は知ってしまった。
唯一の心の拠り所が無くなってしまった・・・


彰をキャッチボールに誘うことなく、縁側で小さくなって座っている勝美の姿を見て
七瀬は同情し、今日特売で買ったモモを剥いてきた。

勝美にフォークを握らせ、自分も一切れ口に入れる。
勝美は七瀬が食べている口元に反応。目つきが変わる。
慌てて心の中を覗くが、何も語っていなかった。


夕食は焼き肉。みんなは変わりなくがつがつと肉を口に運んでいた。
だが、勝美は動かない。

心の中の勝美は、目を見開いて七瀬を見ている。
肉でも食べたいのだろうと思い、
七瀬はトングと、さっき勝美が食べなかったモモを持って勝美に近づく。

肉を皿に移そうとしたとき、勝美は突然立ち上がり、一切れのモモを舌で舐めまわす。
“ふざけやがって!邪魔者扱いしやがって!バカにしやがって!
俺をなんだと思ってるんだ!”

「めぇ~~」奇声を発すると、七瀬の胸元を見ながら「モモ、モモ・・」



湯船に浸かりながら、さっきの勝美の目つきを思い出していた。
自分を見ながら「モモ・・・」と繰り返していたのも怖くてたまらない。
そのときに扉の前に人影を感じた。

竜一、綾子、彰、忠二が旅行に出かけた。
玄関で見送る照子と七瀬。七瀬は背後に気配を感じた。
柱の陰から勝美がこっちを見ている。
“今夜だ、今夜しかない”

この心の声を聴いたことで知ってしまった。
今夜、勝美が自分を襲いに来ることに・・・怖くてたまらない。
部屋の扉が開かないようにクギで打ち付けた。


安易に同情して優しくしてしまったのがあだになったのかもしれない。
いま反省しても遅い。自分の身は自分で守るしかない。

眠れぬ夜が始まった・・・
扉の向こうから“モモ、モモ”と心の声が響く。
“モモを食べるんだ。それがいま俺に出来る仕事だ!”

そう聞こえたと思ったら、扉を壊して部屋に入り込んできた。
少しずつ七瀬の方ににじり寄ってくる・

「今黙って出ていけば、誰にも言わないであげるわ。」
勝美の動きが一瞬止まる。

“嘘だ!今で出て行こうものなら、この娘はみんなに言いふらすに決まっている!”

力任せに七瀬の布団を剥ぎ取り、パジャマの上着を強引に引きちぎった。
“モモだ、水蜜桃だ。この娘は水蜜桃だ。
あぁ、この熟し切っていない、白くて瑞々しい水蜜桃を食べれば、
俺はもう一度立ち上がれるんだ”

「私は水蜜桃なんかじゃないわ。」勝美の心の声に言葉で返す。
勝美は心の中で考えていたことを言われて驚く。

動きが止まったので、たたみかけるように
「私を食べても、あなたは立ち上がることなんかできない。」

“俺、いつ喋った?”
心の中で勝美が思っているだけなのに、その問いかけに言葉で返す。
「いいえ、しゃべってなんかいない。口に出してもいない。」

この決定的な言葉に腰を抜かし、その場に倒れこんでしまった。
形勢逆転。七瀬は勝美に少しづつ近づく。

“やめろ!読唇術だ。こんなのはただの読唇術だ”
「いいえ、読唇術なんかじゃないわ。」
“さ、さとるのバケモノだ!
ガキの頃に、お婆ちゃんから聞かされたさとるのバケモノだ!”

「そうよ。さとるのバケモノよ。
あなたが子どもの頃にお婆ちゃんから聞かされた、さとるのバケモノよ。」

“一つ目のお化け!お婆ちゃん、居た!
村人の心を次々言い当てて、村人は考えることが無くなって、
村人の心が空白になったら、空白の心を食べてしまうさとるのバケモノ。
お婆ちゃん!本当にいたよ!!!”

七瀬は廊下まで這いずり出た勝美を追いつめる。

“ごめんなさい、ごめんなさい。悪いのは妻の照子だ。
照子が僕を拒んでばかりいるからだ。照子が全部悪いんだ!”

「ずるいわよ。自分がやっていることを妻のせいにして、
ちゃんと口に出してしゃべりなさい」

勝美をこのまま放っておけない。中途半端にしたら能力がみんなに知られてしまう。
どんどん勝美を追いつめる。
階段下まで追いつめたところで、大きな物音で目覚める照子。
階段下で、恐怖のあまり勝美は自己を閉ざしてしまった。

勝美は照子の顔を見て
「僕ね、僕ね、お婆ちゃんに会いに行くんだ!」
とっくに死んでしまったお婆ちゃんに会いに行くという・・・
でも、無邪気に話す勝美の顔を見て、照子はかわいいと思った。

「かわいいわ。ずっとこのままでいなさい。」



心の中が他人に知られる。
無意識の行為を知られるのはかなり恥ずかしいことだろう。
一発でバレる。「こいつアホだ」と。


今回の食卓。すっごいおいしそうでした。
すき焼きなんて、この頃あんまり口にしていなくて・・・
この肉だと肉感が抜群だろうなぁ・・









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家族八景 第1話 無風地帯 あらすじ ネタバレ [家族八景]

家族八景 第1話 無風地帯 あらすじ ネタバレ

家族八景 第1話 「無風地帯」

私は人の心が読める、家政婦。火田七瀬((ひたななせ)木南晴夏)

紹介を受けて住み込みで働かせてもらうことになった尾形家。
尾形家の玄関で出迎えてくれるのは、
尾形家主人:尾形久国(西岡徳馬)の妻:咲子(葉山レイコ)

「本当に・・本当に上がる一方ですわね。税金・・・でも、義務ですものね?」
咲子は七瀬と顔をあわせてすぐにこんなことを口にした。
表情は全く変わらず、口元だけで言葉を発している。

咲子の話の意図が全く読めない七瀬。茫然とその場に立ちすくんでいた。
七瀬の顔をまじまじと見つめ、咲子はふと我に返り、七瀬を家に上げてくれた。

家の中を案内され、道具の位置をテキパキと説明してくれる。
咲子は七瀬の方に向き直り、
「今日は主人も子供たちも遅いから、夕飯は二人ですませちゃいましょ。」


夜11時。まだ誰も帰ってきていない。咲子はせんべいをかじりながらTVを見ていた。
七瀬は少し離れたところから、咲子の顔をじっと見つめた。

咲子が突然裸に変化し、(フロバノタイルノハガレ、センザイヲカウ・・・・・)
咲子は明日の支度の事を考えていた。だが何故かロボットが話をする口調。


久国が帰宅する。久国は子供たちがまだ帰ってきていないことを知った。
部屋に向かう背中をじっと見ると、(まだ!まだだと!!こんな時間にまだだと!)

七瀬は人の心が読めてしまう。心を読むとき、その人が私にはどう見えるか?
それは、その家によってさまざまだった。
この家で心を読むと、裸に見えるようだ。


ダイニングでお茶を飲みながら、娘の帰りが遅いことを気にしていた。
でも、心の中では、愛人:節子 (星野あかり)とのまぐわいのことを考えていた。


「ところで年いくつ?」久国は考え事をしていたのでつい、
クラブの女性に言うような口調で、七瀬に話しかけてしまう。

でも気にしているのは、まだ帰らない子供たちの心配。
それも、娘:叡子((えいこ) 水崎綾女)の帰りが遅すぎることだった。

ようやく叡子が帰宅する。久国はかなり怒っているが、
理解ある父親を演じようと、言い訳を叡子のほうから言い出すのを待つことにした。

叡子は椅子に座るやいなや言い訳を話そうとするが、七瀬を見つけた。
七瀬と話をしていれば、言い訳なんかはしなくてもすむかも!

七瀬にいろいろと話しかけてくる。
久国は叡子が言い訳の話が中断していることを怒っていた。
言い訳せずに済まないようなので、あきらめて続きを話し始めた。

「軽音サークルで、いつも帰りの車に乗せてくれる人が今日休みで、
たまたま帰る方向が一緒の木田 (栗城秀)に送ってもらった。」
と、話をしながら叡子は木田とのまぐわいを思い出していた。

「叡子、今日髪の毛を結んでなかったか?」父の鋭い指摘。
髪を結んでいた・・・?そう!木田とまぐわう時に外した!!

「今日寒かったから。顔が寒かったから・・」苦しい言い訳。
その姿を見て、久国は木田と叡子がまぐわったと確信した。
叡子はごまかすために話をいろいろするが、久国は叡子のことを怒っていた。

ごまかしを話しながら、つい木田とのまぐわいを思い出し・・・
「太い木田さん!!」と、心の中で思っていることをばっちり口に出してしまった。

両親が自分を見つめる。ヤバい・・
「木田さん、太いギターさえ弾けないのよ。」意味の分からないことを重ねてしまった。

夜も遅いし、いたたまれない空気。部屋に戻ろうとするが、
父から何かを言ってきたときに返すセリフを先に考えておく。
また変なことを口走らないように。
「あちゃー ごめんなさい。」これでバッチリだ。

案の定、父に呼び止められた。決めて置いたセリフを自信満々に言った。
「あちゃー ごめんなさい。」
「本当に。」咲子は娘の言葉に返事をするかのように返事をした。



翌朝、部屋の拭き掃除をしていた七瀬。
奥の部屋の扉に「Please Knock 潤一」と書かれたプレートを見つける。

声が聞こえる。「脱ぐならちゃんと脱げ!それも取れ!」
朝からずいぶん過激なセリフ。ギターを抱えた叡子は七瀬に話す。

「寝言よ。」それにしてもずいぶんはっきりとした寝言だ。

この部屋は、叡子の弟:潤一(木村了)の部屋。朝帰りでまだ寝ていた。
叡子は昨日の失言を取り返すかのように、ギターを抱え「太いギター」を連呼する。


七瀬はダイニングで潤一が朝ごはんを食べに来るのを待っていた。
スタンド形式の鏡を持参して、食事をとりに来た潤一。

「もう少し、惰眠をむさぼりたかった・・・」
「おはようございます。」
「昼過ぎにその挨拶は、違和感を禁じ得ない。だから僕は君にこう返す。 おそよう。」

ごちゃごちゃとセリフのように話を続ける潤一を放っておいて、味噌汁とご飯をよそう。
「二日酔いとかけて、高級な絹の靴下と説く。そのこころは、はきたい」
どうでもいいレベルの謎かけを、どや顔で披露する潤一。

唇にわかめを付けたまま「君、綺麗な目をしてるね。」
七瀬の顔を見ながら(ひゃっほーい!どぎまぎしてる!どぎまぎしてる!)
そんなことを考えながらも、節子との夜のまぐわいのことを思い出していた。

・・・・節子?七瀬は節子を思い出していた。
もしかして、久国の愛人:節子では? 七瀬がそう思っていたら、

(ああ、節子。親父より俺との方が良いに決まっている。
親父は思いもよらないだろうなぁ・・・・
同じ夜に、自分の愛人が自分の息子と寝ているだなんて。)
潤一は父の愛人と関係をもっていた。


夜、一家そろっての夕食。
久国の晩酌は日本酒。(節子のクラブでは日本酒を置いていないから。)
父が日本酒にする理由を知っている潤一はニヤニヤ。

潤一はウイスキーを飲む。飲みながら七瀬の好きなお酒を聞く。
父は、七瀬には優しい口調で話す潤一に、その理由を聞いてみる。

「僕は、全ての女の子に優しいんだ。」(あんたの愛人にも優しくしてんだろ!)
心の声の言葉尻が口から漏れ、父親を威嚇しているようになってしまった。

このまま反抗されたら怖いと思う父親と、父親に怒られそうなのを怖がる潤一。
その横では、明日の家事のことを考えている咲子。

七瀬は思う・・・
このうちはひどい。ひどいバラバラだ。
見せかけだけの平和なんて・・・・破壊したほうがましだ。

七瀬が考え事をしている、その間に潤一が話しかけてきていた。
「僕、どんな寝言言ってた?」甘えたような口調。

「女性の名前を呼んでらっしゃいました。」七瀬は淡々と答える。
実際は女性の名前など呼んでいなかった。

こんな話には全く興味はなかったが、久国は家族の会話を盛り上げるために
寝言で言っていた女性の名前を、七瀬に聞く。

「せつこさん!」

この名前を聞いた途端、父と息子は固まる。

父は、愛しき愛人と一緒の名前を不思議に思い、
「せつこというのは、新しい彼女の名前かな?」

潤一は気が動転してしまい、
「せつこと言うのは、ただの言葉に過ぎない。くろやなぎせつこ。」
(誰だよ!くろやなぎせつこって!!)

自分で言った言葉を、心の中で突っ込む。でも、言ってしまったことは戻せない。
「くろやなぎせつこっていうのは、黒柳徹子の形をした・・ていうか、
自分の事を黒柳徹子だと信じ込んでいるご婦人方全般をくろやなぎせつこと呼ぶ。」
(呼ばねぇ、つうか、いねえ。そんなご婦人居ねぇ)


父はさらに質問をかぶせてくる。「他に何を言ってた?」
「脱げ!せつこ脱げ!!!」と・・・今回はニュアンス違いで、言っていた言葉。

家の中を乾いた笑いが包み込む。こんなときは、おもしろくなくても笑うしかない。

このままスルーすることも可能だったのに、
久国は「良い名前だ!せつこ脱げ!!」ハハハハハハ・・・

この異様な雰囲気の中でも、咲子は明日の家事のことを考えていた。
この人いったい・・・・・
七瀬は咲子の思考に、さらに違和感を覚える。



七瀬はお風呂に入っていた。扉の外に人影が写る。
(風呂に入っている。実行するなら今だ!)
何か悪巧みを働こうとする誰かの心の声が聞こえた。誰かまではわからない。

風呂から上がると潤一がいた。
心を覗くと、(潤一は、母の財布からお金を抜き、七瀬に罪を被せようとしていた。)
本当の所は潤一の自作自演。だが、証明できる物がない。
咲子に告げ口。本当と取られてしまうだろう。

七瀬は咲子と廊下でバッタリと出会う。
咲子は七瀬に明日のゴミだしを頼んできた。怒っている風でもない。


3日後、咲子と七瀬は一緒に洗濯物をたたんでいた。
咲子は相変わらず家事のことばかりを考えていた。
七瀬はすぐに首になると覚悟をしていたのに、
盗みの一件は咲子の胸の内で止まっているようだ。


「そうそう、せっかく家に来てもらったけれど、こちらのお宅に行ってくれないかしら?」
いつの間にか、七瀬の次の働き口を見つけていた。

おかしい・・・家事のことばかり考えているのに・・・

心に中で咲子は泣いている・・もしかして、心を読まれないように本心を隠してる?
心の中で咲子はとめどなく涙を流していた。

(私の能力に気づいているの?あなたも能力を持っているの?
もしそうなら、心で返事して!心で返事して!!!!)


「ななちゃん。この家はずいぶん疲れたでしょ・・・本当に・・・」
明確な返事をくれたわけではないが、このタイミング・・・・
本当は聞こえていたのかもしれない。


その足で尾形家を後にする。
(どうぞ いつまでも お芝居を続けてください。家族サーカスをお続けなさい)

この心の言葉は咲子に届いたのだろうか・・・




そもそもこの家に家政婦は必要だったのか?
ここが一番不思議に思ったところでした。
(そんなこと思ったら話が始まらないんですけど・・)

原作を全く読んだことがないので、よくわからないですが
七瀬は何をしたいのでしょうか?
見ていくとわかるように出来ているのかな?

木村了さん。フジテレビ系の「鈴子の恋」にも出演してましたね。
二作品とも「ぼっちゃま」不思議な共通項です。


心がざわついてしまったら、甘いものでもいかがでしょうか?






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