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家族八景 第8話 亡母渇仰 あらすじ ネタバレ 黄川田将也 [家族八景]

家族八景 第8話 亡母渇仰

私は人の心が読める家政婦。
火田七瀬(木南晴夏)が次に紹介されたのは「清水」家。
今、清水家の母・恒子(宍戸美和公)のお葬式の真っ最中。

親戚一同が集まり、恒子の息子・信太郎(黄川田将也)は
悲しみのあまり、子供のように大声で泣いていた。
信太郎の鳴き声と、読経が部屋で響く。


私は人の心が読めてしまう。
心を読むとき、その人が私にはどう見えるか?
それはその家によって様々だ。

この家ではどうやらヒゲが生えて見えるらしい。
(この涙は一体、いつまで続くのかしら?
この人の体は、全部涙でできているんじゃないかしら?)

清水 幸江(東風万智子)はいつまでも泣き続ける旦那に呆れながら考えていた。

「凄い声だなぁ…」「まだ子供何だよ」
彼の泣く姿と声を聞いて集まった者はこう思っていた。

“恒子さんは、嫁の幸江にはきつく当たっていて、息子にはとても甘い人だった。”

人は死んでからの方が、本当の評価を受けるのかもしれない…
みんなが思う恒子の評価はこんなものだった。

(幸江さん、やっと解放されたわね。)
介護や何やらで、幸江は恒子に付きっきりだった。
そんな姿を見ていた一人の女性は、幸江のことを考えていた。

(解放されたなんてとんでもない。幸江さんが辛いのは、これから…)
信太郎は母親がいたからちゃんと出来ていたと七瀬は思っていた。

(この人、一生お母さんの呪縛から抜け出せないんじゃないかしら…)
幸江は泣き続ける旦那を見ながらちょっと考えてしまった。

(なぜだ、なぜ死んだ。僕を残して…ママ、ママは悪い人だ。僕を一人残して。
僕に対する裏切りだ。)
悲しみにくれる信太郎を見ながら

(罵倒された。憎まれた。看病すればするほど憎まれた。
近所の家に聞こえるぐらいの大声で。)
幸江は看病していたころを思い出していた。

恒子は、幸江の看病に真心がこもっていない。
真心がないから、寿命が来る前に殺されてしまうと
口癖のように近所に聞こえるほどの声で幸江を罵倒していた。

幸江がいくら否定をしてもそれは逆効果で、火に油を注ぐようなものだった。

(あれだけ憎まれて、あれだけ怒鳴られて、まだ真心を持てなんて、無理よ。無理だわ。)


(ゔゔゔゔ……)

七瀬はどこからか聞こえる奇妙な心の声を聞いた。
誰の心の声なのかは特定が出来ない。

一層大きな声で泣く信太郎に親戚の人が悲しみを和らげようと肩に手を当てるが、
(やめろ!俺の悲しみは、こんなもんじゃないんだ!!
放っといてくれ!ママ!!マァマ!!!何で、何で死んじゃうんだ!)

生前のこと・・・
信太郎は会社の愚痴を母親の枕元で話していた。母はそれを優しくたしなめる。
こんな何気ない時間が二人にとっての最高のときだった。


そんな二人の様子を七瀬は通りがかって見てしまった。
七瀬はお風呂の中で、このことを思い出した。
(恒子さん、後どれぐらい持つかなぁ…
出来れば死の瞬間には立ち会いたくないなぁ…死にゆく人間の声は、もう聞きたくない。)




(何でこの人と結婚しちゃったんだろ…冷静に考えれば気づいたはず。
いえ、騙されたのよ)

いつも幸江は自問自答していた。今日もやっぱり自問自答をする。
そう、騙されたと思っていたかった。こう思うことが唯一の慰めだった。

(その問いは、何度も何度も繰り返して来たじゃない。
恨むなら、見抜けなかった自分を恨むんだわ。)

七瀬は幸江が思っていることの正論を何の気なしに解いていた。
自分が怖くなってこの場を離れた。


(怖い。自分が怖い。神にでもなったつもりなの?
やっぱり私は、人里離れた所でひっそり暮らすべきなんだ。)

七瀬がこう考えるのには理由があった。
それは3年前、七瀬が17歳の時…

スーパーの試食販売のパートをしていた。
まだ子供の考えだったので、一緒に働くオバさん2人に能力を使い、掌握していた。
能力の事はバレてはいないが、オバさん達は腫れ物を触るかのように接してくる。

ウインナーの試食販売をしていたとき
試食をしたが、買わずに帰ろうとする客の心を読んで、
商品を売るには足りない部分を補った。

能力をこう使えば百発百中で商品が売れる。
オバさん達は能力と思っていないが、凄いと思っていた。
(この子を利用すれば、この子は金になる。)
(まるで、人の心が分かるみたいね。今も私の心を覗いているんじゃないかしら?
恐ろしい。私、この子が恐ろしい。)

「そんなに怖いですか?」

七瀬は恐ろしがっているオバさんに、心の声の返事を口でしてしまった。
やっぱり覗かれていたと思い、オバさんは震え上がる。


七瀬は、半ば自暴自棄になっていたのかもしれない。
切り立った崖の淵に立って、底を覗いているみたいだった。
そこに、向かって飛び込んでしまいたいような…
吸い込まれて行きそうな…そんな気持ちだった。

自分の能力を、晒してしまいたい欲望に駆られていた。
それは、幼くて強い欲望。能力を使えば、人を支配できる。


(だからこそ、私は傍観者でいないといけない。人と積極的に関わってはいけない。)


(いいシーンだ。)
七瀬がキッチンで考えてを巡らせていたら、背後から心の声が聞こえた。
慌てて振り返ると、引き戸を少し開けて親戚の茂蔵(佐藤二朗)がこっちを覗いていた。

「お茶をもらえるかな?」
(色も白い、肌も綺麗だ。抱き心地が良さそうだ。
いいスタイルだ。ヒップから足にかけてのラインがいい。)
七瀬がお茶を淹れる様子を舐めまわすように見ていた。

「姉が亡くなって、君はどうするね?信太郎の所に残るの?」
「いえ…」
「だったらね、うちに来なさい。」(うちに来い)
「あの、辞めるんです。」
「そっか…だったらね、うちに来なさい。」
(いや、だから…)「辞めるんです。家政婦を。」
話を理解してくれているのか、理解をするつもりはないのか、
執拗に七瀬を自分の家で雇いたいと言い続ける。言えば来ると思っているのだろうか。
金で愛人にしたい目論みが見え隠れする。

幸江が茂蔵叔父さんを呼びに来た。七瀬にとっての助け船。
噛み合わない話しと、執拗な誘いから逃れられた。

幸江は茂蔵に用時を話し、キッチンから追い出す。その後慌てて扉を閉めた。
(あの人、ななちゃんにまでちょっかいを出してたのかしら?)

「ありがとうございました。」
幸江にお茶を出しながら七瀬は感謝した。

「やっぱりなんか変なこと言われた?」
「家に手伝いに来ないかって。」
「絶対に行っちゃダメよ。あの人はダメなの。凄くしつこいから。」
(こういう子が、ころっと騙されたら大変。)

(この人、心配してくれてるんだ…)
七瀬は幸江の優しさをとてもうれしく思っていた。


七瀬は火葬場まで一緒に来るように幸江に言われる。
七瀬はもちろん断らない。

(助かるわ。あの人…私じゃ手に負えない…)
「ななちゃんが居てくれて本当に良かった。
家でまともなの、家でその…話しが通じるのはななちゃんだけだから。」

(そう、まともなのはあなただけだった。
私はまともなんかじゃない。だって、私はあなたのことを、心の中でバカにしてた。)

「お義母さん、ななちゃんにきつく当たらなかった?」
「いえ。ご病気でイライラしてらっしゃったので
嫌味のようのことはたまにおっしゃってましたけど…
それ以外は特に何も。」
(お義母さんも、根は優しい人だったんだ。
ただ、あの人を愛しすぎたあまり、私に辛く当たった。
あれは嫉妬だったんだ。)

「あのう…大丈夫ですか?」
義母はいい人だったと自分に言い聞かせる幸江に同情した。
(私にも分からないなぁ…)
「さぁ…でも、時間がかかるかもしれないけど、しっかりしてくれるんじゃないかしら?
あの人、根は強いとこあるし、大丈夫だと思う。」

棺が出棺される。運ばれて行く棺にすがりつき、涙をさらに流す信太郎。
(さちえ…)

またどこからか聞こえて来た。七瀬は声の主を探す。
自分の周りにはいない。外に目を向けると、木の影からニヤリと笑う男の人がいた。


喪主の出棺の挨拶として信太郎にマイクが渡される。
「このたびは、ご愁傷様でした。」
この言葉を言うのが精一杯で、また泣き崩れてしまった。

(ご愁傷様なのは、あなた。)
七瀬が心でこう思うが、周りのみんなも同じように思っていた。
嫁はここ言葉のせいで辱めを受けているように感じていた。

火葬場での最後のお別れ。棺を抱いて泣き続ける信太郎を引き剥がし
棺は中に入れられ、扉は固く閉じた。
点火前の経が詠まれていた。

(ゔゔゔゔ………)またうめき声のようなものを七瀬は聞いた。
(どこ?ここはどこ?)

(まさか、そんなことがあるはずない。)七瀬の嫌な予感は的中!

(幸江、あの女が医者と共謀して、私を生きたままこんな所へ)
(生きてる!?)

もしかしたら…頭によぎる思いが嘘であるようにと思いながら
幸江の顔を見てみるが、気づくようでもない。

(あぁ、これで終わりじゃないんだわ。この後、また夜までみんなの世話を…)
幸江は別のことを考えていた。

(違う。この人じゃない。幸江さんは何も知らない。)

信太郎を見てみる。(ママ、ママ…)

これは誰かに騙された?と、一人づつ顔を見回すと、
さっき木の影から見ていた人もここに来ていた。
(やっぱり病気治らなかったなぁ…
恒子さん、子供の頃可愛がってもらったなぁ…
感謝の気持ちを込めて…笑顔で見送ってあげよう。)
怪しいと思っていた人は、恒子の幼馴染だったようだ。


(違う、誰かに騙されたんじゃない!
恒子さん、棺桶の中で息をふきかえしたんだ!)

棺桶の中でもがく恒子の声が頭の中で響く。
いくら恒子が大声を出しても、分厚い扉の向こうではこちらまでは聞こえない。

(私しか知らないんだ。お経が終わったら焼かれる!)
常子が一層激しく叫び声をあげる。

(うるさい、黙って。今考えてる!)

どう言えばもう一度棺桶を開けることができるのか?
いくら考えてもいい案は浮かばない。
生きていると言えば、自分の能力がバレてしまう。
ひた隠しにしてきた能力。それはなんのため?
だれも蘇生したなんて思わない。

(私に能力がなければ、こんなこえは聞こえなかった。
これは事故。私には関係ない。関係ない。)
恒子の金切り声が頭に響き続ける。

(自分の身を守るために、一人の人間を見殺しにするの?)

(信太郎。ママは生きてるのよ!助けて!!怖い、怖い…怖い!怖い!こわい!…)

断末魔の叫び声。意識が強すぎてしゃがみこんでしまう。
(お願い、赦して…恒子さん 赦して…)

七瀬は立ち上がり、この場から走って逃げ出す。
これ以上恒子の声を聞きたくないし、聞いていられなかった。

(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…
早く離れなきゃ。こんな力いらない!いらない!!
赦して、赦してください。)

業火に焼かれる恒子の声が、走って逃げても聞こえた。

本当に見殺しにしてしまった…

七瀬は壊れたように叫び声をあげる。





家族八景。てっきり8話で最終回だと思ってました。飛んだ勘違い。
この作品は全10話でした。
七瀬が壊れるほどの衝撃を受けたこの回を受けて
あと2話で七瀬は能力と本当の折り合いをつけられるのか?
暴走していくのか?楽しみなところです。

黄川田将也さん。自分的には久しぶり感があります。
この強烈マザコン役は凄いハマってました。
見ながら「TANNKA 短歌」を思い出しました。
この役も危うげな無邪気さが全面に出ていましたよね。




別の七瀬も見てみますか?

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NO NAME

これほど原作を台無しにできるのも才能ですね
by NO NAME (2014-05-22 17:16) 

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