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ウルトラゾーン 丘みつこ ザラブ星人 ショートストーリー THE LOVE [ウルトラゾーン]

ウルトラゾーン
ショートストーリー「THE LOVE」

出演者 池谷ミツ子:丘みつこ 出演怪獣:ザラブ星人


山間にある小さな集落の一軒の日本家屋。
ラジカセから流れるのはクラッシック。優しいピアノの旋律。
ミツ子は油絵を描く。モデルはザラブ星人。
油絵を描くカンバスに絵の具を塗りこめる音とピアノ・・・
ふんわりと柔らかな午後のひととき。

ふとザラブが
「写真・・カメラとかいう機械を使えばいいのに・・・」

ミツ子は絵を描くのを中断し、休憩の提案をする。
ザラブは疲れたわけではない。
人類には瞬時に空間、風景を記録する機械がある。
なぜ高度な文明の利器を使用しないのか?理解が出来ないだけ。

「絵だって人が生み出したすばらしい文明のひとつ。
音楽だって・・・心を豊かにするひとつ・・・」

「こころ・・・・」

「この絵と、この絵を描いている時間は私とあなただけしか作れない
なんだかわくわくしてくるでしょう?」


時をさかのぼり、とある秋の日。
ミツ子はスケッチを終え、帰り道をとぼとぼ歩く。
大きな物音と共に謎の光がすぐ近くの山に落ちた。
ふらふらとそこから出てきたのは謎の宇宙人。
ミツ子はばったりと出会ってしまった。

ミツ子の姿を見つけた宇宙人は攻撃をしようとするが、腕に怪我!
うめく宇宙人に、思わず駆け寄ったミツ子。

怪我をしている宇宙人を、怪我の手当てのために家に案内する。

腕に包帯を巻いた宇宙人はコタツで正座をし、部屋を見渡す。
仏壇に写真。思わず目が留まり見ていたときにミツ子がコーヒーを持ってきた。

「その人は夫よ。私の愛する人・・」

「死んでいるの。もうこの世にはいないわ・・
人間は死者にもこうして居場所をつくってあげるの。
死後も心の中で行き続けるように。」

「こころ・・・・」
宇宙人には理解できない感情だった。

「あなたが何者で、何を考えているのかは聞かない。
でも、もし悪いことを考えているとしたらここから出て行って。
そうでないなら、何日でもここにいるといいわ。」

ここを出て行こうと、腰を上げかけたとき
「あなたの好物は何かしら?」
夕飯の支度に宇宙人の好物を作ってくれようとしていたのだった。
おもわず「コーヒー・・・・」 と答える。


次の日、ザラブはミツ子と共に畑の畝を作り、
別の日、一緒に田んぼ道を一緒に歩き、
また別の日、川原で一緒にスケッチをする。

川原でのスケッチは宇宙人には落ち着かず、
絵を描くよりも川原の石ころを投げたりするほうが面白い。
一緒に石投げをし、何回石が弾むかを競って遊ぶ。

また別の日、草花の広がる草原。ミツ子は宇宙人に花の冠を編む。
その花の冠を持ってお墓参り。

夜、縁側で一緒にオセロ。
大量にひっくり返したお返しに、角を取り逆にひっくり返すミツ子。
「人類もなかなか侮れないでしょ?」
子供のように無邪気に笑うミツ子を見ながら思わずため息が漏れた。

「人類はみな、ミツ子のような生命体なのか?」
「池谷ミツ子はここにいる一体だけでございます。
あなたもそう。あなたもあなただけしかいない。だから失うと辛い。身を切るように」

「もしまた夫に会えたらうれしいかな?」「そうね・・・でも、もうすぐ逢えるから・・・」

「さあ、オセロの続きをしましょ。気まぐれな人類とザラブ星人の世紀の一戦よ!」
「よし、望むところだ!」

宇宙人はミツ子と過ごしていくうちに、自分が何者かを明かしていた。
ザラブ星人。宇宙人なだけ。ミツ子にとっては何も変わらない。


今日は海岸を散歩。太陽の光を受けて海面は輝き、寄せて返す波にはしゃぐ。

「君に・・・君に聞いて欲しいことがある・・・」
波の音で言葉はかきかされ、ミツ子はザラブの言葉を聞き取れない。

ミツ子の後ろでポツリとつぶやいたザラブに、振り返りながら話しかける・・・
そこには死んだはずの夫が立っていた。

「私には変身能力がある。」

驚き逃げ出すミツ子を止め、訳を聞く。
「その姿で、その声で私を呼ばないで!」

ザラブはミツ子を喜ばせたかっただけだった。
「あなたは・・・全然わかっていない!」

走り去るミツ子の姿を見ながら、ザラブは立ちすくんでしまった。


ミツ子と初めて会った場所、一緒に耕した畑、一緒に歩いた田んぼ道、
一緒に絵を描いた川原、そこでは石投げしたっけ・・・
ミツ子の家の墓、草花の広がる草原。ここでは花の冠を編んでくれた・・・

ひとつひとつ思いでをたどりながら回って歩き、
草原で花の冠を作った。でも、ミツ子ほど上手くは出来ない。


夜になり家に戻ったザラブ。
ミツ子がいないので家の中を探すと、ようやく完成した絵を抱えて意識不明。

病院で意識を取り戻したミツ子。付き添っていたザラブは安堵のため息をもらす。
「もう、会えないと思っていた・・・・」
「君はすべてを知っていたんだな・・」

「抱えていた絵を見たのね?」
「今なら君の行動が理解できる・・だが、海で君を怒らせてしまった理由はわからない」
「私は、あなたと一緒にいる時間が楽しかったのよ。他の誰でもない、あなたと。」

「また、一緒に海に行こう。今度は変身しないから・・
川原にも・・今度は上手に絵を描くから・・
草原もいい。今度は一緒に花輪を作ろう!」

「今度は・・・もう無いのよ。」

「ミツ子、死ぬのか?」 「生き続けるわ。あなたの心の中で・・」
「こころ・・・とはなんだ?」 「あなたのこころ・・・私への気持ち」

「少し・・眠るわ・・・」

大きく一息をついた後、ミツ子は旅立っていった。


ミツ子はあの海岸で誰かにお願いをしている。
「連れてって・・・あなたの星へ・・・」

そう話した相手、それは夫だろうか夫の姿をしたザラブだろうか
魂になったミツ子を縛るものはなにもない。

優しい顔をして長い眠りについたミツ子の頭には
ザラブが編んだ花の冠が乗せられていた。

仏壇の前には夫の写真。その奥にはザラブを描いた油絵が置かれている。
絵の右下には「The Love 我が夫」と記されていた。


普通のドラマだと、ありきたりすぎて見ていられなかったかもしれない。
流れる空気感と丘みつことザラブの雰囲気が目を引いて離れなかったです。

謎ポイントもあって、
夫はザラブになってミツ子に会いに来たのか?
ミツ子はザラブが夫とわかっていて絵を描いたのか?
夫のような雰囲気を持っているザラブを本当に好きになっていたのか?
考えればいろいろ出てきます。
なんだか不思議。だからウルトラゾーンなのですかね?







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コメント 4

SINOBU

勘違いしているようですが……最後の肖像画で「The Love 我が夫」と書いてあるザラブ星人は、この話に登場したザラブ星人とは別人です。ミツ子がこの話の中で描いてたザラブ星人の絵はまだ描きかけですから。

同じザラブ星人でも、ミツ子にとって夫と今回のザラブ星人は別の存在だから、変身されたときにあれだけ怒ったわけで。
by SINOBU (2012-02-12 07:00) 

peco

コメントありがとうございます。
コメントの存在がわからずスルーしてしまったのと、
どのように書いたら理解されるのかが
自分の中でまとまらなかったので遅くなりました。
書かないままスルーするのもいいかと思いましたが、
その記事、意外とみなさんに読んでいただけているようなので
ちょっと書くことにしました。


記事として書いているのは、
「私が見て思ったままに書いている。」
と言うことを念頭に置いてもらって、
(映像は手元にありませんので、そのときの私の気持ちです。)

私の中では、ミツコはケンカをして一緒に居ないときとかに
絵は仕上げていたと思ってました。
言葉に出来ない思いを絵に託す。そんな感じですね。

ミツコがザラブ星人をみたのは、あの一体だけで
他には遭遇していないとも思っています。


映像の効果として、絵を描いている穏やかな時から始まっただけで、
それは、ザラブがミツコの家に来た後のシーンだと思っています。

別に考えたのは、
死んだ夫がザラブになって帰ってきた・・・
(これは完全にナシだと思ってますが。)


変身した時に怒ったのは、
ミツコが喜ぶと思ってザラブが死んだ主人に変身した。

愛してしまったのはザラブの姿をしたザラブだったからで、
夫の姿をしたザラブではなかった。と言うことですよね。

ミツコは死の瞬間まで愛する人が側に居てくれたので
とても幸せだったのだろうと思います。


こんな感じで書きました。
怪獣が出ていて滑稽な感じをしながらも、
いろいろ意見のある、良い回でしたね。

読んでいただきありがとうございました。
by peco (2012-02-25 22:00) 

モフィラス星人

このドラマの部分だけ見ました。 最初はギャグや笑いを期待したのですが、不覚にも(笑)中盤あたりぐらいから涙がとまりませんでした。 このドラマ部分だけでもブルーレイで保存しておきたいです。
by モフィラス星人 (2012-04-09 00:19) 

BryanInfox

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